第9話 古代オリエント地域の開拓
古代オリエント文明が発生した地域の開拓に入ります。
もちろん、この時代には文明と呼ばれるものは何もありません。
それを良い事に何でも有りの開拓を進めて行きます。
歴史改変も楽しい物ですね。
さて、インダス文明地域の開拓です。大体地中海の南側から東側の地域をオリエントと呼んでいて、この地域で発展した文明の総称がオリエント文明と言われるわけだ。
その中でも、一番東側に位置しているインダス川流域に発展したのがインダス文明。
文明自体はそれほど長く続いたわけではないが、東西の文明を繋ぐ要衝に有ったので、重要な意味を持つ文明らしい。
開拓する場所はインダス川中流域で、21世紀ではムルターンという地名だった所だ。
モヘンジョダロの有った所より、かなり上流に位置している。
俺が覚えている歴史では、モヘンジョダロ位しか覚えていない為、どれ位の期間文明として栄えていたのか分からないのだけれども、インダス文明の滅亡原因は外敵からの侵略によるものや砂漠化等の気候変動によるものと推察されているらしい。
開拓や都市建設に当っては、その辺を考慮して、十分な対策を講じる必要が有るだろう。
ムルターンに作る都市の建設資材は、モヘンジョダロに使われていた物と、同じ大きさと色彩の焼きレンガ(風)にしようと思っている。これは、外見をモヘンジョダロに似せる事で、後世の学者から見ても目立たないようするのが目的で、なぜ(風)なのかと言えば、実際には未来で開発された強化素材を混ぜ込んで作った、ほとんど破損や風化する事の無い超レンガになっているからだ。目立たないようにする意味がない?良いんだよ。どうせ他に作る都市でも同じようになるんだから。気持ちの問題さ。
この超レンガを標準仕様の資材にして偽モヘンジョダロや、その他の一般的な家屋も作るから、地震や火事などの災害が起きようとも、周辺が気候変動で砂漠化したりしようとも、自然に崩れるようなことは無いし、外敵の侵略を受けようと、20世紀以前の武器で破壊される心配もほとんどないだろう。
唯一の問題は、超レンガの製造方法が普通のレンガと同じなので、必要な火力を得る為の燃料が多量に必要になることだ。当時は燃料に木を使っていたらしいが、木の取り過ぎは環境破壊になって、砂漠化の原因にもなってしまうから、出来れば避けたい。そこで、この地域の周囲に少しだけど存在する事が判っている、石炭を掘り出して使用する事にした。焼き窯の煙突部分には、煤煙や二酸化炭素等を除去する装置を取り付け、大気汚染防止にも配慮した構造にしてある。
今回の都市の規模は10km四方で城塞都市として作ろうと思っている。
中国文明地域で作った都市よりもかなり小さく、弓状列島と同じ規模になるが、元々人口が少なくて、モヘンジョダロですら1.6km四方程度だったと言われているのだから、これでも十分大きい方だろう。
ここに移動させる移住者は、半径350kmの範囲に住んでいる人達とするが、途中の山や川を迂回して移動すると、450km位の距離を移動する事になる人もいるだろう。さぞかし困難なことだとは思うが、それだけ広い範囲から集めても、約4万人程度にしかならないと思うから、つくづく有名な文明のわりに人の少ない地域だと思う。
しかし、四大文明に数えられている位、後の世にも影響を与えている文明と考えれば、やはり処置を施しておく必要があるだろう。
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言葉の事について少し話をしておくと、これまで2地域の開拓を行って来たので、使っている言葉も大きく分けて2種類になる。
細分化すると、弓状列島の9地域では、それ程代わりの無い縄文言語を使用していたので、若干の方言のようなものが有るだけでほとんど問題は無かった。
それに比べて、中国地域では纏めた3地域内でも多数の言語が使われていたので、意思の疎通に苦労した覚えが有る。結局、地域ごとに漢語を基本にした共通言語を作って、それを住民に教育する事で対応したが、多言語国家の政の難しさを痛感させられたものだ。
俺自身は、催眠教育によって直接言語知識を叩き込まれるから、それぞれの言葉を話す事も難しくないが、使う言語が増えてくると、使い分ける事が大変になってきている。
3箇所目のインダス地域も同じで、少し離れれば場所によって違った言語を使用していた。そのままでは、意思の疎通に齟齬をきたすことが明白だったので、古代エラム語と呼ばれる言語を基に統一言語を作る事にした。
考えてみれば21世紀では英語すら碌に使った事の無い俺が、聞いた事も無い言語を3種類も使っているのだから、おかしなことだと思う。出来れば便利だなと思って、バイリンガルに憧れた事もあったが、これからも増える事は確実だから、マルチリンガルになるんだろうな。21世紀の頃だったら通訳や翻訳など、職に困る事は無かっただろう。
こうして作った統一言語だが、いつまで使われるかは分からないが、城塞都市と合わせて、遥かな未来まで残っていたら面白いだろうなと思った。
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こうして建設したムルターンの城塞都市は、他の地域で建設した都市よりも城壁を高く、厚くする事で強化し、気候変動による砂漠化と外敵の侵入に対しての防御力を曝上げした。
超レンガで作り上げた事も含めて、そう簡単に壊れる事は無いだろう。未来の科学者や考古学者は頭を抱えるかもしれないが、知ったことか。免疫遺伝子を与えた人々を保護するのは当然だよね。
城塞都市の建設には16年掛かり、人口は最初4万2千人が集まった。建設途中から処置を始め、処置完了までに掛かった全期間は18年、人口は12万人になっていた。人口が少ないので、建設に時間が掛かり、処置の時間は短くて済んだ。
それでも、いつの間にかモヘンジョダロより人口が多くなってしまったな。
外壁の高さは15m。厚さは基部10m、頂部3mで内側は3段構造になっている。
一番強度に不安のある城門でも、徹底的に強化した事で、44口径120㎜滑腔戦車砲の砲撃にも何発かは耐えられるだろう。侵攻してきたアーリア人がそれ以上の攻撃兵器を持っていない事を祈るよ。
統治用アンドロイドは№4で「アブー・アル=アッバース」と命名した。
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さて、次はメソポタミア文明地域だ。
チグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域と言われているが、実際の文化圏はもっと広くなる。そこで、拠点はバグダッド南東約350kmのウル・ジッグラト遺跡が有った場所に作る事にした。発見時、ウル・ジッグラトは風化して、ボロボロになっていたようだが、修復後のジッグラトの写真では、ピラミッドに負けない荘厳さが有った。
それならば、同じような形の、偽ジッグラドを作って、その周りに大きな都市を先に作ってしまっても、問題ないだろう。
ウル・ジッグラトを模倣して都市の中心に据えれば、さぞかし立派な都市が出来るのではないだろうか。
建設材料は、ムルターンの城塞都市建設で使用した超レンガを使うけれど、こっちはもう少し白っぽい色にした超レンガで作る事にする。
建設する偽ジッグラドの規模は60m四方で高さは15mにした。本家のジッグラトはもう少し大きいけれど、使用目的からすれば、これで充分な大きさだと思う。
そう言えば、ウルのジッグラドはバベルの塔のモデルになったという説が有ったようだが、こっちの偽ジッグラドは何なのモデルになったりするのだろうか。小説や漫画の題材になったら楽しいだろうな。
偽ジッグラドの正面階段を上って入った所に転送室を設けた。部屋の内装にはジッグラドを模して壁画等を描いておいたので、未来の人が見ても宗教的施設にしか見えないだろう。大体、転送室と言っても、システム的には全て時空転移装置側でマリアが統括しているので、こちら側には何も無いんだから、いくら調べても本当の使用目的など分からないはずだ。
住民は西側300km、東側500km圏内から集めたので、遠くに住んでいた人は、移動に4カ月も掛かったけれど、なんとか20万人を集める事が出来た。
城塞都市としての規模は東西30km、南北20kmの長方形で、城壁の高さは15mで構造もムルターン城塞都市と同じにしている。
建設に掛かった期間は19年。処置完了までに掛かった全期間は26年で、人口は約85万人になった。
統治用アンドロイドは№5、名前は「シェフザーデ・ムスタファ」とした。
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古代オリエント地域最後のエリアはエジプト文明地域だ。
この地域で大抵の人が持っているイメージは、ピラミッドとスフィンクスだと思う。後は砂漠とかナイル川等かな。
しかし、紀元前1万1千年頃は、まだサハラも砂漠化していなくて、緑豊かな地域だったと聞いたことが有る。湿潤期のピークが紀元前7千年頃と考えると、当分は砂漠になる心配はしなくて済みそうだ。
それにエジプトはナイルの賜物と言われるくらい、ナイル川の豊富な水量に支えられて栄えた文明だから、開拓のやりようによっては砂漠化の影響も最低限に抑える事も可能だろう。
都市の建設場所は、ナイルデルタ西端部のアレキサンドリアで、その西側にある湿地帯を避けた台地上にした。ナイル川の氾濫によって水浸しになるのは勘弁してほしいからね。
都市の規模は東西25km、南北30kmの長方形。歴史上、内乱や外征、果てはペルシアの侵略などが有り、最後はローマによる占領と激動の歴史が残されているから、少なくとも外敵の侵略から防御できるように、城壁も高さ30mに強化して要塞化するつもりだ。使用する建材は例によって超レンガだが、他の城塞都市よりも強度を増すように、素材の配合を変えている。その上、ムルターン城塞都市や偽ジッグラド城塞都市で作った城壁よりも厚くして防御力を上げ、頂部も10mの巾に拡張する事によって、ここにバリスタや投石器を設けたり、時代が進めば大砲を据え付ける事も出来るようにした。もっともこの時代だと、まだ弓矢と投石くらいしかないかな?
住民の家は基本的には城塞都市の中に作られているが、耕地はナイルデルタの広大な低地部に作られていて、距離的に行き来が大変な住民は、耕地の近くに洪水対策として高床式にした住居を作って住んでいる。
耕地については、エジプト時代に行われていたナイル川の氾濫で流入した肥沃な土を利用する方法を踏襲するが、無秩序な洪水は色々と弊害もあるので、大規模な治水工事により、氾濫の際の水の流れをコントロールする事で、必要な場所だけに肥沃な土が流れるようした。
後は、サハラ周辺の水利を調整して、今後起きる気候変動による砂漠化を出来るだけ抑えて、現在の緑地面積を保持する事を考えている。それが出来れば、地球環境にも良好な影響が与えられ、且つ、食糧生産にも寄与できるのではないだろうか。
話は変わるが、マリアによるとお隣のリビアがある地域にリビアヤマネコといわれるネコ科の動物が発見されたそうなので、何匹か確保してもらい、アレクサンドリアで飼いならして、家猫にしてネズミ対策にするようにしておいた。いずれ数が増えれば各国に連れて行って飼って貰おうと思う。
アレクサンドリアの開拓には、半径500km内に点在している住民を集める為に半年掛かり、開拓開始から都市建設までは25年を費やした。建設途中から人工授精を開始したが、処置の完了までに掛かった全期間は33年となる。
最初に集めた時の人口は32万人、処置完了後の人口は120万人で、長江地域に次ぐ大都市になった。
統治用アンドロイドは№6で、名前は「ナルメル」にした。
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これで古代オリエント地域の全処置は完了だ。
この地域だけで77年掛かり、弓状列島からの全期間は約190年になった。
今の所、俺の外見は全く変わっていない。不老処置が完璧に効いているようだ。病気についても腹痛一つ起こしたことが無い。丈夫になったものだ。
各都市の建設中でも時間が有る時は弓状列島や中国地区など、先に処置が終わった所に顔を出して、様子を見たり話を聞いたりしてきた。
各地域の開拓を進めながら新しく思い付いた物や、他でやって見たらよかったもの等を、先に処置の終わっている地域にフィードバックしておく。他にも問題が起きた場合のフォローを行い、やる事は多く忙しかったが、その分、人々から忘れられる事も無く、神の使いとして敬われる状況を維持できた事は幸いだっと思う。
四大文明の各地域で処置を終える事が出来たので、マリアの許に戻ってゆっくりする事にした。
190年も働いて来たのだから、少しくらい休んでも良いだろう。
施設の部屋に戻って、テーブルと椅子を出してもらい、初めの時のようにコーヒーとお茶菓子を用意してのんびりする。
壁のスクリーンには、190年前とは様変わりした、縄文時代とは思えない町に多くの人が生活している様が映し出されている。
初めて見たときは竪穴式住居が点在して、19人が暮らしている小さな集落だった。
今では10km四方の町になっており、人口も30万人を超えているだろう。規模は江戸を超え、人口も江戸の初期くらいにはなっている。いつの間にか、外周の柵も3m位の高さになっていて、外側の堀も幅や深さが大きくなっている。なんか社が小さく見えると思ったら、元々の社の後ろに10倍くらい大きな社が出来ていた。
久しぶりに遊びに行ってみようか。長は何代目になるんだったか。5代目だったかな?
この前言ったのはアレキサンドリアの建設中だったから、10年くらい前になるんだな。
縄文海進による水位の上昇が終わり、関東平野が出来るころには街壁の外に新しい街を開拓して拡散していく事で、更に発展していく事だろう。
出来れば戦争など起こさないで、皆仲良く暮らしてもらいたいものだな。
一話で古代オリエント文明地域の開拓を終わらせてしましました。
それでも77年掛かっているのですけれどね。
これから地中海を渡って対岸のエーゲ海文明地域です。
風光明媚な所ばかりで楽しいです。




