第8話 世界の各地域攻略について
ようやく日本国の再開発が終わり、次は中国地域です。
こちらは広大な大陸なので、開発も時間が掛かり、大変ですね。
人も多いから、国土を広げていきましょう。
さあ。いよいよ弓状列島外の攻略開始だ!!
最初に手掛ける地域は中華人民共和国、通称中国の東部だが、勿論この時代には国名といったものは存在しない。まあ、他の国も同様に国として存在した所は無いのだが。
地球上の人類がアフリカ南部から移動を開始し、東アジア、ヨーロッパ、アメリカへと拡散していくにはそれ相応の時間が掛かり、最新の発見では中国東部の辺りまで移動したのは5万年から12万年前だと見られている。ヨーロッパ方面はそれよりもう少し遅くなり、アメリカ大陸には2万5千年前くらいには、氷河期のベーリング地峡を通って、インディアンの祖先等が移り住んだと考えられているようだ。
いったい何が原因でアフリカ大陸などという広大な大地から、見た事の無い他の土地へと移動していったのか分からない。一説によれば気候変動とか生存競争に負けたとか。猛獣などに終われてとか色々ある。でも、そんな理由も有ったかもしれないが、俺は好奇心によるものという説に大いに共感する。いつの世にも、この先に何が有るのだろうという好奇心が、大きく物事を動かすのではないだろうか。
それはさて置き、その後、文明と言われるものが発生するには更に時間が掛かるのだが、人が集まり始めた時期としては、最も早かったと思われるのが黄河文明地域だと思っている。進んできたら、先は海だったから船を発明しない限り、一旦は止まらないわけにはいかなかったんだろうな。
21世紀の中国は国土も大きく人口も14億人以上と非常に多い国だったから、縄文時代でも人が多かったのだと思う。日本は少子化により毎年少しずつ減少して、最後に覚えている頃は1億2千万人位だから、それに比べると本当に多いよな。
そんな最多人口を誇る地域の中でも一番目の攻略目標は、最も古い遺跡が見つかったと言われていた長江文明にして、その中でも長江中流域に拠点を構える事にする。位置的には21世紀の中国湖南省岳陽市から西に200km位離れた所だ。この付近では彭頭山遺跡や八十壋遺跡といった遺跡が発見されていたそうだから、きっとこの頃でも人が集まっていただろう。此処を中心に周辺の人を集めれば効率が良いと思う。
二番目は黄河中流域にある河南省鄭州市の辺りを目標にする。裴李崗文化といわれる文化の代表的遺跡があったらしい。ここから河口に向かって遺跡が有るようなので、多分人集めには都合が良いんじゃないかと思う。
三つめの目標は遼河下流域の遼寧省凌海市付近にして、良さそうな場所に拠点を設けよう。遼河文明が有ったと言われているからな。
他にも多数の文明が有ったが、概ねこの3地域を押さえれば、中国文明地域については、それなりにカバーできると考えている。
蛇足ではあるが、この黄河文明という名称は俺が義務教育中に習ったもので、俺の子供達の時代では中国文明と教わっていたようだ。
学習時期によって名称や年代が変わってしまうので、子供達と話していても食い違いが出てきて困ったものだが、地理的に見ればお隣さんの事なのだから、余り細かいことは気にしないようにしようと思う。
なお、基本方針として、人工授精を行い、十分な免疫遺伝子の拡散と定着が確認できれば、それ以降は文明の発展には関与せず、成り行きに任せるつもりだ。
これは、処置が終わった弓状列島にも言える事だが、放置する事で従来の歴史に少しでも近づいてくれれば良いな、と考えている。
弓状列島ではかなり歴史の時間を進めてしまったので、元の歴史には戻れそうにないけれど、地域間の交流を始めれば、競争が始まって自然な流れの歴史が始まるのではないかと思うのだ。
俺とマリアはその中で、時々サンプリング調査を行い、免疫遺伝子の状態を確認して異常が有れば、その都度介入していく位で行くつもりだ。
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そう言う訳で、中国文明地域攻略の第一歩として、長江中流域の岳陽市西側に拠点を設けるべく、監視用ドローンを先遣隊として転送し、現地の状況を確認してもらう。衛星軌道からも確認作業は行っていたが、詳細な地形等の情報は実地調査が必要なので、それには監視用ドローンが一番だ。
それから、今回は今まで使っていた、非常用シェルター改の社を使うのは難しいと判断した。これは、この先行っていくインダス地域やエジプト地域等でも同じことが言えるのだが、日本的な社では現地で浮いてしまいそうなので、時代考証は考えないとしても、その地に有っても余り可笑しくないような、形状の建物を設置したいと考えている。
早い話、この地域では中国のお寺等の建築様式を模倣して、建設する方法で行こうという事だ。
この時代に竪穴式住居以外の建築様式などないだろうし、俺は、遺跡として発掘されている古代中国の建築様式なども知らないので、マリアに幾つか情報を検索してもらった結果、今回は二里頭遺跡の様式を採用する事にした。紀元前1800年頃の遺跡だったという事だが、多分紀元前1万1千年に有ってもさほど違和感は無いだろう。ちょっと無理かな?
建物としては100m四方位と今まで使用してきた社に比べて大きいが、平屋だし、住居部として使えそうな建屋は余り大きくないので、これ位あった方が何かと便利なのではないかという事で決定した。この建物を中心にして環濠集落を造れば、それなりの都市国家が作れるだろう。
基礎部分は建物の大きさよりも少し大きく120m四方を整地すると共に、完璧に水平を取って50cm角の石材を敷き詰めた。勿論、この基礎の下10mには50m角の地下室が設けられており、統治用コンピューターと統治用アンドロイドのメンテナンススペース、省電力蓄電池システムが設置されている。蓄電池の充電には拠点の屋根にソーラーシステムを偽装して設置して賄う事にする。
上部の建物としては既製品が無いので、非常用シェルター改のようにワンタッチとはいかない。
少し面倒くさいが、現地の木を伐採して施設に運び、建設資材に加工してから再度現地に送って、建設用ドローンとアンドロイドで一気に作る。一応木造建築に見えるように作っているが、使っている資材は木も漆喰や建具類も、特殊加工で鋼鉄を超える強度と未来基準の耐火耐腐食性能を持たせたから、ちょっとやそっとでは壊れたり火事で焼けたりすることは無いだろう。
多分、21世紀になっても立派に残っていると思うのだが、こんなのも遺跡扱いになるのかな?
セキュリティーも完璧にしてあるから、進入できる人がいるとも思えないので、オーパーツ扱いになっているかもしれないけどね。
建物の特徴になっている、四方を塀のような建物で囲った中庭部分が転送エリアになっている。
一度に転送する人数が10人から200人に増えたので、屋内にエリアを設定する事を諦めて中庭にしたけれど、門を閉めてしまえば中を見ることは出来ないから、特に問題なしとした。
ここから処置施設の転送室に直接送って処置を行う事で、効率化を図る事になる。
後は、地域内から此処までの移動時間がどれだけ必要になるかが、時間短縮の鍵になりそうだ。何しろ、弓状列島とは対象範囲が違う。凡そ半径1千km及ぶ範囲が対象になるので、まだろくな道路がない事と川や山などの地形等から考えれば、移動時間も10倍は掛かると思われる。一番遠い所からだと、間違いなく2カ月以上掛かるだろうな。
その間の監視とフォローの負担が、マリアと監視用ドローンに掛かってくるので、それだけでも大変面倒な事になりそうだ。
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さて、拠点の建設が完了すれば、後の開拓自体、規模は変わってもやる事は同じである。
今回は後回しにしてしまったが、例によって神様のお告げタイムである。
弓状列島とは場所的にも環境的にも違うから、こっちは仏様に出て貰おうかとも思ったのだけど、考えてみたらブッダも誕生前だし、わざわざ仏様に登場してもらう意味が無いんだよね。ということで、前と同じ神様で御告げタイムとなったわけだ。
その後の町作りは中心地を俺の館にして、長安を模した街並みを作る事にした。初めの内は、必要な建設資材に建設予定地で伐採した木材を施設で加工して、規格を統一した家を建てる事で建設の効率化を図る。建売住宅の考え方だな。色や飾りなんかで外観に違いを出さないと、どれが自分の家か分からなくなりそうだが。
途中からは、木が足りなくなったので近くの山へ行って木を伐り出して建材作りを行ったが、禿山になると色々と問題が発生するので、伐採した後には必ず植林する様に指導しておいた。緑が少なくなって環境の温度が上がったり、土砂崩れの原因になったりするから、対応だけは忘れずにしておかないと後で大変なことになる方ね。
弓状列島では竪穴式住居から少しずつ建築様式を変えていったけれど、こちらでは最初から竪穴式住居などの縄文様式は無視して、唐時代以降の建築様式を使用する事にした。ついでにローマ様式の上下水道を張り巡らせ、防火対策用に大通りの道幅を広くして、町内には水路を廻らせるなど、やりたい放題である。当然、家の外装に使われている漆喰や屋根には防火処理した材料を使用しているので、大規模な戦争等での攻撃は別として、普通の火災程度なら大火になるような事は無いだろう。
因みに、上水道は都市上流の長江取水口から水道橋を使い、市内各所の水場に引くようになっている。所々に作った広場には噴水もあるから益々ローマっぽくなった。下水は地下に下水道網を広げ、都市の下流側に下水処理施設を設けて出来るだけ水を綺麗にしてから、処理水を長江に放流する方式にした。
なお、長江地域の開拓中に時間を取って、弓状列島の各国の下水道も見直して、処理能力の向上を図っておいた。やっぱり環境保護は大事だよね。
こうした長江中流域を中心とした開拓は、住民を集め終わるまでに3カ月掛かり、その後の開発には15年程掛かって、最終的な城郭都市の規模は30km四方となった。
開拓開始時に集まった人口は32万人だったが、完了時には150万人になっていた。人口密度は約1700人/km2で、京都市よりは少ない位かな?当然だけど現時点では間違いなく、世界で一番大きい都市になったな。
人工授精処置は開拓10年目から随時実施し始めて、城塞都市完成後、11年で完了する事が出来た。新しい処置施設が十分能力を発揮して、処置時間をほぼ予想通りに短縮できた事で、想定通りの期間で完了する事が出来た。この結果には大満足だったよ。
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この調子で黄河文明地域と遼河文明地域の開拓と人工授精処置を行ったら、中国文明地域の処置完了までに約80年が掛かりました。
遼河文明は周辺の人口が他の地域よりも少なかったので、城塞都市も小さめになった。
その上、海に近い事から海進の影響を受けそうなので、建設場所の選定に時間が掛かったし、地盤も余り良くないところが多かったので、土地改良や工法の工夫が必要になったりで、結構面倒だった。
完了までの時間は約19年掛かり、城郭都市の規模は20km四方、人口は25万人から完了時には90万人になった。
黄河文明地域の方は長江の時と余り変わらなかったので、特に問題も発生しなかったけれど、開拓開始時に45万人が集まり、完了時には200万人になっていた。城郭都市の規模は30km四方となった。完了までの時間は最長で35年となった。
ともかく中国の広さを思い知らされる開拓でした。
突然話は変わるけど、考えてみれば昭和初期の日本はよく、こんな広大な国と戦争をしようと思ったものだな。素人目で考えても補給線が伸びすぎて、じり貧になる事が判りそうなものだぞ。万一焦土作戦を取られたら現地調達も出来ない上に、事態の急変時には司令部との連絡も難しいとなれば、日本陸軍程度の数では、広大な大陸に飲み込まれて終わりだ。その上、2正面作戦でアメリカとも戦争しようなどと、それだけの国力を持った国が、あの当時どこかに有ったか?
世界情勢から、やむを得なかったのかもしれない。その上、日本の外交下手では外交で何とかしようするのは無理だったのだろう。それでも、資源も無く人口も少なく、海上封鎖されたらあっという間に干上がってしまう国なのだから、戦争を解決手段に選ぶのは下策だったよな。
まあ、戦後生まれで実戦経験の無い俺が、何を言っても無責任なことになるからこの辺にしておこう。
ともかくこれで中国文明地域の攻略は完了。後の事は、3地域それぞれにマリアが育てて来た統治用アンドロイド№1~3が着任し行政活動を開始したので、次の地域へ移って行こう。
蛇足なるかもしれないが、№1は「孔子」、№2は「孟子」、№3は「老子」と名付けた。
安直で申し訳ない。
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さて、次の攻略地域はインダス文明ですね。
パキスタンのほぼ中央を流れる川の流域に栄えた文明だな。
中国文明と違い、拠点は一か所で対応出来そうなので楽なのだが、気を付けなければならない点が有る。
それは、この地域の滅亡原因が外敵からの侵略によるものと砂漠化によるものの2種類存在する事だ。
開拓にあたり、その辺の事に配慮して、十分な対策を講じておかなければならないだろう。
インダス文明で有名な遺跡のモヘンジョダロは、インダス川下流に近い西側に有ったが、俺が開拓しようとしている所は、もっと上流で21世紀ではムルターンという地名だったと思う。
モヘンジョダロは宗教的な色合いが濃い遺跡で、主に焼きレンガを用いて作られていて、21世紀でも世界遺産に登録されていたはずだ。そこで、ムルターンに作る城塞都市も焼きレンガ風で作ろうと思う。目立たないようにする為だが、勿論実際は未来の強化された素材によって作られた、風化する事の無いレンガだ。
そのレンガを標準仕様として一般的な家屋も作るから、周辺が砂漠化しようと、外敵の侵略を受けようと、壊される心配はほとんどないだろう。
さあ、頑張って開拓を始めよう。
アンドロイドの名前が「孔子」、「孟子」、「老子」
安直ですが、他に考え付かなかった。orz




