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人類改造記:現代のおっさんと未来の人工知能が人類滅亡回避で2人旅  作者: 東風
第2章 縄文時代でミッション開始
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第7話 インテルメディオ

いよいよ日本の改革も終わりになります。

次の目標に向けて少し準備をしておきたいですね。

そんな回です。

 弓状列島。所謂日本列島の事だが、免疫遺伝子の拡散と定着については一応完了したと思っても良いので、いよいよ次のミッションに掛かる為に世界へと目を向ける事にした。


 この時代、紀元前1万1千年頃の世界の人口は一説では約500万人と言われている。弓状列島と比べるとやっぱり多いよな。

 そこで、出来るだけ効率よくミッションを遂行する為に、他の地域より人口が集まっていたと思われる四大文明の発生地を最初の開拓地とすることにした。

 遺跡の状況から考えると、結構古くから人が集まっていたようなので、先行してマリアに調査をお願いしておいたのだが、この4か所で地球上の全人口の75%、約375万人が住んでいる事が判った。

此処の開拓を行って処置を行う事が出来れば、ミッションは大きく進展するだろう。

 その次に開拓を行おうと考えているのは、四大文明地域以外で、ある程度人口が集まっていたと思われるヨーロッパ地域とアメリカ地域だ。

 ヨーロッパ地域は地中海沿岸地域、所謂エーゲ海文明と東ヨーロッパ地域を重点的に、又、アメリカ地域は北米のアラスカ地域を含めて分割した4地域、南米は主にインカ文明やマヤ文明が発達した地域を中心に3地域とした。

 この地域には全人口の15%、約75万人が住んでいるので、四大文明と合わせれば、全人口の90%位がカバーできる事になる。

 残り10%はそのままにしておいても各地域に吸収されてしまうと思うが、余裕が有ったら対処していこう。広範囲にばらけているから集めるのが大変なんだよ。


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 実は、弓状列島のミッションを遂行していた20年の間に、俺はマリアにあるお願いをしていた。

 それは、この時代について、マリアに色々と聞かされた時から気になっていた事で、人工授精施設の拡充と人種に対する影響を出来るだけ軽減することだった。


 まず、人工授精施設の拡充についてだが、弓状列島のミッション完了後に行うと考えられた地域の範囲が大きさが、弓状列島の大きさと違いすぎる事が問題で、開発開始当時、人口2万人程度の弓状列島で20年掛かかる事が予想された事から、四大文明の1地域だけてもその何十倍も時間が掛かるだろう事が容易に想像できた。


 今の時空転移装置の施設にはベッドが50床有るが、その内人工授精に使用できるベッドは10床で、最大処置人数は約7時間で10人となっている。もし、設置されているベッドが全数使用できたとしても、単位処置時間は変わらないので全員の処置に35時間かかる事になり、休まずに処置しても1.5日掛かる。

 これではマリアには対応できても、俺がもたない。

 四大文明地域の内1地域の平均人口を90万人として、3日で100人処置すれば2万7千日、約74年掛かる事になる。しかも休みなしでだ。いくら何でも時間が掛かり過ぎである。最低でも12時間で100人以上処理できるようにして欲しかった。

 それが可能となれば現在の処理速度を20倍に引き上げる事が期待できる。

 1日の処理数が20倍の200人に増える事で、処置に掛かる日数が休みなしで約74年から1日12時間勤務で約12年に短縮できることになる。

 この差は大きい。


 しかし、現在の施設内にはそれだけの処理設備を作るスペースは無いので、新しい処置施設は外部に建設する事にした。

 これは、マリアと話していて判ったことなのだが、未来の人達もちゃんと問題を理解していたようで、施設の拡充について用意してくれていた。監視用ドローンの改造や新規製造が出来るようになっていたが、テンプレートで人造人間、所謂アンドロイドの製造や建設等の監視目的以外のドローン製造施設が増設できるようになっていて、その為に必要な鉱石採掘用マシンも用意されていたから、これを利用させてもらう。


 時空転移装置でもある施設の建造には、当時の最先端の技術と設備を活用し、大勢の技師、技術者が関わって行われたが、新しい処置施設を作るのはマリアと俺の2人?しかいない。

 周りには縄文人は沢山いるのだが、機械設備を造る為の基礎知識が無いので、作業員には出来ない。現代の日本人のように最低限の義務教育課程を修了しているからこそ、それなりの作業を行う事が出来る訳で、四則演算も物差しの使い方も習った事の無い人間に、いきなり精密機械の組み立てなど出来る訳が無いのである。

 その点、人型のアンドロイドは、人間が行う作業を予めインプットされているので、人間と同じ指先を使った繊細な作業を行えることがメリットであり、建設作業員として非常に優秀になる事が考えられる。

 そして、もう一点。弓状列島はマリアのお膝元ともいえる場所なので、直接監視や支援を行う事に支障がないけれど、これから活動を世界に移していくと、拠点が増える毎にマリアの負担が大きくなるばかりだ。そこで、拠点内に統治用コンピューターを設置する。

 更に外見が完全に人型の統治用アンドロイドを作って、各地域の統治を統治用コンピューターの指示の下、統治用アンドロイドが行う事にする。これでマリアが直接関わらずに済むようになり、空いた時間を別の事に使えるようになるだろう。

 更に、建設用ドローンを製造してアンドロイドの補助を行わせる事で、資材の運搬や組み立て速度を上げる事が出来るから、こちらの製造ラインも稼働させよう。


 こうして、建設用ドローンを100基製造しながら、並行してアンドロイドの製造ラインを作って、差し当たって50体の作業員型アンドロイドと統治用アンドロイド10体を製造する事にした。


 まず、マリアが行って来た広範囲の地質探査によって、各種の鉱床が発見されているので、そこに採掘用マシンを投入して鉄鉱石や銅鉱石、ボーキサイト等の鉱石を採掘し、その鉱石から鉄や銅、アルミニウムなどを製錬する。

 この金属類を更に精錬して製造機械の部品や資材に加工し、100体の建設用ドローンを製造していく。

 そして、建設用ドローンの製造と並行して、作業員型アンドロイドと統治用アンドロイド製造ラインの建造を進め、アンドロイドの製造が出来るようにする。

 こんな風にして、建設用ドローン100基と作業員型アンドロイド50体、統治用アンドロイド10体が揃うまで、足掛1年が掛かった。

 建設用ドローンと作業員型アンドロイドは、この後直ちに各地域の建設現場に送られることになるが、統治用アンドロイドはマリアから直接、統治に必要な教育や、赴任先の風習等に合わせて振舞えるように起居動作を教え込まれることになる。


 人工授精処置施設の建造場所は、時空転移装置が隠されている山から東に50km離れた所と決め、仁徳天皇量の小型バージョンといった感じの前方後円墳を模して作り、南北300m、東西150mの大きさで外側に3重の堀も設ける。埴輪などの土偶も配置しておこうと思っている。

 勿論、あくまでも外観が古墳というだけであり、実際の処置施設は古墳の下50mから100mの深さに建造する。処置施設の出入りは転送機で行うので、古墳の出入口に見える部分はダミーであり、内部の通路も石室までで終わっている。一応石室内には空の石棺を置いておくつもりだけどね。

 古墳を中心に半径300m内は、超音波探査や放射線探査などで地下探査を行っても、通常の地層しか検出できないように隠蔽工作を施しておく。将来学術調査を行っても、只の古墳だと思われるようにしておこう。


 転送室は処置施設の中央部に設けられた縦横150mの大きさの部屋で、4方の壁内に処置エリアを設けて、それぞれ50床のベッドを配置する。

 処置は、マリアが掛かりっきりになるのを避ける為に、各エリア毎に専用のブレインを設置し、時間当たり4人から5人の処置が行えるようした。このブレインはマリアの統括を受けるが、人工授精処置の他にも病気や怪我の処置も、ブレイン単体で判断を行う事が出来るようになっている。これでマリアの負担も軽減する事が出来るだろう。

 これで建造する施設の仕様が決まったので、実際の建設に移る事になった。


 それからは、近くの山の斜面を削って平坦に整地し、周囲に光学迷彩を張り巡らせて内部が見えないようにした建設現場を作りあげる。

 鉱石採掘用マシンが鉱石を採掘し、資材や部品等を施設内で作り、出来上がった資材等をドローンが現場に運んできて、建設用ドローンとアンドロイドが建設を行う。処置施設の規模は200m×200m×50mの立方体になるので、当然重量もそれなりになるから、現場内は重力制御により重力を1/10に軽減している。これで重量物もかなり楽に動かす事が出来るはずだ。

 途中で建設用ドローンとアンドロイドの増産を行ったが、それでも着工から12年も掛かってようやく完成まで漕ぎ着ける事が出来た。未来の建造設備は優秀だったんだろうな。


 後は、予定地点に持って行って地下50mに埋めてしまえば工事完了となるのだが、これも微妙な調整が必要で、結構な時間が掛かってしまった。

 一番の厄介な問題は今後度々発生すると地震等の地殻変動によって、処置施設に損害が出ないように、堅牢な地盤に基礎をしっかりと固定したり、免震構造にしてやらないといけなかった事である。次点の問題は、一時的に大量の土砂を掘り出した事で小さな丘が出来てしまい、防音と同時にカモフラージュを行って、村の人達から隠すのが大変だった事だ。時空転移装置を山の中に収めたように、分子レベルでの排除が行えれば良かったのだが、かなり微調整が必要な技術の為、自分以外の物で実施するのは難しいというので、普通の土木工事になってしまったわけだ。


 どちらも何とかクリアしたが、マリアにしてもかなり気を使ったようで、外観の古墳製作まで完了した時は、もうしばらくはやりたくないと零していたほどだった。


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 次に、もう一つのお願いについて。

 遺伝的形質を考えると、弓状列島では基本的にモンゴロイド系住民が大多数を占めていた為、そこに俺というモンゴロイド系の遺伝子が入ってもさほど見た目に変化は生じない。

 おそらく中国文明地域やエスキモーやインディアン等の北アメリカ文明、インカ文明地域等においても同様な事が言えると思う。

 しかし、インダス文明地域やチグリス・ユーフラテス文明地域、エジプト文明地域、地中海文明地域等では事情が変わってくる。

 これらの地域では主として白人種や黒人種が大多数を占めており、ここにモンゴロイド系の遺伝子を入れてしまうと、民族性が損なわれる恐れが出てくる。

 適応放散により長い目で見れば最終的に白人種や黒人種になると思われるので大した問題にはならないのかもしれないが、この辺は余り変えない方が良いような気がするので、俺の遺伝子からモンゴロイド系の形質に関する部分を除去して、免疫遺伝子のみ受け継がれていくように遺伝子改良を行ってもらった。

 歴史改変を進めている今の状況では、余り説得力がない事は判っているが、変えないで済むことは変えないようにしていきたいとは思っているんだよ。


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 以上の2つのお願いの内、遺伝子改良については特に問題も無く解決できたが、処置施設については無事に設置が完了してからも、実際の稼働にはさらに時間が掛かった。

 やはり、人工授精という繊細な処置を施す施設なので、運用前の調整や室内環境の無菌化などが大変なようだ。

 マリアも能力の70%をこの調整の為に使っていて、縄文時代に来てから一番能力を使った時なのではないだろうか。超性能の人工知能がかなり疲れた様子をしていた。

 それだけの労力をかけたおかげで、処置施設は無事に稼働する事が出来るようになったのだが、稼働開始は弓状列島での処置が終わった頃と、ギリギリのタイミングになったのだった。間に合って良かった。

準備が出来れば世界に向けて出発になります。

まずは中国地域からになりますね。

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