第6話 さらに村から国へ昇格と宗教は?
明けましておめでとうございます。
今年もダラダラと投稿させていただきます。
宜しくお願い致します。
縄文時代にやってきてから1年1ヶ月がたった。。
俺は、現代でいう所の青森県三内丸山遺跡が有った辺りにやってきていた。勿論まだ遺跡のもとは作られていないけれどな。
やる事は前の村と同じ。最初にマリアが非常用シェルター改を転送し、その後俺がシェルター改の傍に転送される。
その場で非常用シェルター改を展開して見た目が雅やかな社とする。
ここから最寄りの集落まで徒歩15分。なんかどこかの分譲住宅の謳い文句みたいだな。手頃な通勤圏内ですよとか。近くにはコンビニも学校も無いから不便だけれどね。
まあ、手順は前の村作りで概ね確立できたから、特に問題は無いだろう。
という事で、前回移住者の行動モニター用に使用したドローンをこちらに回し、神様出現から移住開始までの一連のイベントを行う。2回目での嫌な汗をかきそうなほど恥ずかしい場面だ。
前の村では開発が完了した時点で、村を中心とした監視設備の構築も出来上がっており、リアルタイムでの安全対策が充実した為、監視用ドローンは5基を残して全部こっちの村の開発用に持ってきている。
今回はこの地を中心に、半径350km内の人間を移住させる必要が有って、前回よりも範囲が広く、それだけ遠くの人が移動する為に必要な日数が増える事になる。一番遠い所からの移住者は概算見積で27日掛かると見ているが、天候その他の条件でさらに時間が掛かる事も考えられるから、その分道中のフォローもしっかり見てやらないといけないだろう。
移住者の選定範囲がなんでこんなに広大になったのかというと、この地域の人口密度が前の地域の1/10と低いからだ。2000人規模の纏まった人数を集める為には、より一層広い範囲からに集めなければならないので、その分とても大変だよ。
作った村の規模は前の村と同じなのに、完成までの期間は1年とほぼ1.4倍位掛かってしまった。人が集まるのに時間が掛かった事が最大の原因だけれど、これはもう仕方ないよね。
さて、こちらでも雨の日は開拓作業が中止となる。そんな時は前の村に行って農作業を教えたり酪農業を教えたりと、人口増加に対応する為の技術的指導を行う事で、時間を有効に使う事が出来た。
このような指導は新しい村でも行っていくつもりだ。
農作業は、社から南へ500m離れた所を基準して、南側に向かって出来るだけ水平になるように1区画当たり1反の正方形をテンプレートに20面作らせた。その後、石を除きながら深めに耕して、徹底的に土を細かくさせる。田んぼの周囲は少し高く畝を作り、付近の川から農業用水路を引っ張って水を張った。
暫く水を流し込んでおいてから代かきを行い、良く練った土を畝に塗り付けておく。これで水が溜まれば成功だろう。後はトンボを使って田んぼの底を水平に均し、まだ硬い所が有ったら都度耕して行くように教えた。
初めとしてはこんな物だろう。出来上がった水を張った20枚の田んぼは、水面に青空を映して中々見応えのあり景観になり嬉しくなった。
田植えに使う苗は施設に載せてあった寒冷地に強い品種の種もみを使い、苗床作りから実際に作業を行いながら教えて行く。
普通は種籾を塩水選で選別したり、病気予防等の為に消毒を行ったりするが、今回は厳選して施設に積み込まれていた籾なので、この手順は飛ばした。
今回使用する苗箱は施設で作ってもらったもので、そこに土を入れて平らにならし、十分浸種して少し目が出て来た状態にした籾を蒔いてやる。
この時代にビニールシートなどないから、苗箱は日中外において、夜は家の中に移動させる。流石に夜は寒くなりすぎるからな。雨の日も家の中だ。
5葉位まで成長したら田植えに移る。綺麗に植えられた苗の緑が風に揺れるのが、また良い眺めだな。その後は田んぼの手入れ等の必要な事を順番にじっくりと教え込んだので、俺がいない時も問題なく対処できるようになったと思う。
大量の水が必要な米作りに対して、麦作りは水はけが大事なので、少し高台になっている社の西側に、こちらも1反単位で20面の畑を作らせた。
夏の終わりころから十分に耕して、土を適度に細かくし、大体70cm間隔で畝を作って肥料を鋤き込み、小麦を蒔いて覆土をする。
水気に十分注意して、雨が少ないようならドローンを使って水まきを行う。発芽して少し伸びたら皆で麦踏を行ってもらった。
秋から冬にかけて何度か麦踏を行って暖かくなってくると、麦は一気に成長し始めた。
雑草が生えて来るので適当に草刈を行い、夏前には見事な金色の畑になって無事に収穫が出来た。
米と麦が取れるようになったので、食糧自給率も格段に良くなるだろう。後は、耕作面積を増やしていけば人口増加にも対応できるはずだ。
まあ、細かい管理や肥料については、今の所マリア頼みだけどな。
こんな風に農業開拓を並行して進めながら、狩りで確保した猪や鹿を家畜化したりして、足掛け2年2カ月掛かって、やっと2か所目の人工授精処置が始められる所まで来た。
転送機を使用するので、距離が離れても移動時間が掛からないのが本当に助かるよ。
その後、特に問題は発生しなかったので、こちらの女達も4か月で処置を終える事が出来た。
*********************************************************
この調子で時々前の村に戻って、生まれて来た子供たちの様子を確認している。
皆1歳を超えて健康状態は良好のようだな。食料もマリアからの供給が有るから豊富だから栄養状態は完璧だし、監視体制が充実しているおかげで、不慮の事故が発生する事の防止に繋がって、今の所一人も欠けることなく成長しているのは本当に嬉しいものだ。
最初の子供が生まれてから1年以上経っているので、村内では普通に男女間の交渉が行われ、現在妊娠中の女も結構いる。まあ、自然受精の場合は、100%の妊娠は無いので、30%以上の女が妊娠していないようだが。
これは、初めからマリアの計算で予測出来ていた事なので、残った30%の約380人の女を順次施設に送って人工授精を施していく。
それと並行して、人工授精で生まれた子供達も施設に連れてきて、健康診断と各種予防接種を受けさせ、生存率の向上を図った。
この時代、病気以外での死亡は、事故や動物に襲われたり、外部からの襲撃等によって受けた怪我によるものが考えられるが、監視設備や監視用ドローンによりそういった危険は大幅に減っている。もし万一そのような事故が発生した場合は監視用ドローンや監視設備から警報が発せられ、マリアの判断で施設に転送して手術等の処置を行う手はずになっている。
後は、村内における衛生面の充実を行う事で、より一層の効果が見込めるだろう。
そこで、農業用水とは別に川から水を引き込み、村内に大きな露天風呂を建設し、入浴の習慣化を図ると共に、手洗い場を作って作業後や食事前の手洗いを習慣化させ、同時に衣服の洗濯もまめに行うように指導することにした。
さらに公共のトイレをバイオ式で作り、トイレ以外での用足しを禁止すると共に、溜まったら肥料にも使えるようにした。やっぱり清潔が一番だよね。
後は、村周辺に除虫菊に類する植物が無いかマリアに探してもらい、見つけた草を施設で加工して蚊取り線香を作ってもらった。
蚊による病原菌の媒介は怖いから、出来るだけ蚊の駆除を行っておきたいと思ったのだ。
どうしても水溜まりや藪が多いので蚊は発生するんだよね。殺虫剤の散布も考えたけど、余りやりすぎて環境に影響を与えるのも問題だし、キリがないから各家で蚊取り線香を炊いて貰う事にしたわけだ。
漁網の作り方を知っている人もいるが、まだ、蚊帳を作る程の技術は無いからな。
*********************************************************
こんな感じで弓状列島の9地域を村化しながら、全地域の1回目の人工授精を完了するまで13年近く掛かり、その後も各地域で定期的に4回ずつの人工授精を行って、同じ数の子供達に予防接種を行う事で生存率を上げ、20年後には弓状列島人口の80%以上に免疫遺伝子を与える事が出来た。
ここまで免疫遺伝子が拡散すれば、後は免疫遺伝子の保持者は自然に増加し、反比例して免疫の無い人が減少していくので、免疫遺伝子が優勢な状態となって弓状列島における処置は一応完了となる。後はマリアに監視してもらいながら、時々サンプリングで確認する程度で大丈夫だろう。万一、何らかの理由で勢力が反転するような、状況が悪化する傾向が見られれば、即時介入する事になるけどね。
それぞれの地域では稲作も畑作も十分な耕地を保有する事が出来たし、家畜も必要な頭数を確保できるようになったので、食糧自給率は100%を超えて、非常時の為の備蓄も出来るようになっていた。
高床式倉庫を複数棟建設し、備蓄食料を保管する様に教えておいたら、多い所では10棟も高床式倉庫が建っていた。皆頑張っているんだな。
ただ、木材について角材や板材の作り方を教えて、家や倉庫の建築に利用し始めた為に、周辺の森が減ってきたように思えるので、密生している森の木を間引きして伐採するとともに下草を刈り、自然に生えて来た苗木を適当なところに移動して植林を行って、森の奥まで十分な日光が入るように手を入れさせた。
それから、15年目に第1地域を邪馬台国と命名して国に格上げした。人口が4万人を超えたので、村よりも国にした方が良いかなと思った事と、21世紀ではまだ邪馬台国がどこに有ったか確定出来ていなかったので、九州説も畿内説も無視して関東地方に有った事にしてしまったわけだ。
卑弥呼はいないし、史実よりも1万年以上早く建国した訳だけど、この際作ったもん勝ちという事で宜しく。
ついでに、邪馬台国で一番初めに生まれた男の子は15歳で成人とし、日本武尊と名付けた。どうせこの時代で知っている人もいない事だし良いよね。
可愛い女の子を弟橘媛と命名して嫁さんに貰ってやろうと思う。
その他の地域も人口増加に合わせて次々に国に格上げしたけど、国名はかなり適当になった。
第2地域は陸奥国、第3地域は長岡国、第4地域は大和国、第5地域は出雲国、第6地域は伊予国、第7地域は豊前国、第8地機は隼人国、最後の第9地域は渡島国として命名し、その時点で村長に就いていた長老を国首に任命しておいた。安直と言わないでほしい。本気で思い付かなかったんだよ。
田畑の整備、国内の区画整理や道路の整備を行い、言葉を統一し文字を教えるなど、様々なことを進めてきた結果、最後の渡島国を命名するまでに足掛け30年掛かったが、この時点で日本の総人口は50万人を超える事になった。
*********************************************************
弓状列島を地域毎に分けて国を作ったが、暗示を掛けて国同士の自由な交流は行わせていない。余り早いうちに交流させてしまうと、混ざり合って地方毎の特色や個性といったものが無くなり、個性の無い国民が出来てしまうので、ある程度独自の文化や言葉が出来るのを待っている。
差し当たっては、地域ごとにキャラバンを編成して流通網を作り上げ、それぞれの地域で産した物資の物々交換を行って、海産物や畜産物などの足りない物を充足出来るようにしている。
いずれ適当な時期に、改めて各国間に道路を整備して、相互の交流を進めてから、統一国家が出来るように誘導しようと思っている。
ところで、この国では天孫降臨といった日本神話というか、古事記や日本書紀にでてくるイベントは起きそうにないのだが、日本史的にはどうしたら良いのだろうか?
日本国として統一国家を作るにあたり、日本国民としての象徴的な神は必要かもしれないし、国外に向けて日本という国をアピールする際にも、ちょっとした材料になるから、何がしら有った方が良いのかなと思ってしまう。
今の所、日本神話が誕生する土壌が全く無いし、イザナミノミコトもイザナギノミコトノいないので、自然発生で大王や天皇といった存在が出てくる事も考えにくいだろう。
最初に名も無き神が現れて人に直接話(一方的に)をし、その上で俺が神の使いとして現れた事で神がいるという事は既存の事実として定着しているが、神とは何かといった宗教的な事は全く広めていない。実際問題として現状は宗教を必要とする状況でも無いんだよな。
疫病予防的な観点から、全地域共通に事故や病気、寿命によって死亡した場合、火葬して埋葬し墓を作るようにさせているが、葬式という概念を含め、冠婚葬祭について教えていない。
強いて言えば身の回りの全ての物には、神や精霊といった目に見えないものが宿っているから、大事にしようねという考えは常に言い聞かせているが、これを万物信仰的な宗教と言っても良いのだろうか。
便宜的に名前だけでも天照大神を主神とし、その下位神として御告げに現れた神を大黒天とするか。人類に繁栄を齎す神様として丁度いいから、大黒神の像を社の表から見える所に祭っておけば、自然に受け入れられるだろう。
まだ仏教もキリスト教も存在していない時代だから、新しい宗教を作ってしまっても良いのだろうが、どうも一神教は性に合わない。俺は日本人だからか多神教の方がしっくりくるんだよ。
大分、日本が纏まってきました。
宗教がらみは色々と物議をかもしやすいので難しいと感じています。
フィクションという事で大目に見てください。