第5話 集落から村へのクラスアップ④
分かりにくい話にお付き合いいただき、いつも有難うございます。
縄文時代の時代考証を丸っと無視して話を進めていますが、あくまでもifの話なので、気にせず読んでいただけると嬉しいです。
さて、周辺からの移住者が到着して、部落の人口も増えてきます。
どんどん開拓を進めて行きましょう。
縄文時代にやってきてから1週間。
社の周りはすっかり整地され、移住者が雨風を凌げる様に仮の家が建てられた。本格的にそれぞれが住む家は、移住者が来てから一緒に建てて行く事にしている。
また、柵作りも北向きに200m位が整地され、一見広い道が出来たような感じになった。もう少し整地を行ってから柵の設置に掛かる予定だ。
そして、今日やっと第一陣の移住者が到着した。
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今日の作業は休みにして、集落全員で出迎えだ。作業的にも1週間働いたから丁度良い休みになるだろう。
集落入口からミナキが長老の所まで案内してから、仮の家に連れて行って荷物を置かせる。
その後、社の前に移住者を含めて全員が集まり、そこへ俺が社から出てきて歓迎の言葉を送る。
今回移住してきた人達は、一番近くの集落から来た15人のグループで、長老を含む老人3人と子供3人、男4人と女5人という内訳だ。
戦力になりそうな人が9人増える事になるから、作業もはかどるだろう。
「神のお告げによりこの地に来た者たちよ、歓迎しよう。俺の名はヤマト。この地にて、お前達を繫栄に導く様に、神に命じられた者だ。
俺はこの地に村を作る。村とは多くの人が集まって暮らす所だ。そして、この地がお前達の住むべき処となるのだ。
お前達が神のお告げを聞いてこの地に来たように、さらに多くの者達がこの地に向かって今現在も歩いている。
見ての通り、今この地は村を作るために皆で開拓を行っている。
お前達も皆と力を合わせて村作りに貢献せよ。
神は常にお前たちを見守っている。安心してこの地で暮らすがよい。
今日は着いたばかりで疲れているだろう。お前達の成すべきことは明日ゆっくり教える。
今は疲れを癒すため、皆と共に飲み語らうがよい。さあ、宴だ!!」
俺がそう言うと、女達が社から料理を運び出し、宴会の場を作り始める。
男達は中央にたき火を作り、棒に刺した肉を焼き始めた。
そして、新しく来た者達を内に招き入れて、早速飲み食いを始めるのだった。
俺は社から降りて、長老たちのいる所に移動し、皆と共に宴会を楽しんだ。
次の日は元の集落の皆には通常通り柵作りと社周りの伐採作業を行わせ、移住組には現在の状況やこれから先の予定の伝達、道具類の使用方法に注意事項といった、所謂オリエンテーションを行った。
内容がそれほど難しい事ではなかったからか、それなりの理解度を得られたので、1日で終わる事が出来たが、この先、人と作業の内容が増えて来れば、ある程度しっかりした作業手順書や工程表が必要になると思う。
その他、品質管理については今の所必要ないので、安全管理だけしっかりとやっておこう。別にお客様に製品を提供する仕事ではないからな。
大体の方針をマリアと相談しながら決めておき、俺は各作業を監督する為に集落の真ん中と東側を行ったり来たりするのだった。
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時は一気に進み、俺がこの時代に来てから半年がたった。
予定より少し遅れたが、1か月で移住者全員が到着し、集落の人口も2500人を超えた。
人口比としては長老クラスの所謂老人が162人、子供が258人、大人の男883人、女1242人となった。
人口の増加に合わせて作業班も都度編成しなおしている。現在は大きく3隊に分け、柵作りなどの村の境界を確定する為の隊、社付近の開拓と家作りの隊、そして農作業と狩猟、集落内の雑事を行う隊としている。
柵作りの隊は更に2班に分かれていて各400人で編成している。最初に作った東の起点からそれぞれ南北に分かれて整地と柵作りを担当させたが、2カ月半で外周40kmの整地が終わり、4カ月目には柵も出来上がっていた。一本一本を丁寧に立てたので、横から見ても斜めになった木がほとんど見られない。中々良い出来だと思う。
今は、柵の外側47mを整地させると共に深さ5mの堀を掘らせている。作業が終われば柵の外側には幅50mの更地に深さ10mの空堀が出来上がり、防御的に十分機能すると思う。野生の動物以外が攻めて来るとは思わないけどな。
社付近の開拓隊は3班に分かれ、1班は整地班は300人、残り2班はそれぞれ80人で家作りを担当している。整地作業は社を中心に半径800mが終わり、家作りは集会用1軒(高床式)、竪穴式住居500軒が出来た。高床式住居は作り方を教えるのに時間は掛かったが、整地と基礎工事が完璧に出来ているので、何とか仕上げる事が出来た。ドアや窓などは全て引き戸にして、出来るだけ隙間が無いようにしたが、ガラスや障子紙が無いので、締め切ってしまうと中が真っ暗になってしまうのが難点だな。
最後の隊は柵の内側で畑や田んぼなどを整備し、麦、米等の穀物や野菜類の栽培を行う班と、鹿や猪等の動物を捕獲し家畜化する班、炊事班といった食糧事情の改善を行う事を目的として、865人がそれぞれを担当している。今の所試験的な栽培を行う為に100m四方の田んぼと300m四方の畑作用地を確保し、それぞれで栽培方法を教えている。
また、鹿や猪等の家畜化は狩猟で確保できた20頭を柵の中で飼いならしている所で、これからも増やしていくつもりだ。見つけられればヤギや牛を確保したいな。ミルクが取れればチーズやヨーグルトも作れるようになるからね。
それにしても、働ける人が2000人以上いると、色々出来るようになって本当に助かるよ。
その他、長老達老人組には、集落内の調整やルールの策定、見直し等、元々長老としての仕事でもあるが、改めて村役場の機能を担ってもらえるように教育し、元々ここにいた長老を村長として組織を作らせた。
仕事場は、社の隣に建てられた集会用の高床式建物の一室を役場にして、主にそこで行ってもらっている。全員が一度に集まっても座る場所がなくなるので、村長以外は交代制にしている。
因みに、マリアから送ってもらっている、所謂サプリメント的な薬を食事に投入して、長老達限定で食べさせた結果、全員が元気で生き生きと仕事に精を出すようになった。おかげで、今の所この集落には何の問題も起きていない。
子供達は基本的に女達が共同で面倒を見ている。昼間は年上の子供が女達から見える所で面倒を見ているが、夜は女達の家に分散して一緒に寝ているようだ。
そういえば、21世紀に覚えた雑学では、この時代は昼間の明るいうちに外で誰彼構わず子作りに励んでいたという事だが、ここに来てからそんな場面には出くわしていない。一種のマインドコントロール下にあるのでそっちの衝動が抑えられているのかな?
まあ、目の前でいきなり始められたら、少々気まずいとは思うけれどね。後でマリアに聞いてみよう。
そんな風に、6日作業したらに1日休みというパターンを覚えさせて、休みの日は自分の好きな事をするように指示しておいた。
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大体9か月かけて村外周の整備が完了し、社周りの整地と住環境の整備が終わる頃、村は冬になった。
家を建てるために使用した木材以外は、全て乾燥させて薪小屋に収納され、冬の間の暖房や煮炊きに使われる。
狩猟で他に入れた毛皮類や木の繊維で織った布も大量に用意できたので、村中の人が寒い思いで寝る事は無いだろう。
俺が施設から持ってきた種を使用した試験的な農業は、農業班の頑張りで何種類かの芋が収穫できたのは成果だが、まだ住民全員の食糧自給率は全く足りていない。かなりの量の木の実を蓄える事が出来た事と、狩猟で確保した肉を干し肉や燻製にして保存食にした事である程度越冬用の食糧が蓄えられたが、この冬は施設からの供給がどうしても必要になる。
春になったら施設の全面支援で田んぼと畑を整備し、米と麦の栽培を本格化させなくてはならないだろう。この2種類が安定して収穫できるようになれば、人口が増えても十分な食料を確保できるようになると思っている。
さて、ここまで来れば計画通り遺伝子異常対策に掛かる事が出来るだろう。
「村長。皆の生活も安定して来たから、神の加護を与える事にする。明日の朝から予定通り、女達を順番に社に寄こすように。子を孕む事が出来る女を1日に10人ずつ、しっかりと管理し、重複や抜けの無いようにせよ。」
「畏まりました。明日朝から10人ずつ女を社へ向かわせます。どうぞ宜しくお願い致します。」
さて、ようやく本来のミッションに掛かる事が出来る。ずいぶん時間が掛かったな。
この村の女の人数は1242人いる。毎日10人ずつ処置を行えば125日で全員の処置が終わる事になる。出産については若干の個人差が出てくると思うから、10カ月後の来年秋頃から生まれ始めることになるだろう。
処置が済んだ女達の保護は優先的に行うし、処置を行う時に一緒に予防接種も行って、病気対策も進める事になっている。
村には監視設備を設置してあるから、事故や病気で問題が起きた時、直ぐに介入する事が出来るはずだ。ともかく、出産と育児については100%の生存率を目指そう。
次の日、社に女達が10人ずつやって来た。
社に引き入れ、マリアにより催眠処置を施してから施設に転送する。
俺も一緒に転送してもらい、女達の処置を行っている間、のんびりとコーヒータイムとさせてもらった。
いつも俺が寝ているのとは反対側の壁には、この施設に入った最初の日に使ったドアが有るが、そのドアに向かって左側の壁に5基のベッドが現れる。
そのベッドに5人の女が寝ると、すぐにベッドは壁の中へ引き込まれ、代わって5台の空ベッドが出てきた。そのベッドにも残りの5人が寝ると、また壁の中へ引き込まれる。
後は壁の中にあるメディカルセクションで処置が行われることになる。
10人の処置が終わるまでに6時間かかるというので、その間マリアと話す事にした。
「メディカルセクションの中がどうなっているのか知らないけれど、10人も入れるなんて結構広いんだな。」
『そうですね。定員としては50人になっていますから、それなりの広さが有りますよ。内部は完全な無菌状態となっていて、怪我人の治療や伝染病患者の隔離も出来ますし、勿論産婦人科の機能もあります。』
「ちょっとした総合病院並みか。処置時間が10人で6時間かかるって言うのは、早いのか遅いのか判断できないのだが、その辺はどうなんだ?」
『最初の10人ですから、ここで徹底的に人体の情報を調べておきたいのでその分の時間もかかっています。それに個人差が有りますから人工授精を行う際の個体調整手順も若干変わりますからね。これからもサンプリングで情報調査を行いますが、処理時間はもっと早くなりますよ。』
それはそうか。縄文人の個体情報なんて、化石から取れる物以外無かったんだから、これが詳細な情報を取れる最初の機会になるんだよな。取れる情報は徹底的に取っておかないといけないな。
「ところで、あと125日でここのミッションが完了する事になるが、その後はどうするんだ?」
『ここは私がモニターして対処しますから、あなたは次の地に移動して、同様に村作りから始めてください。何か対応してもらう必要が有る事象が発生した場合は、その都度連絡します。』
「たしかメモに書いておいたはずだけど。ああこれだこれだ。えっと、次は東経140度、北緯41度付近か。青森県の三内丸山遺跡辺りだよね?」
『そうですね。大きな遺跡が発見されたところです。そこに村を作りましょう。』
「こうして、又歴史改変が起こるんだな。タイムパトロールっていないんだよな?」
『私がジャンプした段階では組織されていなかったので、もし作られるとすればそれ以降になるでしょう。結局この歴史改変後の流れで出来るのですから、いたとしてもこちらの邪魔をすることはないはずです。』
「成程ね。それじゃ、気にせず頑張りますか。」
こうして125日後、この地域のミッションを一応終わらせ、村長にこの後の指示を伝えた俺は、次の村作りに向かうのだった。
部落に縄文犬をプレゼント!
イヌとの生活が始まります。
これから家畜も導入していく事になるでしょう。
より良い生活の為に、時代考証は無視されていきます。