第4話 集落から村へのクラスアップ③
縄文時代の開拓を実施中です。
着々と進む開発に合わせて、周辺の住民も合流して来て人口が増えていきます。
人の移動をサポートする為に小型衛星も打ち上げたりして、天気予報も行いましょう。
科学の力でチートしまくりですが、突っ込む人がいないのでやりたい放題だったりして。
この時代に到着してから3日目。
朝起きて身嗜みを整えてからマリアに確認する。
「昨日、柵作りに参加したのは男5人、女3人の計8人だ。
この集落の人口が19人だから、残りは11人だよね。
長老の様に年を取っている者や子供を除いて、働ける人数は11人中5人程度だと思うんだが、その5人が長老の指揮で社周りの伐採に従事したことになるわけだ。」
『そうですね。3基のドローンで監視していましたから、それで合っていると思いますよ。』
「今日はそこに俺も入って新しい道具の使い方を教えながら、伐採作業を行っていくわけだけど、昨日転送した道具に社周りの伐採用の道具は入っていたか?」
『入っていましたよ。多分何処かにしまってあると思いますが、人数的に送っておいた道具で充分間に合うと思います。予備を含めて結構余分に送っておきましたから。』
「そうか。それじゃあ大丈夫だな。今日は食料だけ送ってもらえば、それで準備は万端というわけだ。」
『はい。ところで、一応毎日違う食材を送るつもりですが、なにかリクエストは有りますか?』
「しばらくは適当でいいよ。女達の料理のレパートリーがどれ位あるか分からないけれど、この時代では調理方法も確立されていないだろうし、スパイスなんかもほとんど無いだろうからね。自主的に出来る範囲でやらせてみて、その内少しずつでも教えて行こう。
移住者が来て集落の人数が増えたら、ご飯の炊き方やパンの焼き方なんかを教えて、女達の料理のレパートリーも増やせれば良いと思う。
その内石窯オーブンなんかも作って、ビザなんかも作れたら面白いんじゃないかな?」
『どんどん縄文時代から逸脱していきますね。ピザを作るならトマトケチャップも必要ではありませんか?』
「俺がこの時代に来た時点で、ある程度歴史が変わる事は決まっていたからね。許される範囲で歴史を先取りしていくから。そのつもりで準備宜しく。」
『解りました。バックアップは任せてください。』
マリアの口調が少し苦笑気味だったのは気のせいじゃないだろうな。余り干渉しすぎて歴史が変わる事には躊躇いがあるが、ある程度は歴史の時間を進めて、これからの人口増加に備えなければ、大事な目的達成に時間が掛かって仕方がない。
「さて、それじゃ今日も行ってくるよ。」
『行ってらっしゃい。』
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いつも通り転送機で社に移動して、徒歩で集落へと来た。
今日も天気は快晴だが気温は少し寒い位なので、これ位の運動では汗もかかない。
足取りも軽く集落前に着くと、やっぱりミナキが待っていた。
昨日と同様に朝の挨拶をして、そのまま長老の家に行き長老とも挨拶をする。
「今日の柵作りはミナキ達だけで行ってもらう。昨日教えた要領で伐採を続けていくように。俺は社の方で道具の使い方を教えているから、そっちの指揮はミナキが取れ。」
「畏まりました。それでは準備出来次第出発します。」
「任せた。さて長老。そういう訳で、今日は俺も社の方に行く。今日もお前に指揮を執ってもらうが、まず道具の使い方を教えなければならないからな。その後、実際の作業を行いながら指示の出し方を見て覚えてくれ。それから、すぐにとは言わないがミナキのような指揮者候補を選出してくれ。いつまでもお前が集落を開けているわけにもいかないからな。
ここから一番近くの集落から15人、あと1週間位で到着する予定だ。そうすれば、それぞれの仕事に割れ当てる人も増やせるし、滞っている他の仕事も出来るようになるだろう。そうなれば指揮者を増やす必要が出てくるからな。」
「畏まりました。何人か選び出しておきましょう。」
「良し。それでは準備出来次第、こちらも社に出発しよう。」
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俺と長老は、5人の男達に道具類を持たせて社まで移動した。
社に着いた長老たちが少し驚いた顔をしていたが、昨日伐採した木の切り株がきれいに抜き取られて、少し離れた所に並べられていたからだろう。綺麗に整地まで終わっているのだから、驚くのも当然だが、まさか夜の間にドローンが仕事をしていたとは思いつかないだろうからね。
それからは昨日の柵作り側と同じように道具の使い方を説明し、実際に使って見せたり、使わせたりして作業方法を覚えさせた。
やはり、使い慣れた道具ではないので、初めは戸惑うようだが、使っているうちに切れ味も使い勝手も格段に良く、作業効率が全く違う事に気づいて、積極的に道具の使い方を覚えるようになってくる。何しろまるで斧は名刀のように木を切り刻んでいくし、ノコギリは普通の力加減で引くだけで木が倒れていくのだから、石斧しか使った事の無い縄文人にとっては魔法のようなものだろう。ちょっと切れ味が良すぎるような気もするが。
しかし、柵の方もそうだが、今の人数では大して作業は進まないな。かといって余り頑張り過ぎれば事故が起こるかもしれないし、ここは焦らずに安全重視で行こう。
そんな風に作業を行ったが、昨日は今までの道具(石斧等)を使って、1日に3本しか伐採できなかったのに対して、今日は規格外の鉄の斧やノコギリを使用したので、実作業時間5時間で12本の伐採が出来た。
社周りの伐採作業は集落近くなので炊き出しは無しだが、歩いて10分なら、昼休みに近くの食堂まで行って食べるのと大差ないので、特に問題はないだろう。このまま伐採が進んで、集落からの距離が離れるようなら、又考えることにした。
マリアからは定期的に柵作りの状況が送られてきたが、あちらも特に問題は起きていないようで、今日の実作業時間6時間程度、伐採本数は30本になったようだ。範囲も北に10m広がったというから、昨日の倍は進んだようだな。
段々移動時間が勿体ないと思うようになりそうだが、まあ、今日の所は事故も無かったので良かったと思う。
作業後は一旦集落に戻り、柵作りの方が戻ってくるのを待っている間に、長老と話をする。
「さて、昨日と今日で道具の使い方と伐採作業のやり方を大体覚えたと思う。この調子で明日からも続けて行くように。」
「ははっ、畏まりました。」
「俺は、基本的に柵作りの方を見ていく。社周りはこのまま長老が見てくれ。但し、長老は指揮者を早く選定して仕事を任せ、本来の集落全体の管理を行えるようにすること。人の数が増えて自給自足できる様になるまで、お前たちに必要な食べ物は俺が準備して送ってやる。勿論、道具が壊れたり足りなくなった時も、必要な数は揃うようにするから安心しろ。」
「承りました。出来るだけ早く代わりの指揮者を選んで仕事を覚えさせます。」
「それから、外での作業なので、基本的に雨が降ったら休みだ。その時は集落内の仕事をしてくれ。休みにするときは長老にその旨伝えるから、そのつもりでいるように。」
「解りました。そのように致します。」
その後、ミナキ達が帰って来るまで雑談しながら待ち、帰ってきたミナキ達に一声かけて集落から離れた。
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「マリア。周辺の他集落から移動中の人達はどっち方面からどれくらい来るか地図で表示できるか?」
『モニターに表示します。』
外の映像を打ちしていたモニターに周辺の地図が表示された。
この時代の関東平野が表示されているが、現代とは大分違うように見える。
そういえば今はまだ良いが、最終氷期の最も寒かった時期が終わって暖かくなる事により、地球を覆っていた氷が解ける事によって、縄文海進と呼ばれる海面の上昇が起こっていたはずだ。これで関東平野のかなりの部分が水没してしまったと覚えている。
縄文海進は紀元前4500年から紀元前4000年頃にピークを迎えたはずで、この頃の海面は現代よりも5m以上高くなった事から、関東平野は古鬼怒湾や奥東京湾、元荒川などを形成し、大宮台地などは半島になっていたらしい。
そうなれば平野南部にある住処は水没してしまうから、その前に山に近い高地に移住させた方が色々と面倒が無いだろう。
それに、今はまだ海が遠くて新鮮な海産物にありつけないが、海の方からこっちに来てくれると、海産物も取れやすくなると思うから俺的には大歓迎だ。
関東地方の地図が表示された上に、他集落から移動中の人達の位置情報がリアルタイムで表示されている。
東から南にかけての方角から移動しているグループが多く、西や北からは少ない。
これは単純に地形によるものだろう。北や西方向は山岳地帯なので住んでいる人が少ないのではないだろうか。それに比べ南や東は現代でいう平野部なので、確保できる食材も多くなるだろうし、住んでいる人も多くなるのだと思う。
移動中の各グループの上に人数が数字で表示されているのも解りやすいな。ただ、見た感じ、かなり遠くから移動しているグループもいるので、少し心配になってくる。
「移住の対象となるグループが生活しているのは大体半径200km圏内といった所だな。21世紀なら道路も整備されていて橋も架かっているから、一番遠くからでも1日8時間歩けば1週間で着けるけど、この時代だとおそらく3週間位掛かりそうだ。遠くから移動中のグループには、何かフォローはしているのか?」
『各グループにはドローンを張り付けて、逐一情報を送らせています。食料等の不足や怪我、病気等については状況に応じて支援できるように準備していますよ。危険な動物との遭遇についても同様に対応出来るようにしています。』
「緊急時は食料を転送しても良いし、動物相手ならドローンで対応できるか。了解したよ。それにしても、道なき道を切り分けて、この距離を歩いてくるのはちょっと勘弁してほしいかな。」
『途中は道らしいものも無いですし、森や林に川が有って、何処にどんな動物がいるのかも分からないのですからね。移動速度もどうしてもゆっくりになりますし、子供から老人まで体力もバラバラですから、ペース配分は難しいのではないでしょうか?』
「そうだ。この施設には人工衛星なんて搭載されていないかな?」
『気象用と地表監視用、それに宇宙空間の監視用がありますね。気象用は8基、地表監視用が20基、宇宙監視用が5基です。監視用以外では宇宙空間からの脅威に対応する為に攻撃用が10基あります。使用しますか?』
「対宇宙用攻撃衛星まであるのか?対象は大型の隕石とかか?」
『そうですね。地表に被害をもたらすような隕石を宇宙監視衛星で発見し、早期に破壊する事を目的としていますが、稀に攻撃的な来訪者が来た場合にも対応する様にプログラムされています。』
「攻撃的な宇宙人か?というか、宇宙人って本当にいるのか?」
『いますよ。幸い直接的な接触は有りませんでしたが、何度か確認されていますからね。』
「そうなんだ。まあ、敵対していなければ問題ないか。それにしても、人工衛星って結構大きいものだと思ったんだが。打ち上げ設備も必要だし、良くそれだけ搭載してあったな。」
『21世紀初めころの技術では小型化が難しかったのでしょうが、ここに搭載されている物はコンパクトで衛星自体に反重力装置等の自立移動システムが備わっています。打ち上げといったイメージよりもカタパルト射出といった感じですね。』
「人工衛星がカタパルトで射出されて自分で飛んで行くのか?すごい技術だな。それなら、予備に2~3基残して、全部上げてもらえるか。驚異的な隕石なんてものがすぐに接近してくるとも思えないが、備えは有った方が良いからな。」
『解りました。準備出来次第射出します。』
自力で衛星軌道まで飛んで行ける人工衛星か。スプートニクもサターンⅤも必要なくなるな。流石、スペースコロニーまで使いこなしていた時代だよ。
「良し。これで世界地図が出来れば良いな。宇宙から地上を見る事が出来れば、今の日本列島の状況も見られるだろうし。たしか、まだ大陸から離れ切っていない時期だったはず。
それに人工衛星から見れば、世界中の人口分布や生活状況が一目瞭然で、何かあっても介入しやすくなるだろう。どこに人を集めるのが一番手っ取り早いか詳細な計画も立てられれば、人の移動も効率的にできるだろうからね。
気象についても天気予報が出来るようになれば、仕事の休みも計画的に取れるようになると思うし、異常気象で事故が起きるのを防ぐ事が出来るようになるだろう。
俺は覚えていないんだが、隕石が落下したり火山が噴火したりして、気象変動が起きる事も考えないといけない。状況によっては生活が大変なことになる。」
『そうですね。その為にも監視を強化して、データ収集も進めていきましょう。』
少しでも早く人を集められれば、それだけ安定した生活圏を作る事が出来る。そして麦や米、根菜類なども栽培させ、野生動物を飼いならして畜産を行い、食生活が安定すれば今の半定住式から完全定住式の生活に変わって、人口の増加もスムーズに行えるだろう。
その為にも、人の移動をサポートして安全に早く移動できるようにしてやり、村として整備し、受け入れ態勢を強化すると共に、教育も行って村役場程度でも良いから行政機構の真似事でも出来るようにしていかなければならない。
「南の方からくる人達は、漁業経験者もいるだろうから、海進が進んで海が近くなってきたら漁業も始められる。農業、畜産業、漁業の一次産業が揃うんだから村も発展していくだろう。」
『何年かかるか、後でシミュレーションを行っておきますね。』
こうなったら、歴史改変なんて躊躇っていられないな。縄文時代早期から一度に弥生時代後期位まで発展させるつもりで頑張ろう。
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それからは柵作りも社周りの伐採も頑張って推し進め、開始から1週間たち、社の周りはすっかり整地されたので、移住者が雨風を凌げる様に仮の家を建てさせておいた。
柵作りの方は、全長も200m位が整地され、広い道が出来たような感じになった。
雨も降らず、毎日良い天気だったから結構良いペースで進んだな。
そして、今日やっと第一陣の移住者が到着した。
家を作って畑を作って、縄文時代に都市開発ゲームを続行中!!
まだまだ続きます。