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人類改造記:現代のおっさんと未来の人工知能が人類滅亡回避で2人旅  作者: 東風
第2章 縄文時代でミッション開始
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第1話 神降臨と第1歩

いよいよ縄文時代でのミッション開始!

縄文人の間に入って、免疫遺伝子の拡散を行いながら、色々な改革を行って行きます。

目指せ、常識破りの時代無視!!

 俺が生まれ育った現代から見て、2100年位先の遙か未来から、人類の希望と期待を一身に背負って旅だった巨大な施設。

 宇宙船のように3次元機動が出来るように設計されたのに、見た目は正四角推台で、底面の1辺が10km、上面の1辺が5km、高さが5km位という、とんでもない大きさになった施設は、未来の全ての知識と技術を結集して作られた人工頭脳によって統括管理されていた。

 擬似人格をもった人口頭脳は与えられた使命に基づき、時間ジャンプで一旦現代より2400年前の世界まで飛び、そのまま、とある山の下に潜り込んでその身を隠す。

 その後、誰にも存在を知られることなく、使命を完遂する為に必要な条件を備えた人類が現れる事を待ち続け、探し続け、時間の流れに乗って現代までやってきた。

 そこで、ついに求めていた全ての条件と合致する俺を見つけるに至る。

 無事に俺を確保する事に成功した人工頭脳は、これにより目的を達成する為の条件が揃ったと判断し、一気に本来の目的地である紀元前11000年頃の縄文時代早期へと時間ジャンプを敢行した。

 俺というただ一人の人間を乗せて。


*********************************************************


 俺は、マリアに言われて準備されていた各種装備を身につけると、洗面所側の壁面左端に開いた扉から転送機室に入った。


『既に非常用シェルター改の移送は完了しています。用意が出来次第あなたの移送に掛かりたいと思います。宜しいですか?』


「OK!何時でも良いぞ!」


『それでは、カウントダウン始めます。5,4,3,2,1移送!』


 次の瞬間、一瞬浮き上がるような感じがしたと思うと、今まで転送機室の壁が見えていた目が明るく緑豊かな森の景色を映していた。

 自分の時間感覚では2日ぶりとなる外の空気を思いっきり吸い込んだ俺は、軽く柔軟体操等をしてから、そばに置かれた1m四方の立方体表面にある赤い起動スイッチを押して、非常用シェルター改を起動させた。

 音もなく展開を始めた非常用シェルター改は、見る見る内に高床式の神殿のような外見をした立派な建物へと変形した。とても非常用シェルターとは思えない外観で、朱色を多用した少し派手な色彩に、思わず鳥居が欲しくなってしまった。

 正面にある8段ほどの階段を上ると、厳かな雰囲気の木製扉が有る。俺が扉の把手に触ると“カチ”という音がしてロックが外れたようだ。そのまま把手を回してゆっくりと引くと、スムーズに扉が開いて内部が見えるようになり、自動的に照明が灯った。

 中は土足仕様のようで入口に靴を脱ぐ場所はなく、入った所はそのまま居間のような作りになっていた。

 奥には3つの部屋が有り、その内の一つは転送室として使用する。

別に転送は何処でも出来るのだが、余り人目に付く所でやらない方が良いと思ったので、施設との行き来は転送室で行う事になっている。

 建物の内部をざっと確認して次の目的地へと進むことにした俺は、縄文時代の世界にその第一歩を踏み出し、マリアに言われた集落がある方向に向かっいながら、装備している棍棒やポシェットを今一度確認する。


 俺を乗せて時間ジャンプを行った施設を管理している人工頭脳”マリア”は、頭の左側内部にいつの間にか埋め込んだチップによって俺とつながり、俺のバイタルチャックや色々なアドバイスをしてくれる事になっている。


「なあマリア。いつまでも非常用シェルター改って言うのも言いにくいから、これからはやしろっていう事にするぞ。まあ、見たまんまだけどな。」


『解りました。それでは以後非常用シェルター改は社と呼称します。』


 歩き出した俺は、まだ排気ガスなんかに汚染されていない空気を吸いながら、現代よりも少し紫がかった空を見上げる。

 太陽が元気いっぱいで光り輝くような良い天気。時間的には8時位だろうか。

 朝焼けが消える頃、突如として巻き起こったスペクタクルによる演出で暗く曇っていた空は、そんな事があったなどとは思えない程、今は雲一つ無い晴天になっている。


 ただ、ボウッとして歩いているだけでは飽きるので、その昔、学生時代に教わって、記憶に残っているこの時代の事を思い出してみよう。


 この頃は日本では縄文時代早期と呼ばれているが、たしか、世界的に見ると地質時代区分のうち完新世と呼ばれる最も新しい時代に入る頃だ。

 最終氷期と言われる、最後の氷河期が終わった約1万年前頃に始まって、現代を含んでいる時代であり、暖かくなって氷河が消えるに従い、地球各地が湿潤化して森林が増加してくるが、その反面、草原が減少してマンモスやトナカイなどの大型ほ乳類の生息環境が無くなっていき、最後には彼らを絶滅させたらしい。

 完新世の初期には大陸にあった氷床が溶ける事によって、海面が130m以上急激に上昇したと言われている。

 特に完新世の気候最温暖期と呼ばれる時代には、現代より3mから5m海面が高かったとされていて、関東地方のかなりの部分が海面下になっていたらしい。その後、海面は緩やかに下降して、海面の高さは比較的安定するということだ。

 完新世初め頃、ホモ・サピエンスと呼ばれる現在の人類の祖先が世界規模で拡散する。

 人類の生活はそれまで、移動しながら狩猟等による採取活動生活を行っていたが、この頃から大きな川の流域などで定住して農耕牧畜生活を行う方向に大きく転換した。ちょうどそんな過渡期にあたる時代にやって来た訳である。


 今いる紀元前11000年頃は、氷河期が終わったばかりの時代の為か、着ているものがエアコン内蔵の服でなければ、結構寒い思いをしただろう。

 そんな状況下を時々マリアと話しながら歩き続け、10分程で目的の集落までやってきた。

 もうすぐ声が届くかなというタイミングで、どこからか変に軽快な音楽が小さく聞こえてくる。それと同時に風上の方からほとんど見えない位の靄のようなものが流れてきた。

 どうやら、マリアが言っていた暗示に掛かりやすくする為の仕掛けのようだ。

 それらが集落に浸透していくのに合わせるように集落へと近づいていく。


 集落側では朝の一件から、かなり神経質になって周囲を警戒していたようだが、音とガスによってかなり認識力と判断力が落ちているように感じる。それでも結構早い段階で此方を視認していたとみられ、少し虚ろな目をしながらも俺が声を掛ける前に向こうから誰何してきた。

 幸い昨日から行っていた即席の勉強の成果もあり、向こうの話す言葉がはっきりとわかる。後は此方の話す言葉が向こうに理解できればいいのだが。


「止まれ、おまえは誰だ?ここに何のようだ?」


「誰だとはずいぶんな対応だな。おまえは神の言う事を聞いていなかったのか?俺の顔を見ればすぐに誰か判ると思っていたが。それとも、神の言う事を無視して神と敵対するというのか?」


 俺の苛立ちを込めた言葉に、慌てて膝をついた男は頭をさげて言った。


「申し訳ございません。決して神様に逆らうようなまねはいたしません。どうかお怒りを納めてくださいますよう、伏して御願いいたします。」


「まあ良いだろう。先ほど我が神が申した事、忘れてはおらんようだな。ならば、この集落の長の下に案内して貰おうか。」


「はは!!どうぞこちらに!」


 目の前の男は立ち上がると、俺の先に立って集落内へと案内する。

 いくつもある竪穴式住居の前ではこの集落の住民達が此方を伺っているが、みんな目が虚ろになっていて、中には跪いて手を合わせている者もいた。

 良く見ると、すでに集落内にもうっすらとした靄が流れており、おかしな音楽も聞こえている。どうやら十分な効き目があるようだ。

 一番奥の方にある他の住居とは比べると少し大きな住居に案内されたが、入口の前には他の住民よりも少し年を取った男が待っていた。

 その男もボウッとした表情をしているが、俺を見ると頭を下げて言った。


「ようこそ参られました。私がこの集落の長老をしておりますオラカと申します。此方の住居をご用意いたしました。どうぞご自由にお使いください。」


「オラカか。私の事はヤマトと呼べ。色々とやってもらう事もあるが頼むぞ。」


「はは!神様からのお告げはしっかりと心得ております。どうぞお好きなだけご滞在くださいますよう、御願いいたします。」


「うむ。殊勝で何より。まずは入らせて貰おう。」


 そう言い捨てると、俺はオラカが脇へ避けて通れるようになった入口から住居の中に入る。

 住居の中は一段下がった土間になっていて、中央部に火をたく場所がある。入口は少し狭かったが中は結構広く感じる。入口から見て左右に窓があり、外からの光で暗くもない。

 風通しも良いので良く乾燥して住みやすく感じた。

 ざっと内部を見渡した後、右奥まで進んで壁際の床にポシェットから出した敷物を広げて敷くと、さらにその上に横1m、縦50cm程のクッションを出して敷いた。座るにはこれくらいあれば十分だろう。

 クッションの上に座り、俺の後から入ってきて黙って見ていたオラカに向かい合うと、マリアに作ってもらった周辺の地図を地面に広げた。

 この地図はドローンの測量によって作られた周辺の地図を、ゲームに出てくるような漫画チックな感じに作り直したもので、大雑把な位置関係しか分からないようなものだ。


「さて、神が話した事は覚えているな。私が神から与えられた仕事は、お前たちがこれから繁栄して行く為に必要な加護を与える事だ。その為の準備としてやらなければならない事を伝える。心して聞くように。」


「ははっ!謹んでお伺いいたします。」


「まず、この図を見よ。此処が今いる集落だ。此処を中心に村を作る。村とは、此処よりも広く住処が多く集まり、沢山の人が力を合わせて暮らす場所だ。今此処には何人住んでいる?」


「現在19人がおります。」


「19人か。この地図の端から端までに凡そ2500人の人が暮らしている。今後此処を中心にその2500人が集まって村を作り、住むことになるだろう。130倍位に増えるがお前がその村の長になれ。」


「なっ?そのような大勢を私が治めるのですか?とても無理でございます。」


「慌てるな。なにも一気に増える訳ではない。人が集まるにも時間が掛かる。段階的に増えると思え。村が出来て纏まるまでは私が手伝うし、これから増える人の中にも使える人が大勢いるだろう。その中から助けとなる人を何人か選び出し、育てて役割を与えよ。決して一人で抱えるなよ。」


「今まで思った事も無いような人の数。経験した事が無いゆえどうして良いか分かりません。どうぞ宜しくお導き下さい。」


「うむ。今言ったように周辺の人がこの村に集まって来る。人が増えるに従って家も増やしていかなければならない。私が歩いてきた方、地図のこの辺りに私の社が有る。ここを中心に村を広めていくから、社の周りを切り開き家を建てる場所と家の材料を作れ。そして新たに長の家を社の近くに建てよ。村を作る範囲はこの辺りまでだ。実際の場所は後程現地に行って示す。村の周囲に柵を作らせよ。その柵の内側を村と定め、村の名を武蔵むさしとする。」


「あなた様のお社が有るのですか?こんな近くなのに今まで気が付きませんでした。早速今日から家作りを始めたいと思います。そして武蔵村、謹んでお受けいたします。」


「この話の後で、柵を作る場所を共に廻るから特に頭の良いものを何人か連れてまいれ。」


「畏まりました。」


「次に神もお話になったように、村が出来てから子をなせる女を神の元に毎日10人連れて行く。日が昇った後連れて行き、日が暮れる前に連れ戻す。加護を与える為に何度か繰り返す事になるが、まず初めての者だけを連れて行くので、準備しておくように。2回目からはその時子を孕んでいない者から選んで連れて行く。」


「女は戻して戴けるのですね。神様は女たちにいったい何をなされるのでしょうか?」


「村が繫栄していく為に、神が加護を与えた子を与えてくだされる。子を孕んだ女はその子が生まれるまで病に掛からず無事に生む事が出来るだろう。生まれた子は病に掛からず強く長生きする。また、その子たちは同じように強い子を産み増やしていくだろう。お前たちはその子供たちを大切に育て共に繁栄していくのだ。」


「有りがたき幸せにございます。誠心誠意お育て致します。」


 ここまでは順調だな。

 しかし、縄文時代にこんなに手を入れていったら、歴史改変にならないのかね?

 未来の人達もかなり追い詰められていたようだけど、一歩間違えたら自分たちも存在しない未来になるかもしれないのに、よく思いきれたもんだ。

 その辺の事情も後でマリアに聞いてみるか。

まずは現状の確認完了です。

これから、鬼改革が始まります。

人類はどこに向かうのでしょうね?

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