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4話:コンビネーションドールズ

 三人のおかげで家が建ち、衣食住の住が整った。


 残りの衣食をどうするか考えよう。


「ということで、服と食料について話し合いたい」


「私たちはいいですけど、ご主人様はお洋服がないと困りますよね」


 アス子が顎に指をあてて困った顔をしていた。


 ドールたちは魔力で服を形成できるが、俺にはそんな芸当はできない。


 今着ているスーツが駄目になったら着る物がなくなってしまうのは困る。


「お洋服を作れるドールを作ってみてはどうでしょうか~?」


 スイ子さんが手を挙げて発言している。


 確かにそれができれば話は早いと思う。


「う~ん、何が服を作れるドールの素材なのか分からないしなぁ、ドールを作れても服の素材もないから困ったな」


「ドールは分からないけど素材ならどうにかなると思う」


「キーコ、何か良い案があるんですか?」


「うん。この森にはいろんな植物が生えてるみたいだから、命令してくれれば眷属を行かせてとってくる」


 キーコは変わった大木のドールだから、この森の植物のことに詳しいのだろう。


「分かった。キーコ、素材を集めてきてもらってもいいかい?」


「任せて」


 これで上手くいけば食料と服の材料となる繊維を見つけられるかもしれない。


 キーコの働きに期待しよう。頑張れウッドマンたち。


 グーー。


 俺の腹の音が鳴ってしまった。


「腹減ったな……」


「マスター、これ」


 キーコの手のひらにリンゴが現れた。


「お、リンゴか、ありがとう、貰うよ」


「じゃあわたくしが切りますね~。キーコちゃん、お皿用意できるかしら~?」


「わかった」


 スイ子さんがキーコからリンゴを受け取り、キーコは外に出ていった。


 リンゴを受け取ったスイ子さんはキッチンへ向かい、指の先から水の刃を伸ばしてリンゴの皮むきを始めた。


「凄い器用ですね、スイ子さん」


「慣れればアス子ちゃんもできるようになりますよ~」


 二人のやり取りを見ているだけで癒される幸せ。


「お待たせ」


 外に出たキーコが戻り、量には木の皿が何枚も重ねられていた。


「ありがと、一枚貰うね」


 アス子が一番上の木の皿を取り、両手で持つ。


「それじゃあ残りはしまう」


 キーコは棚へ向かい皿をしまおうとするが、棚が高くて届きそうになかった。


 俺が手伝いに行こうと思ったら、ウッドマンが棚の扉を開き、木の皿をしまっていった。


「それじゃあいきますよ~」


 スイ子さんたちのほうに視線を戻すと、スイ子さんが皮をむき終えたリンゴを宙に上げた。


 頂点に達したところでスイ子さんが目にもとまらぬ速さでリンゴを切り裂き、切られたリンゴは奇麗にアス子の持っていた皿の上に落ちていった。


「おーー、すごいすごい」


 思わぬ芸に感動し、俺は拍手でスイ子さんを褒めた。


「お待たせしました、ご主人様」


 そして切られたリンゴがのっている皿を、アス子が持ってきてくれる。


「つまようじ」


 皿をしまい終えたキーコがつまようじを渡してくれた。


 これもキーコの能力で作ったものだろう。


 キーコの能力が万能すぎて強い。


「ありがとう」


 受け取ったつまようじをリンゴに刺して、キーコの口に運んであげる。


「はいキーコ、あーん」


「あーん」


 キーコは無表情で口を開け、俺はリンゴをキーコの口に入れた。


「あ、ズルイ!」


 アス子が羨ましそうな顔でこっちを見ている。


「……アス子は、自分で食べられるよな?」


 小さい女の子のキーコなら抵抗はないが、ある程度年齢を重ねている女性に対して行うのは、人間ではないドール相手とはいえ、少し恥ずかしいものがある。


「……してくれないんですか?」


「わたくしも食べさせて欲しいです~」


 アス子が目をうるうるとさせている。どうやってしているんだろう。


「ていうか、食べる必要ないんじゃなかったのか……分かった、俺が悪かった」


 一人にやって二人にやらないのは流石に可哀そうかと思い始めてきたので、観念して二人にも食べさせることにした。


「美味しい!」


「美味しいですね~」


 こうして二人にも食べさせて、いよいよ俺もキーコのリンゴを頂く。


 つまようじでリンゴを刺して、そのまま口に運び、半分齧る。


 シャクシャクシャクと食べると、口の中にリンゴの汁と甘みが広がり、今までにない美味しさが爆発していた。


 そして魔力が回復しているような気がする。


「……こんな美味いリンゴを食べたのは初めてだよ」


「口にあってよかった」


 それまで無表情だったキーコが微笑んだ。


 俺はキーコの頭を撫でてあげた。


 美味い美味いとリンゴを全て食べてしまったが、まだ少し腹が減っている。


「ご主人さま~、もしまだお腹が空いていましたら~、川魚とかいかがでしょうか~?」


「川魚かぁ、獲れるんですか?」


「わたくしに任せてください~」


 自信満々なスイ子さんの提案を受け入れ、みんなで外に出た。


「キーコちゃんはまな板を用意してくださいね~」


「わかった、アス子」


 キーコがアス子の袖を掴んだ。


「……キーコ、どうして私を掴むんですか?」


 どうして掴んだのか不思議だったが、アス子の慎ましやかな胸部を見て納得した。


「冗談」


 そんなやり取りをしていたキーコが、隣にいたウッドマンに触れてまな板に変化させた。


「アス子ちゃ~ん、アースゴーレムの手で受け止めてくださいね~」


「分かりました」


 スイ子さんがそういうと、アス子はアースゴーレムで構え、スイ子さんは水を操り、渦を巻いて湧いた水がアースゴーレムの構えた手を目掛けて動いた。


 渦巻いた水がアースゴーレムの構えた手のひらに当たると弾けて霧散し、アースゴーレムの手のひらには数匹の川魚があげられていた。


「それじゃあ捌いていきますね~」


 スイ子さんが魚を回収すると、アス子が地面を盛り上げ、その上にキーコがまな板を置いた。


 ナイスなコンビネーションだと感心する。


 そしてスイ子さんが指先に発生させたウォーターカッターで手際よく捌いていく。


 捌かれた川魚をアス子とキーコの二人が回収し、キーコの用意した木串に刺していった。


 スイ子さんはその間に、いつの間にか集められていた木々のところまで移動して、空の太陽を確認していた。


「大丈夫そうですね~」


 木々の上に手をかざすと、手が水へと変化しそのまま体の動きを止めた。


 やっていることの想像はできたが、本当にできるのかと興味が湧く。


 暫くすると木々から煙があがりだした。


「おぉ」


 手のひらの水と太陽の光を利用して着火させたようだが、本当にできるとは感動だ。


「それじゃあ二人ともお魚をお願いしますね~」


「はい」


「わかった」


 スイ子さんの指示でアス子とキーコが地面に木串を刺し、魚を焼き始めた。


「少し火が弱いかもしれませんね」


「わかった」


 キーコが近くにいたウッドマンの手を外し、そのまま焚き木としてくべた。


 ウッドマンの手の犠牲で火は安定して燃え続け、くべていくごとにウッドマンの体の一部がなくなっていった。


「調味料が欲しくなりますね~。どこかに塩とかありませんかね~」


 魚を焼きながらスイ子さんがそう口にした。


 確かに調味料が何もない現状は辛い。


 早めに塩だけでも見つけておきたいところだ。


「今ウッドマンたちに探させてる」


「私のアースゴーレムたちも探させにいきましょう」


 そう言ってアス子が人間サイズのアースゴーレムを十体ほど生成した。


「最優先で塩を探してきなさい」


 アス子のその指示とともにアースゴーレムが四方八方に散っていった。


 ウッドマンといいアースゴーレムといい、本当にうちのドールたちは凄い能力を持っている。


 頼もしい限りだ。


「あ、ご主人さま~、お魚焼けましたよ~」


 そう言ってスイ子さんが焼けた魚を取ってくれた。


「あ、ありがとうございます」


 スイ子さんに礼を言って受け取り、魚にかぶりついた。


 塩を振っていないが、川魚独特の旨味があり、外で食べているということもあってか、凄く美味しく感じられた。


「うん、凄く美味しいよ。みんなありがとう」


 ドールたちと魚の命に感謝して、焼き魚を食べた。

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