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モブを愛した私は愚かにも人生を3回やり直す  作者: 咲倉 未来
Second Attack

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8.双子の弟騎士は、その共闘に心躍らせる

 剣を振り上げるオーガに応戦すべく、騎士のカイ・ハーゲンは剣を構えた。

 受け止めた衝撃に顔を歪める。視線の先には兄のゲイルが二匹のオーガを相手に戦っているのが見えた。


(まずい。殿下の守りが手薄になっている)


 残りのメンバーは、魔術師に学者に弓使いしかいない。

 嫌な予感がする。

 慌ててオーガの剣を力任せに弾き返した。けれどすぐに次の攻撃が振り下ろされ、身動きがとれない。


 焦れば剣筋は乱れ、オーガの攻撃に押されて一歩後退した。

(どうしてボクは、いつも、いつも――)


 焦れば焦るほど、追い詰められてミスが増える。ここぞというときに決められない。


(落ち着け。落ち着いて、ちゃんとやるんだ)


 その時、オーガの背後を何かが横切った。


「後はヨロシク!」


 可愛らしい声が、何かを頼むと言って去って行く。

 次の瞬間、オーガの膝が折れ、手から剣を落として首を押さえて呻いたのだ。


「うわぁぁぁ!」


 考えるより早く体が動いた。オーガの首を切り落とし、息を整える。


「カイ。こっちもヨロシク!」


 呼ばれて振り向けば、オーガが次々に体勢を崩して膝をついていた。


(オーガが攻撃を再開する前に、トドメをさせということか!)


 意図を理解し、迷わず剣を振るい続けた。



 全てのオーガが黒い霧に変わり、まわりは味方だけが残っていた。


「お疲れ!カイ」

「ティアラ。短剣も中々使えるんだな。おかげで沢山のオーガを倒すことができたよ」


 一人では一匹相手するのもやっとだった。不器用な自分は、昔から何をしても結果がイマイチなのだ。


「私は一匹も倒せないから。いつも怪我を負わせて逃げるの。やっぱり男の人の力じゃないとオーガの首は落とせないわね」


「――そうか。そうかもしれない」


 二人で協力して、うまくいくなら悪くない。


「ありがとう。ティアラ。これからも一緒に協力して戦ってほしい」

「もちろんよ!」


 元気な返事に心が踊る。


(次の敵襲が楽しみに感じるなんて、僕はどうかしている)


 けれど、またあの素晴らしい戦いで戦果があげれるのなら、騎士として興奮するのは無理もなかった。


 □□□


 ティアラは、目の前のカイの延々に続く雑談に相槌を打ち続けた。


 元々寡黙(かもく)で大人しめだったのに、なぜか急に喋り出したのだ。

 その変化に兄のゲイルも主人のミカエルも喜んでいた。――――最初だけは。


 喜んで会話をしていたのは一瞬で、カイの止まらない話に二人は早々に根をあげた。


 そしてカイが次に話し掛けたのがティアラだったのだ。


「短剣で狙う箇所は、やはり急所に絞るんですか?」

「一応狙うわね。足の腱を切っておけば追いかけられても逃げ切れる可能性が上がるの。そこは絶対に狙うわ」


「そういえば、ティアラはユニコーンを見たことがありますか?」


「ええ。エルフとは仲良くしてくれるの。里の近くで出くわすことがあったわ」


「いいなぁ。僕も一度で良いから見てみたい」


「人間だと処女以外は警戒されるから、カイは遠くから見る方がいいわよ」


「出来れば近くで毛並みを確かめたいんですよ」


 ずっと続く会話を聞きながら、エミルとフィンが違和感を感じていた。


「ねぇ。さらっと処女とか言っちゃうティアラの感覚って変だよね?」

「普通に会話を続けるカイも、少し変だと思いますよ」


 カイとティアラの会話には、男女の恥じらいが全くない。だから羨ましくはないが、ずっと目の前でイチャつかれれば苛つくのだ。


「確かにティアラは話しやすいけどさ。ずっとカイとばっかり喋っててズルいよね」


「内容はともかく、二人で盛り上がっている姿は嫉妬してしまいますね。殿下とゲイルも早く戻ってきてくれないと困ります」


 二人が不穏なオーラを放ち始めたのを察し、ティアラは混乱していた。


 一体何が起きているのか分からない。


(ま、まさか。好感度があがってるのかしら? 大したことしてないんですけど!)


 そのまさかで、ティアラは無自覚に彼らの欠点を救っていた。

 カイ・ハーゲンは先の戦いで役に立てたことに感動し、気持が前向きになれたのだ。

 その結果、いつも自信がないせいで呑み込んでいた言葉達が、そのまま表に出始めていた。


「こんなに喋るのは初めてです。ですが自分の考えを話すのって良い勉強になるんですね」


 パァァァ、と屈託のない笑顔を向けられる。

 その純真無垢な表情は眩しくて後光がさしたと思ったくらいだ。


 その光はティアラだけでなく、エミルとフィンの心までも浄化した。

 嫉妬も不満も跡形もなく消え失せる。


「カイ、それなら俺とも話をしよう」

「そうですね、私も有意義な知識を提供できると思います」


「ぜひお願いします。魔道士に学者のお二人からすると物足りないかもしれません。でも、僕、嬉しいです」


 そうして四人で和気あいあいと会話が盛り上がる。


 しばらくして戻ってきた、ミカエルとゲイルはその光景を見て己の目を疑ったのだった。

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