第13話 蒸気機関
「さぁ、ここだよ」
古びた外見の建物に取り付けられた錆び付いた看板には“エキ舎”と書かれていた。
「ハンレスさん!」
優夜が立花に手を貸しているところを見ていたハンレスが振り返ると、そこには白い帽子を被った小太りの旦那がやってくる。
「ありゃ、旦那ぁ!生きてたんだ!」
「勝手に殺さないでくださいよ!」
ぷんすこと怒る旦那。
「ハンレスさん・・・だれ、この人」
優夜が立花の手を引きながらやってくる。
「これが例のハイブリットの子達ですな?」
まじまじと二人を見る旦那。
「そうだよ。あぁ、紹介するよ優夜君に立花ちゃん。この人はボンレス・スパムハムさんで、各國のエキ舎をまとめる超偉い人だよ」
優夜と立花はただぼうとする。
「肉・・・?」
「しぃいいいいい!スパムはそうだけど!しぃいいいいい!」
優夜が勢いよく立花の口を押さえながら自身の口に人差し指をあてる。
「あぁ~いやまぁ、よかったね!」
「あんたねぇ・・・肉は肉でも、僕は食えないですよ」
「そっか!」
「あんたねぇ!」
ボンレスは呆れた。
「今のところ、準備には問題は無さそうです。しかし、万が一という事で10キロ感覚で監視を置いています」
「そりゃ、ありがたい」
ハンレスはティベリックの地図をボンレスと見ながら言う。優夜と立花はエキ舎で働く人から支給された刀やライフル銃の調節をしつつレタスとハム、マヨネーズが間に挟まったパンを齧っていた。
「車両は装甲の分厚い装甲車両で各車両にしました。下手に出てきた、悪魔ならひき殺すことが可能です。ですが、問題が・・・」
ボンレスがそう言った時だった。入り口を勢いよく開けて、人が入ってくる。
「た、大変です!ティベリックの憲兵が軍隊を引き連れて!」
「な、なんだって!」
「思った以上に行動が速いな」
入ってきたその男に注目が集まるなか、ハンレスは言った。
「すぐに出発します。優夜君と立花ちゃんの準備は?」
「大丈夫」
「おうけい」
脱いでいた服を着、銃や刀を持った。
「よし、行こう!」
「急いでください!」
早歩きで廊下を歩いていく。廊下は薄暗く、壁に取り付けられた火だけが頼りだった。
「ここです!」
大人の男三・四人で左右に扉を引っ張る。ハンレス達の前が火とは違った明るさで照らされた。
「こ・・・」
優夜と立花は目の前にででんとそれはあった。
「これが蒸気機関車!」
鉛色の装甲車両が鎮座しており、最後尾の方を見ると遥かかなただ。
「さぁ、乗って下さい!回転台で次の國へ行けるようにしてあります!」
ボンレスがハンレスに言った。
「ありがとう、でも旦那は?」
「私は大丈夫です。あなたと似ているところがあるんでね、それに、ここの社員も列車に乗ってここを去るつもりです」
「わかった、御武運を!」
「御武運を!」
ハンレスが先頭の運転車両に入る。ボンレスはそれを見届けるとその部屋を出ていった。
「さて、やるか!」
ハンレスは配管から飛び出たレバーを握る。