表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/76

40 元通りの仲に、戻れたのかな




 天使のブラ。

 魔力ダメージを大幅に軽減する極上の防御性能と、着けていてもまるで違和感を感じない極上のフィット感。

 自動的に綺麗になる洗浄機能も付いているため、洗濯いらず。

 あまりの便利さに、毎日着けているうち、いつの間にやら着けてて当然のように思っていた。

 その恥ずかしすぎるデザインに、なんの疑問も持たなくなってしまっていたのだ。


「ぬ、脱ぐの……。みんなの前で……」


「嫌だぁ、絶対ロクなことにならねぇ……」


 脱衣所にやってきた二人と、脱衣所に連行された二人。

 服を脱ぐことを嫌がっているロッタとウィンに、タリスは一切の容赦をしない。


「むふふ、うーちゃん観念せい。そしてろったん、何を隠しているのかな?」


「い、いや、何も隠してないよ、何も」


 まずはロッタをターゲットに絞り、わきわきと両手の指を動かすタリス。

 哀れな獲物は、胸を両手で覆いつつ距離を取る。

 そんな二人の様子を、アリサはため息まじりに見ていた。


「何をやっているのかしら、あの娘は。恥ずかしがるような体でもないくせに……」


 ぺったんな自分の胸を撫でてから、もう一度ロッタの方を見る。

 胸を守ろうとする腕に押されて強調されたDカップの膨らみに、彼女の怒りが臨界を越えた。


「……ねえタリス。わたしも手伝うわ。二人でロッタをひん剥きましょう」


「ナイス加勢。ありちゃんが加われば百人力」


「ちょ、ちょっと待って二人ともぉぉぉっ!!」


 二人に組み伏せられ、ネクタイと半そでの夏服を剥ぎ取られる。

 抵抗も虚しく、豊かな胸を覆う天使の翼を模した恥ずかしいブラが、二人の前に晒されてしまった。


「……ろったん、これは勝負下着ってやつ?」


「な、なるほど。なるほど……。こんなものを着けていたのね。不届きだわ、はしたないわ……」


 素で驚いたタリスと、なぜか目つきが怪しいアリサ。

 二人の注意がロッタに向いているうちに、ウィンはそそくさと服を脱ぎ、大浴場へと入っていった。



「う、うぅ、もうお嫁にいけない……」


「ドンマイ」


(ロ、ロッタがお嫁に……?)


 体にタオルを巻いた三人が大浴場に入った時、すでにウィンは体を洗い始めていた。

 タリスが早速、彼女のもとへ駆け寄る。


「うーちゃん、背中流してあげる」


「遠慮しとく」


「遠慮なんてしなくていい。なんなら前の方も洗ってあげよう」


「やめろ」


「おぉ、ちょっと膨らんでる」


「覗きこむな! もうあっち行け!」


「断らせてもらう。さあうーちゃん、大人しく背中を流されよう」


「やーめーろー!」


 じゃれ合い始めた二人を放っておいて、ロッタとアリサは隣同士で座ってタオルを外し、体を洗い始めた。


「もう、アリサまであんなことするなんて……」


「ごめんなさい、少々冷静さを欠いていたわ」


「あのね、あの下着もちゃんとしたメダルの装備だから。好きで着けてるんじゃないんだからね」


「……そうだったのね」


 勝負下着じゃないことが分かり、アリサは一安心。

 一安心したところで、視線はロッタの胸へと移る。

 やはり大きい。

 羨ましい。


「……」


「……ん? ちょ、アリサ! なに触ろうとしてるの!」


「……ごめんなさい、無意識だったわ」


 無意識に手が伸びていた。

 腕を引っ込めるアリサだが、視線は釘付けになったまま。


「ねえ、あんまり見ないでほしいんだけど。そんなに気になる? あたしの胸」


 顔を赤らめながら尋ねるロッタ。

 アリサは恥ずかしげに視線を逸らした。


「……気になるっていうか、羨ましいっていうか」


 さきほどチラリと見えたウィンの胸とも、あまり変わらない大きさ。

 自分の胸の小ささに、相当のコンプレックスを抱いているようだ。


「気にすることじゃないよ。アリサにはアリサの良さがあるって」


「そ、そうかしら……」


「そうだよ! そんなことよりさ、久しぶりだよね、一緒にお風呂なんて。えへへ、なんか嬉しい」


 眩しい笑顔を浮かべるロッタ。

 胸についての悩みは、彼女の笑顔を見るだけでどこかに吹っ飛んでいった。


「ええ、そうね。久々に背中、流して貰おうかしら。あなた、とても上手だったものね」


「まかせて! 多分腕は落ちていないから!」



 ☆★☆★☆



 入浴と食事を終え、消灯の時間。

 アリサの部屋にはベッドが一つだけ、予備の布団なども置いていない。

 そのため、ウィンはタリスの部屋で彼女と一緒に寝ることとなった。


 二人きりの部屋の中。

 アリサはベッドの上に座って、クマのヘレナを抱きしめている。


「二人がいないと、ちょっと寂しいね」


「そうね」


「タリスのことだから、またウィンちゃんからかってるんだろうなー」


「ええ、簡単に想像できるわね」


 ロッタもベッドの上に上がる。

 並べた二つの枕に頭を乗せて横たわり、アリサを手招き。

 彼女もヘレナを抱きしめながら、招きに応じて寝転がる。


「えへへ、一緒に寝るのは——臨海学校の時にあったか」


「あまり思い出したくないわね、アレに限っては」


 まだ雷が怖いだなんて、恥ずかしいところを見せてしまった。

 アリサとしては、忘れたい思い出に分類されている。


「可愛いと思うけどな」


「わたしが嫌なのよ」


「そっか。じゃあもう言わない」


 向かい合って、間近に顔を寄せて、言葉を交わす。

 心も、体も、またこんなに距離を縮められた、今この瞬間の幸せを、ロッタは噛み締める。


「ね、文化祭一緒に回ろうって話、考えてくれた?」


「……ええ、三日目は暇が出来るでしょうし、その日なら一緒に回ってあげてもいいわ」


「やったっ。アリサとデート!」


「デ、デートじゃないから」


 満面の笑みを浮かべるロッタに対し、素っ気なく振るまいつつも嬉しさを隠しきれないアリサ。

 そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、ロッタは彼女の右手を取って指を絡めた。


「……あったかい。アリサの腕、ちゃんと元通りだね」


「もう一週間以上前のことよ。まだ気にしていたの?」


「だって……、もしもあたしが回復魔法使えなかったら、もしもあの時失敗してたらって思うと……、今でも、怖いの……」


「あなたにも怖いものがあったのね。ちょっと意外だわ」


「茶化さないでよ……」


 ロッタの目は真剣そのもの。

 アリサは優しく微笑み、手を握り返す。


「ごめんなさい。そして、ありがとう。今こうしてロッタの手を握れるのも、あなたのおかげよ」


「アリサ……。えへへ、今日はこのまま握ってて欲しいな」


「わたしもそう思ってたところ」


 笑い合い、見つめ合い、やがてまどろみの中へ。

 二人は手を繋ぎながら、夢の世界へと旅立っていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ