表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/39

なな

文章評価ポイントいただきました!

有難うございます!

 アナタを、不幸にしてみたい―――



 自分の事を振った相手に復讐する為に。

 制服を着替えて、きつめのメイクに黒いサングラス。

 見知らぬ人に成りすまして、他の誰かと仲良くして見せる。

 気付かず声をかけてきたら、サングラスを外して微笑みかけるのだ―――



 “魔女になりたい~”というフレーズが頭の中をぐるぐると駆け巡る。


 いやいやまさか!

 だって、あんな“イケメン”、振った覚えないし!


 でも“魔女”って、別に女とは限らないんだよね?

 て言うか、“アイアン・メイデン”って、中世の拷問具って言ってなかったっけ…?

 ん?中世って―――魔女狩り?!


「…何やってんの、アンタ。」

「うひょっっ!!」


 突然肩を叩かれて飛び上がる。


柱の陰(こんなとこ)隠れて何やってんの?」


 振り返ると、ユウキが呆れ顔で立っていた。





「青地に斜めのストライプ?」

「うん、だったと思う。どこの学校か知ってる?」


 まさかとは思いつつ駅の構内や改札口で辺りを窺ってたんだけど、昨日の彼どころかそのネクタイの学生を見かけなかったのだ。


「あー、もしかしたら“成陵(せいりょう)”かな…」


 そう言いながら、リコがスマホで画像検索したのを見せてくれる。

 成陵は県内でもスポーツで有名な私学校だけど、身近に通ってる人がいないから制服に覚えがない。

 ホームページに載っている制服を見るけど―――うーん、これのような、違うような?

 昨日一回だけだからなぁ…その前は私服だったし。


「でもおかしいね、成陵ってこの沿線じゃないから、あの駅は使わないと思うんだけど…」

「えっ、そうなの?」

「うん、市内だったらバスじゃないかな?JRだと乗り継ぎが手間だし。成陵がどうかしたの?」

「う…」


 今日の一時間目は選択芸術だ。

 私達は音楽を選択してるんだけど、音楽教師の和美ちゃんは何故だかしょっちゅう出掛けていて、自習になる事が多い。

 一学期は校歌のテストなので特にやること無いし、みんな仲の良い同士で集まってお喋りしているから、わざわざこっちに聞き耳立ててる人もいない…とは思うんだけど、なんとなく顔を寄せて小声で昨日までの出来事を二人に話した。


 昨日、駅でヘンなヤツに絡まれた事。

 そこを助けてくれた彼が、一昨日、レイちゃんちのマンションですれ違った人だった事。


「なる程、スゴい偶然だねぇ…」

「…偶然かな?」

「偶然じゃない?だって、仕組んだとしたらスゴくない?絡んで来たヤツもグルって事だよね?」

「ソイツも成陵だったの?」

「それが、よく覚えてなくて…」


 元々あんまり人の顔とか覚えないんだよね。

 軽薄そうだったのは覚えてるんだけど…確か、ムダに胸元が開いてた―――


「だめだ、ネクタイしてたかどうかも思い出せない。」

「うーん、じゃあわかんないねぇ…」


 リコが腕を組んで思案する隣で、ユウキが肩を揺らして笑った。


「考えすぎだよ、イケメンに助けてもらっちゃった!ラッキー!で、イイじゃん。」

「でも、成陵って、この辺じゃ見かけないんだよね?」

「んー、でも居ないわけじゃ無いよ。実際、あたしは駅で見た事あるもん。乗るより出る方だけど。」

「えー、それ説得力なさ過ぎる…」


 私だって、自意識過剰だと思わなくもない、けど…。


「うん、やっぱりおかしいよ!」


 不意にリコが声を上げた。

 手にスマートフォンを持っている。


「成陵からだと、あの駅までバスで20分はかかるんだよ。しかも利用者が少ないせいか、20分置きにしかない。昨日、シズルは学校終わって直ぐ帰ったよね?」

「うん。…あ、そうか!」


 私の声に、リコが力強く頷いた。


「昨日、ウチは6時間だったよね。4時間って所もあるらしいけど1時間の長さが変わるだけで、下校時刻はそんなに変わらないと思うんだよね。なのに、駅に居たっておかしくない?」


 リコの言葉に、思わずユウキと顔を見合わせた。

 だって、て言うことは、わざわざ早退けしたって事?

 何の為に―――?


「新手だねぇ…」

「えっ?」

「うん?だって、助けたんでしょ?アンタの事。」


 そう言って、ユウキが口元を歪めるようにして笑う。


「つまり、恩を売って気を引いたって事だよね。正直、気に入らないな。姑息過ぎる。」

「ま、さかぁ…そんなふうじゃなかったよ?うん。―――だって、ホントに、キレイな顔してたもん。女の子なんて選り取り見取りじゃないかな。」

「ふーん…じゃあ、何?わざわざそこまでする理由って?」

「…なんか、かけてる、とか。」

「ええ~?!」

「だって、ほら、変なあだ名付いてるし?」


 そう言って肩を竦めた私の前で、リコとユウキが顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ