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じゅうく(3/22修正)

かなり手直ししてます。

「ホームから落ちたって、どういう事?!」


 ユウキの顔が険しい。

 いつもニコニコしてるリコも―――2人のこんな顔を見たのは初めてかもしれない。まあ、こめかみの絆創膏もマズかったね。


 とは言え、授業をサボるわけにはいかないし、何とか宥めて、昼休憩までは待ってもらった。

 半ば連行されるように空き教室に入った所で、昨日の出来事を説明する。


 またしても、あの気持ち悪い茶髪男に会ってしまった事。

 それを避けようとしてホームに落ちてしまった事。

 そこから“彼”が連れて上がってくれた事を話すと、ユウキは更に顔を顰めた。


「それって、偶然なの?」

「それ?」

「いや、助けてくれたのは確かなのかもしれないけどさ。」

「あー……」

「ん?」

「うーん…」


 言うべきか、言わざるべきか。

 一瞬悩んでから、息をついた。


「直接知ってる訳じゃ無いけど、知り合いの、知り合いだった。」

「知り合いの、知り合い?友達じゃなくって?」

「…違うよ。」


 少なくとも、今は。

 いや、向こうにとっては元々友達じゃなかったんだと思う。

 憂鬱な気分でため息をついた。


「小学校ん時に入ってたサッカークラブのチームメイトに会ったんだよ。…“彼”は、ソイツと、知り合い。まあ、名前で呼び合ってたから友達なのかもね。」


 言いながら肩を竦めると、リコが首を傾げた。


「何か、あんまり良い関係じゃない、の?」

「“知り合い”はね。昨日も、謝りに来たとか言いながら、逆ギレしてったし。」

「それは、助けてくれた“彼”じゃないの?」

「うん。あの人とは…」


 面識が無い―――と言いかけて、彼の言葉を思い出した。



 ―――中学は、同じになるだろうと思ってたんだけど、違うとこ行ったんだろ?


 ―――サッカーも辞めたって、大地が。



 自分では、会った事が無いと思ってる。でも、彼の言い方だと、そうじゃない気もする…けど。

 釈然としないまま、首を振った。


「少なくとも、同じ小学校じゃないと思う。名前も、何だっけ…」


 昨日大地が言ってたな。確か―――


「“篠崎悠斗”」


 リコの声に、驚いて顔を上げると、リコがスマートフォンを掲げて見せた。


「“中”で話題になってる。“リアル王子”って。」

「おうじ?」


 何だそれ、と、眉を顰めると、リコが、話題の動画を再生しながら、スマートフォンを差し出してきた。


 問題の(?)動画は非常用のベルが鳴り響く所から始まっていた。誰が押したのかは分からなかったけど、それによって発車するハズだったホーム反対側の電車が止まり、階段を降りようとしていた降車客達が立ち止まってざわめく。

 正直、周りにこんなに人いたんだ…って気分。


『何?』

『誰か落ちたらしいよ?』

『あっ、飛び降りたっっ』


 画像がぐるんと動いて、線路を映し出す。

 ちょっと離れていたのに、ギリギリまでズームされたお陰で、ぼやけてるのにも拘わらず、倒れてるのが自分だとハッキリわかってしまった。

 彼が覆い被さるようにしながら頭を持ち上げるのを見て、思わず顔を背ける。

 だって、思い出してしまった。

 匂いとか、腕とか胸の諸々―――ざわざわと何かが身体の内側から沸き立つような、そんな感覚を覚えて、居たたまれずに腕を擦った。

 心臓がスゴくへんなカンジ。ホントに、これ、どうしたらいいんだろう。

 昨日から、彼の事を思い出す度にコレなんだけど。


「…何て言うか、スゴく丁寧?だよね?」


 リコの声に我に返った。

 ユウキは無表情。リコは感心したように画面を見ている。


「ほら、ちゃんと頭と身体を密着させてから持ち上げてるでしょ? うち、母さんがお祖母ちゃんの世話してたからわかるんだよ。負担かけないようにしてくれてるって。姫抱っことかもさ、あれはする方もされる方もスゴい負担かかるらしいんだけど、この抱き方なら、スカートの中身も見えないし、スゴい安定してたんじゃない?」


 うん、してたよ。安定はしてた。

 でも近すぎるよね?どう考えても近すぎる!

 おかげで私の心臓が(以下略)


「うわ…マジで王子っぽい。」


 ホームに上がって私を下ろした彼が、側に膝をついて話し掛けてる。次いで、彼が私の手に自分の手の平を重ねたものだから、2人が顔を上げてこっちを見た。

 うう、イタタマレナイ―――!!!


『いいな~、彼氏やさしー。』


 その声を残して、画像が終了した。

 リコがため息をついて画面をタップした。


「こういうの、直ぐ拡散するよね。この“彼”の情報も、スゴい出回ってた。」


 彼の写真―――たぶん、中学のかな。

 ネットワークの中では、プライバシーなんて無いんだな…とボンヤリと思いながら、画面をスクロールしていく。


 やっぱり、小学校は違っていた。

 でも、中学校は“東一中”に行かなければ、私も通っていたハズの学校に彼は通っていて、そして、サッカー部に入っていた。

 全国大会出場決定!―――という文字と一緒にアップされた写真の中で、他のメンバーと一緒に腕を組んでポーズをとっている。背の高い彼と小柄な大地は、離れて写っていたけど。


「…もしかしたら、会った事はあるのかも。でも、サッカーやってたのなんて小学校ん時だからねぇ。」

「ていうか、サッカーやってたんだね。全然知らなかったよ。」


 あれ、何か怒ってる?

 ユウキってば、ちょっと顔が無表情なんですけど。


「だって、もうしないのに、言ってもしょうが無くない?」

「そういう問題じゃない!!」


 そこまで言って、ユウキはため息をついた。


「いいよ、もう。」


 吐き捨てるように言って、ユウキが背中を向けた。

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