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南の森防衛戦。

 前回の防衛戦と違う事は、貴族の収入が減った為と大敗北により、軍勢といえど前回ほど数がいない事。

 既に、サザランドとコーディの両名も編成に参加して、街を離れているのを連絡を受けている。


 ギルド長がサザランドの使いの交渉を断り、村を潰すというのが今回の出兵理由だろう……。

 そして、滅ぼした後に適当に流行病を防ぐ為に対応したとでも言って、報告を上げるハズだ。


 ちなみに、遊牧民の村がそんな名目で滅ぼされていた。


 ……

 …………


 そして、サザランドが率いる軍勢が森を出ると……。

 大きな城壁が、軍勢の行く手を阻んだ。


 僕が、態とらしく「エルフの兵士が、城壁の上で弓を構えてます」と、聞こえるように相手側に向けて声をあげた。


 そして、悪徳貴族の軍勢はエルフ達に報復攻撃を受ける。


 攻城戦の準備もなく、城壁を破壊するのは厳しくサザランドの兵の中に魔法使いがいたとしても、エルフ達にはそれ以上の魔法使いがいるのだ……ほぼ詰みの状態である。


 城壁の上から、弓、魔法、と様々な攻撃でサザランドの兵達を蹂躙していく。

 エルフ達の報復により兵の大半を失ったサザランド達は、退却を決めて撤退した。


 そして、サザランド達が撤退したのを確認し、僕はセリナを連れて[転送魔法]で先回りして、ラッド侯爵の元へ向かった。


 スゴロクの街のギルド長をラッド侯爵の屋敷へ呼び出し、一連の流れを伝えサザランド侯爵が行なったギルドに対する敵対行為を伝えた。


 そうする事で、ギルドも貴族に対して訴えることができる。

 そして、サザランド侯爵は兵士達を消耗しながら街へ逃げ帰ってくるのである。

 しかし、ギルドの訴えをラッド侯爵が聞き入れられているので、ラッド侯爵が兵を出してサザランド侯爵とコーディを確保する。


 悪徳貴族二名は、自ら死地に向かっているのである。

 そして、僕達はサザランド達の兵達がスゴロクの街へ戻ってくるのを待った。


 ……

 …………


 そこから、何日か待つと城門の兵からボロボロになったサザランドの達が城門まで来ているという連絡が入った。


 ラッド侯爵が、兵士を誘導し城門の前に集めた。


「貴様、一度ならず二度も私を通さぬとは何事だ!!」と、サザランドが喚いている。


 しかし、ラッド侯爵の周りには兵士達が付いているので迂闊な事は言えないのだが、遠慮なくサザランドは言いたいように物事を言ってくる。


「侯爵になったばかりの貴様が私と同等と思うな……!!

 早く、ここを通せ!!」


「あー、すいませんね。

 サザランド侯爵、ぼくの領地を襲おうとする軍勢があったと連絡があったんですよね。

 しかも、その旨を全てギルドから伝え聞いています」


「あのエルフ達は貴様の差し金か?」


「何を言ってるんです?

 貴方には、エルフ達に報復されるだけの事をやったんでしょう。

 陛下は、エルフ達には不介入と決められていた事を勝手に破り、私欲の為に動いた結果見限られたんですよ。

 その結果が、ラッド侯爵と僕が爵位を持つ理由となった。

 意図を理解して、貴方が大人しくしていれば問題なかったんですけどね……。現状を理解してられない、ようで非常に残念です」


 続けて悪徳貴族二名に伝える。


「貴方、二人にはギルドから訴えが届いています。

 ギルドの存亡を脅かした犯人として、多額の賠償金の請求を求められました。

 ラッド侯爵と僕は、その件を受け入れましたので貴方達に二名を犯罪者奴隷として、身分の剥奪を行います」


「ふざけるな!!」と、サザランドは叫び散らしているがラッド侯爵の兵達に遮られ、サザランドの兵達は駆けつけれない……。


 いや、既にサザランドの兵達は諦めている様子だった。


 ラッド侯爵が、兵士達に悪徳貴族二名の捕獲の指令を出した。

 サザランド侯爵は諦めていないが、コーディは全てを諦めている様子だった……。


 たいした時間もかからずに、兵士達に二名は縄を巻き付けられ捕獲された。


「賠償金を払えば、犯罪者奴隷にならなくて済むのか?」と、コーディは聞いてきた。


「払えればの話ですが、金に困って今回の件を起こすような人間に払える額ではありませんので、諦めて下さいね」と、答えを返した。


「ぐぬぬぬ、貴様が何かを仕組んだのだろう。

 私は無罪だ!!」と、サザランドが往生際が悪くさけんでいる。


「あはははは、面白い冗談ですね。

 自分がやった事を全く理解されていないようだ……。

 セリナ、僕の横に来てくれ」と言うと、セリナが僕の横に歩いてきた。


「お、お前は!!」と、サザランドが声をあげた。


「お解りじゃないですか、貴方が金の為に犯罪者奴隷として売ったエルフですよ。

 貴方達の謀略を全て聞かせてもらいましたし、お陰で貴方達の行動は手に取るように解ってますよ。

 僕に、闘技場での奴隷のショーを見せたお陰で、僕の決意が決まったんですよ」


「今からでも遅くはない、私につかないか?」と、サザランドが言う。


「ご冗談を、貴方がたは味方を使い捨てるでしょう。

 ねっ、コーディさん。ゴルドン兵士長、僕の配下として生きてますよ……」


 コーディは、この発言で全てを理解して俯いてしまった。


「ラッド侯爵、後の対応はお任せしてよろしいでしょうか?」


「あぁ、任せておけ。

 犯罪者奴隷として、生かしておくのも無駄な金がかかるし。

 カジノのモンスターの餌にでもするように伝えるよ……」


「ちょっと、待って下さい。

 流石にそれは罪が軽すぎるでしょう」と、僕は言った。


「えっ、死が軽いと?」


「犯罪者奴隷として、賠償金を返してもらわなきゃ。

 カジノのモンスター達の世話係でもさせればいいでしょう。

 少なくとも自分が死ぬかもしれないという死地に身を置く毎日を続けてもらいましょうよ」


「あぁ、解った。

 そうするとしよう……。その二名を連れて行け!!」


 兵士達が、サザランドとコーディの二名を屋敷にある牢屋へ連れて行った。


 ……

 …………


「ラッド侯爵、お願いがあります」


「ん? なんだ?」


「ここにいる、セリナは先程の二人の謀略によって、不当に犯罪者奴隷の身に落されています。

 彼女の犯罪者奴隷の処分を無かった事にできませんか?」


「あぁ、その件聞き入れよう。

 彼女とは何度も話しているし、犯罪者とは程遠い人物だからな。

 書類を作るので、後日書類を持って街の奴隷商人の所で手続きをしてきてくれ」


「ありがとうございます」と、ラッド侯爵に礼を言った。


「いやいや、君のおかげで不正を正せたんだ。

 これくらい容易いものさ……」


 言葉は言わず、頭を下げ再び礼をした。


「よかったね、セリナ。

 自由になれるよ」


「えっ、どう言う事です?」


「犯罪者奴隷じゃ無くなるから、僕の元を離れて村に戻っていいんだよ」


「いいえ、戻りませんよ。

 ご主人様に尽くすと、私は決めてますから」


「そっか、これからもよろしくね」


「ハイ!!」と、セリナは嬉しそうに返事をしてくれた。

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