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エルフの森の防衛戦

 ……

 …………


 心なしか、森が騒がしい気がした。


「森が騒がしいですね。

 防衛ラインの城壁付近まで、サザランドの軍隊が来ているのでしょう」と、落ち着いた様子のままセリナが言った。


「村長、皆に伝えてくれ!!

 この1陣の防衛ラインは死守はしないから、すぐ2陣に撤退するようにと」


「わかっている。

 森の戦士よ!! 皆、手はずはわかっているだろうな!!」と、村長が言った。


 村長の号令により、『オウ!!』 ……と雄々しき声が辺りに上がった!!


 しばらくすると、サザランドの軍隊が視界に入ってきた。

 そして、兵士達が森の中にある城壁に破壊に手惑い、悪戦苦闘しているところに我々は号令をかけた。


「今だ!! 一斉射!!」と、エルフの戦士達に号令をかけた。


 先陣を切っていた兵士達は弓矢の餌食となり、城壁の後方に倒れた。

 敵軍は、急な襲撃に動揺しているようだ。


 そして、次に敵がとった行動は、兵士の数を増やして一気に城壁を壊す作戦を取ってきた。


「作戦通り、第2射の後に後方の第二陣まで撤退。

 再度、防衛の陣を作る!!」


 敵軍が城壁へ近づき、壁の破壊を試みようと近づくと木の上からエルフの戦士が狙撃で敵兵を仕留めていく。


 狙撃により敵の軍勢を減らしては言ったが、数の暴力で手に負えない状況になる前に、撤退の指示を出し次の陣まで撤退した。


 上空に、緑色の煙が上がった……。これは戦士ではなく、斥候役からの城壁が崩れた合図だ。


 そして、しばらく待つと二本の煙が上空に上がった。

 これは第2陣まで、中間位置まで軍が到着している合図だ!!

 ココからは、僕のスキルが頼りだ!![危険察知]と[警戒]スキルを活かし敵が射程に入った所で号令をかける。


 エルフの魔導師達に、野生のイノシシ達を一斉に起こす準備を始めさせる。

 [タカの目]のスキルの効果もあり、視界に敵兵の姿を捉えた。


「今だ!! 放て!!」


 ズラッと並んだ、尻尾の先に松明を括られた野生のイノシシが一斉に目を覚ますと、一斉にまっすぐ走り出した。


「ぎゃーー!!」


「イノシシが一斉に!!」


 イノシシが木にぶつかり、ドーンと次々と木々が倒れていく。そして、兵士達が居るであろう場所に倒れていく。そして、混乱と恐怖により兵士達がパニックを起こしていた。


 かなりの死傷者が出たのだろう、辺りが血の匂いで充満していく……。


 その状態にトドメを刺す……。

「弓兵、放て!!」と言って、引きつけた兵士達を弓矢による攻撃で蹴散らしていく。


 敵軍はほぼ、半壊して貴族達は命からがら逃げていった。

 我々の勝利を確認し、村長が上空に合図となる魔法を放った赤い光が上空に浮かんだ。


 それを見た、エルフの一同は手を取り合い喜んでいた。


「それで、お主。

 今回の戦いに勝利したのだが……。追い討ちはかけるのか?」と、村長がきいてきた。


「そうですね、再び攻撃に転じてくるかもしれないので防衛ラインを押し上げていきましょう。

 そして、あなた達の森から悪人を排除して下さい。

 しかし、無理攻めはしなくて結構です」


「わかった!! 皆にはそう伝えよう」


「それじゃ、僕とセリナは倒れた倒木の片付けをして街に帰ります」


「なんじゃ、祝いの席には出ぬのか?」


「すいません、ココからが本当の勝負になるんです」


「そうか、村人の救出の件といい、今回の件もだ。

 我々は、お主に世話になったな。何かあれば我々エルフの民はお主に力を貸そう」


「ハイ、僕の領地を脅かしにサザランド侯爵は来ると思います。

 その時に、皆様のお力をお貸しください」


「わかった」と、村長は言ってくれた。


 その言葉を確認して、僕達は再び森に入っていく。


「セリナ、君は村に戻っていていいんだよ。

 ココからは先は、酷いことになってると思うから……」


「いえ、私もご主人様についていきます」


「そ、そっか……」と言って、再び歩みを進めた。


 森を進むと、血の匂いが充満していた。


 軽く気持ち悪さを感じたが、倒れた倒木の処置をしておかないと面倒なことになるので、倒木を[アイテムボックス]に入れて周り、森を確認した。


 辺りには、兵士の死体が点在しているが見ないように努めた。


「なぁ、死体はどうしようか?」と、セリナに聞くと。


「森のモンスターや動物達が処理してくれるので、放って置いていいと思いますよ」


 ……と、あっさりとした返答に、「そっか」と答えるしかなかった。


 倒木を片付けた後、僕とセリナは[転送魔法]で、ラッド侯爵の屋敷へと戻った。


 屋敷に入り、陛下と侯爵に今回の件を報告した。

 そして、近々、サザランド侯爵とコーディが街に逃げ帰ってくる旨を伝えた。


「なんと、エルフの村を無傷で防衛したと言うのか。

 恐ろしい手腕だな……」


「今回は情報が揃いすぎてましたので……」と、陛下に答えておいた。


「それで佐藤殿。

 私達はサザランド侯爵が、戻ってきたところを糾弾するんだな」


「概ね、そうですね。

 糾弾せずとも、ラッド伯爵が侯爵に、僕が伯爵になったと伝えれば状況は伝わりますよ。

 その発言の立会いとして陛下にいてもらえれば、確実でしょうね」


「コーディは腐っても元商人、今回の件でサザランド侯爵に見切りをつけるかもしれませんね。

 ラッド侯爵は、コーディの口車に乗せられないようにして下さいね」


 私達が助け舟を出さなければ、沈みゆく船だろうと、コーディはサザランド侯爵と心中するしかなくなる。


「あぁ、わかっているよ」と、今回の件を話しサザランド達の軍勢が帰って来るのを待った。


 ……

 …………


 ラッド侯爵の屋敷に、僕達は泊まらせてもらった。

 僕は侯爵の兵士に起こされた。


「サザランド侯爵が、南の城門より入場されようとしています。

 ラッド侯爵の権限にて、現在、街への入場を止めております」


「ありがとうございます」と言って、着替えを行い。


 皆が集まる広間へと移動した。


 既に、侯爵と陛下とセリナは広間に集まっていた。


「ご主人様、私はどうすれば?」


「そうだね。君はお留守番お願いできるかな。

 エルフ達にコテンパンにやられて返ってくるんだ。

 僕とエルフ達に繋がりがあると知られたくないからね。

 次の手で、確実に詰ませてみせる……」


「わかりました」


 セリナと会話をした後、二人に挨拶をした。


「お待たせしました。それでは、サザランド侯爵に挨拶をしにいきましょうか」


 そう言って、僕達は南の城門へと向かった。

 南の城門へ徒歩で移動し、ラッド侯爵の兵士が門兵へと連絡をつけた。


 そうすると、サザランド達は街の中へ入ってきた。

 サザランドの前に、僕と侯爵とその後ろに陛下達が待ち構えていた。


「サザランド侯爵、狩りの調子はいかがですかな?」と、ラッド侯爵がいう。


「ふざけるな、伯爵の貴様ごときが、私の入場を邪魔しおって覚えておけ!!」


「いえいえ、爵位に関しましては、先日私も侯爵になったんですよ。

 ちなみに、そこの彼も伯爵の爵位を得たんですよ」と、にこやかにラッド伯爵が言った。


 サザランドとコーディが僕の顔を見て驚いていた。


「どうも、お久しぶりです。

 この度、伯爵の爵位を頂きました。佐藤初です、以後お見知り置きを……」


「ふざけるな!! そんなデマ等、私は信じぬぞ!!」


 ラッド侯爵と僕は顔を見合わせて笑った。


「「わははははは」」


「何がおかしい!!」と、サザランドが激昂している。


「サザランド侯爵、それなら爵位を頂いた当人から直接お言葉を聞かれたらどうですかね」と、ラッド侯爵が言った。


 後方にいた、ベルモンド陛下が前に出てきた。


「久方ぶりだな、サザランド侯爵」


「!!!? ……貴方は!!」陛下の顔を見て、サザランドとコーディは驚いていた。


「この度、この二人の実績を評価して、私がこの二人に爵位を与えた。

 デマでもなんでもないぞ……。それと、この街に侯爵が二人いるという意味が分からぬわけではないだろう。

 今までのようには行かぬから気をつけるように……」


 陛下の言葉を聞き、サザランドとコーディは顔色が悪くなっていた。


「陛下から、言葉を頂いたと思いますが、サザランド侯爵、その姿の様子を見るとエルフの森に狩りに行って負けて返ってきたようですね」と、僕は皮肉を言っておいた。


「フン……失礼する」と言って、サザランド侯爵は屋敷へ戻っていった。


 その後をついていく兵士達はボロボロな姿だった。

 惨敗と急な撤退で、まともな休憩も取れていないのだろう兵士達にも疲れがみれる。

 支える兵士達も可哀想な気もするが、アレの手足である以上ヌルい対応は出来ない。

 こうして、エルフの森の防衛戦の決着がついた。

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