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放浪画家、貴族になる。

 城下街の教会にて、教皇様経由で陛下をラッド伯爵の元へと連れて行く役目を承る。


 この際、[転送魔法]で連れて行く人数は、まず護衛の兵士を4人、次に陛下とその側近と兵士長を連れて行くことになる。


 今回は教皇様からの依頼ということで、依頼費が発生するので割りのいい仕事だと思う。


 教皇様に陛下を伯爵の元へと連れて行く依頼の内容を詳しく確認した。


 結論から言うと、明日、教会に陛下を含め8名がやってくる。

 それを[転送魔法]ラッド伯爵の元へと連れて行くのが僕の仕事だ。


 エルフの森は危険な森だ……。

 それを短縮できるわけだし使わない手はない。まぁ、依頼をされた理由はそんな所だ。


 その件を承諾し、僕は再びラッド伯爵の屋敷の前へ移動した。

 屋敷の前にいる門兵に、伯爵に用事がある旨を伝えると、門兵に案内され屋敷の中へと入っていく。


 門兵が進む後をついて行く、歩きながら屋敷の様子を確認する。

 良くも悪くも普通の屋敷だ。

 悪趣味な貴族趣味がないのが、屋敷の造りを見るだけでわかる。


 そんなことを考えながら、伯爵の待つ部屋へ到着した。


 部屋に入ると、ラッド伯爵が椅子に座って待っていた。


「さっき振りだね。

 移動をする為に、屋敷の庭で開けている場所を探していたと思ったら。

 急に陛下が来ると聞いて、驚きを隠せないよ……」と、ラッド伯爵が言った。


「ラッド伯爵に足りていないものは、資金だけでしたからね。

 それがクリアできるのなら、ラッド伯爵を侯爵をやってもらい、この街の惨状を立て直してもらいたいのでしょう」


「君に提案や支援を受けて、流されるままに侯爵になってしまう訳だ……。

 君の人脈や才能がある種、恐ろしくさえ感じるよ」


「あはは、ご冗談を……。

 僕は、人畜無害な何処にでもいるような放浪画家ですよ」


「まぁ良い、この件で君には礼をしておかねばな……。

 私の権限で、君に男爵の爵位を与える。与える領地などはないが、放浪画家の身より融通は利くだろう」


「ありがとうございます。

 ラッド侯爵」


「ふふ……。

 明日の話だ、気が早いぞ。サトウ男爵」


「そうですね……」


「それで、こちらに話がすでに伝わってるのだが、二週間後にサザランド侯爵が、エルフの森に兵を向けるらしいが、何か手はあるのか?」


「二週間の間に、一番離れているエルフの集落から人員を借りて、一番目の村、二番目の村に人員を配置します。

 基本的にエルフのほうが森での戦闘に優れているのですが、数に押される可能性が高いので、一つ策を使います」


「ほう、策か……」


「何処に、他の貴族の耳や目が潜んでいるかわかりませんので詳しい策はお伝えできないことをご了承下さい。

 流石に、耳打ちで伝えるわけにはいけないでしょうし……」


「構わぬ、策を聞かせてくれぬか?」と言われ、例のイノシシを配置して突っ込ませる策を耳打ちで伝えた。


「あはははは……。

 それは面白い、そんな目にあえば二度と森に近づく気も失せるだろう」


「それで陛下には、一部始終を見ていただけるように二週間程、屋敷に滞在していただけるとありがたいです」


「わかった。

 それならば、君に陛下の送迎をお願いするよ」


「はい、元よりそのつもりですよ。

 それじゃ、防衛戦の準備に戻りますね」


「あぁ、朗報を期待しているよ」と、ラッド伯爵に言われ。


 僕は屋敷を後にした。

 そして、僕は名ばかりではあるが貴族となった。


 次に向かったのは、セリナ達がいるエルフ達の村だ。


 此処が戦場になる場所だ。


 此処は一度、落とした場所なので、戦力を割いてこない可能性がある。

 なので、前もって森の中に壁を造り、この村を守っている意思を貴族に見せつける必要がある。


 壁を越えようとした瞬間に、貴族達に注意換気を入れる。

 そして、村の者を返すように呼びかける、壁を越えるようなら敵対の意思があるとみなすと伝える。


 これで前回、攻撃を受けた村にエルフ達が居る事を伝えるには十分な情報だろう。


 半年くらい先にならないと、村を狩る行為はしていなかった貴族が急遽動き出した理由は、闘技場での大損と、予定していた奴隷の確保が出来なかった為だろう……。


 壁を破ってきたところで、弓による一斉射。

 警戒はして来るだろうが、進軍を続けて来るので弓兵は一時退却する。


 ある程度、村に近づいてきたところで眠らせているイノシシを起こして、一斉に軍に対して突撃させる。

 そして、隊列が乱れている軍を弓兵で一気に一斉射で、完封する。


 最悪のケースとして、村の近郊に土壁を魔法で造るので、軍が抜けて来るようなら森ごと焼き払う。

 最悪のケースの対処としても、人員が必要になる。


 その旨を、セリナや村長や村の戦士達に伝えた。

「既に、人員は揃っているし、他の村からも戦士が来てくれている。

 セリナから聞いて、イノシシの確保も既に済んでるわい」と、幼い見た目の村長が言った。


「それじゃ、道中の壁作成と、火を避ける為の防火壁を作る作業を二週間でやりましょう」


「エルフの魔術師は凄腕が多いからな。それくらい容易い事だ」


「それを聞いて安心しました。

 防衛戦の準備と指揮は村長にお任せしますよ」


「ああ、任せておけ。

 お主は見るだけで良いぞ」


「それは心強いですね」と言って、どう見ても幼女しか見えないエルフが胸を張ってる姿を微笑ましく見ていた。


「それじゃ、防衛戦の準備はそちらにお任せします。

 別件の方で、サザランド侯爵を潰す手を打ちますんで何日か留守にしますがご了承ください」


「ご主人様が貴族になるんですよね?」


「あぁ、それは既に男爵の爵位をラッド伯爵から頂いたよ。

 だから、明日はラッド伯爵を侯爵にするのさ……」


「え!?」と、セリナは意味がわからず困惑していた。


「明日ね、ベルモンド陛下をスゴロクの街に直接連れてきて、ラッド伯爵を侯爵へ爵位してもらうんだよ。

 その為の重要な仕事があるので、僕は動けない。

 だから、防衛戦の準備は君達に任せるしかない……。この一戦をしのいでも元を潰さないと結局は繰り返す」


「なるほど、わかりました。

 私も全力で仕事を務めたいと思います」


「ありがとう、セリナ」


 しかし、僕はサザランドに対して最終的なトドメはゴレッジの村で行うことになると思うと考えていた。


 遊牧民の村は壊滅、シーラハトの町にはトロルが出るので、進軍しづらい。

 そして今回の南の森への進軍で大敗をしてしまえば、東、西、南と動く場所がなくなってしまう。


 それで諦めて、おとなしくしてくれる人物なら良いが、あきらめない場合は資金を作るために、北へ進軍するしかなくなる……。


 そうなれば、ゴレッジの村で防衛戦をやる必要が出て来るわけだ。


 ギルド管轄の村を襲ったとなれば、サザランドには多額の賠償金の支払いを命じられる。

 今回は、金を稼ぐために暴挙に出るのだ……。失敗すれば一銭も払えない……。

 コーディとサザランドはズブズブの関係だ、お互いに無事にはいられないハズ。


 ……と、先の展開を予想していた。


 今回の、防衛戦は地形の有利もあるので確実に勝てると予想していた。

 それに、策を使わずともエルフ達の方が格上だ、謀略にかからず防衛戦と意識さえしておけば普通に勝てる戦いだと思う。


 さぁ、サザランド侯爵!! エルフの村の防衛戦は、貴族になった僕と貴方との代理戦争だ!!

 僕は貴方の作った、スゴロクの街の腐った環境をぶち壊して見せるから覚悟しておけ!!

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