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貴族と対面するが、当然のように交渉決裂する。

 朝だ……。

 今日は貴族に会うため多少の緊張もあり、眠りが浅かったのかまだ眠い感じが残っている。


 朝イチで、宿屋の裏庭にある井戸に向かうと、ゴルドン達が先客として井戸水を使っていた。


「おはようございます」と、兵士達に挨拶をした。


「朝早いじゃないか? 主人(あるじ)よ!!」


「いや、今日はサザランド侯爵と会うつもりなんだよ……。

 それで、緊張して思ったより睡眠がとれてなくてね。

 仕方ないので、顔洗って目を覚ましに来た」


「私に勝った男が、そんな緊張せずとも良いだろうに……」


「サトウの旦那、ゴルドンさんは街でも有数の使い手ですよ!!

 20戦で全員殺しているってのは、前の主人の思惑もありましたけど、決闘を挑まれる事が多かったからですよ!!」と、兵士の一人が言った。


「そ、そうなの?」


「あぁ、そう言うこともあって私を慕ってついて来てくれる者もいるからな」と、ゴルドンは3人の部下を見て言った。


「そ、そうか。あの時、貴方を助けてなければ危なかったな。

 手遅れの状態で事実を知ったら、僕は軽く凹んでたかもしれない……。

 まぁ、助けておいてよかったよ」


「まぁ、それはきにするな。

 あれは闘いの結果だからな。それに、主人は私に勝った。

 それだけで、十分さ……」


「となると、相手は物凄く警戒というか。

 半ば打つ手がない状態?」


「魔法が使えなくても、多少の包囲なら逃げれるだろ?

 魔法が使えたら、敵陣からでも逃げれそうだしな」


「ビッグベアーを相手に逃走するよりは楽だろうな」


「まぁ、そういうことだ。

 気楽に行けば良い……」


「そっか、ありがとう」と、言って井戸水で顔を洗ってから部屋に戻った。


 今日は、貴族に会うから闘技場に入った時の服装で行くとするか?

 いや? 冒険者としての姿を見せておくべきか……。ぐぬぬぬぬ……。


 足元見られたくないし、こちらも警戒を見せる意味で冒険者の服装で会いにいくとしよう。


 サザランドの屋敷の場所については、いろんな人から聞いているので解っている。


 ちなみにどこにあるのかというと、サザランドの屋敷は南東の城壁外に存在する。

 ラッド伯爵は北西の城壁外に屋敷がある。

 城壁の外というよりは、屋敷自体が城壁に囲まれており、街の城壁は貴族の屋敷の一部となっている。


 街の中から、サザランドの屋敷へつながる城門の前に立ち、貴族の屋敷の作りを理解した。


 よし、行くとするか!!


 先に進んで行くと案の定門の所で止められた。


 二人の門兵が、槍を交差させて僕の進む道を封鎖する。


「何者だ!!」


「僕は、貴族のコーディ様からサザランド様へ紹介を受けた冒険者のサトウハジメと言います。

 先日、コーディ様に連絡を入れていただく旨を伝えれらていますが、そちらに伝わっていませんかね?」


 二人の門兵が話しあっている……。


「サトウと名乗る冒険者よ、しばし待たれよ!!

 サザランド様に確認を取ってくる」


「わかりました。しばらく、待たせてもらいます」と、言ってしばらく待つことにした。


 片方の門兵が屋敷に行って、しばらくすると戻ってきた。


「待たせたな。

 その方の話、サザランド様も伝えられていたようだ。

 サザランド様のところまで案内をする。無礼な行動はせぬようにな」


「わかりました。案内お願いします」と言って、屋敷を案内する兵士の後をついていく。


 城門を過ぎると、大きな屋敷が目の前に建っていた。

 こ、これが貴族の屋敷なのか。


 なんという感じだろうか……。

 成金貴族のコーディの屋敷を悪化させたらこうなるという、悪い見本を見せられているみたいだ。


 空を見上げると、空には青空が広がっている。


 ……と、いうことは直接ここに[転送魔法]で入り込む事が可能って事だ。

 隠れれそうな場所はないかな? と、あたりを見回すと、一本の大きな木が庭にあることに気づいた。


「兵士さん、ちょっと案内するのを止めていただけませんか?」


「どうした?急に……」


「サザランド様にお会いするのに、手ぶらでお会いするのは失礼と思いましたので、せっかくですので即興で絵を描いて差し上げようと思ったのです。

 あそこにある庭の木や花壇の花をスケッチして差し上げたいと思うのですが、5分ほどお時間いただけませんか?」


「5分かそれくらいなら良いだろう。ただし、不審な動きをしないように私が監視を行う」


「ありがとうございます」と、言って庭の木の根元に移動した。


 大きく育った木を手のひらで叩き、「よく育ってますね」と言った。

 そして、通路から視覚外の場所を[転送魔法]のポイントとしてチェックしておいた。


 そして、サクッと花壇と大きな木を直接紙へ下書きを済ませて、兵士に見せた。


「おぉーー。

 本当にこの短時間で下書きを済ませるとは……」


「いえいえ、本当はじっくり描きたかったのですが、サザランド様を待たせていますので急いで戻りましょう」


「あぁ、そうだな。

 それでは、再び私の後について来てくれ」と、言われたのでそのまま案内について言った。

 案内についていきながら、屋敷の施設の位置や通路などを覚えていっていた。


 そして、二階の階段を上る時に兵士に言われた。


「この先で、サザランド様が待たれている。

 無礼を働かないように気をつけろ」


「はい、解っています」


 二階の大広間を進むと、やけに偉そうな椅子に座っている。縦ではなく横に大きい大男が椅子に座っていた。そして、その男を守るために兵士が10人ほど列になって隊列を組んでいる。


 つまり、貴族と謁見するにはこのアウェーのど真ん中で話をしろって話だな。


 僕は状況を理解しながら、先へ進んでいった。

 そして、貴族の前に立った。


「お前が、闘技場でゴルドンに勝利した。

 サトウハジメか?」


「はい、先日闘技場で勝利したのは僕ですね」


「ふむ」と言って、サザランドは髭を手で撫でるようにしていた。


「サザランド様。僕は、放浪画家と冒険者をやっているサトウハジメと言います。

 貴族式の挨拶というものが解っておりませんが、お許しください」


「あぁ、よい。

 冒険者は強さこそが、重要だからな。

 ん? お主は画家なのか?」


「先ほど、庭園が素晴らしかったので5分の即興ではありますが、庭園の絵を描かせていただきました」


「ほう、どれ見てやるからその絵を見せてみよ」と、言われたので先程下書きした絵を隊列を組んでる兵士の一人に手渡した。


 そして、兵士は絵をサザランドへ渡す。


「ほぅ……。この絵を五分で描いたとな」


「短時間でしたので、仕上げをしていませんが仕上げをすれば今以上に完成度を上げる事が出来ます」


「ほぅ、私に力を見せるのにはこれでも十分と思うがな」と、言って兵士に絵を渡した。


 そして、兵士が庭園の絵を返してくれた。


「評価していただき、ありがとうございます」


「それは、別に構わない。

 それ以上に貴公の強さが気になってな。

 コーディの元では働けないと断り、私の元へ志願したと聞いたぞ」


「はい、コーディ様は私の装備を奪うために闘技場で戦いを仕組みましたからね。

 流石に、そういう方は信用できませんので断らせていただきました」


「そうか、アレでは仕えるに値しなかったか……」


「それも、ありましたので。

 一度、サザランド様に御目通りしてから、志願先を考えようと思いサザランド様を紹介をしていただきました」


「なるほど、なるほど」



「それで、私は街の道具屋に何かの狩りに行くメンバーとして志願してみれば良いと紹介されたんですが?

 一体何の狩りなのでしょうか?」


「なぁに、貴公なら簡単な事だ。

 森の野人どもを狩ってくれればいい」


「えっ!? それは私に人を狩れと言われているのでしょうか?」


「まぁ、そうなるな」


「そうですか、サザランド様。

 申し訳ありません、私の力は身に降りかかる危険を排除する為に鍛えているものであり、人を傷つけるものではありません。

 画家として、いろんな場所を放浪をする為に最低限の力として鍛えているのです。

 そういう事でしたら、今回の話はお断りさせていただきます」


「貴公は私の命令を断るというのか?」


「はい、人を傷つけてまで何かを得たいとは思いませんので……」


「ふんっ!! この偽善者め。

 よい、二度と私の前に顔を見せるな」と、サザランドは憤っていた。


 兵士の一人が、「貴様!!生きて帰れると思うなよ」と、剣で切りかかって来た。


 [危機察知]で、それは予測済みなので剣撃を回避して、兵士の側面に回り兵士達の隊列に向けて蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた兵士が後ろへ倒れ、隊列を組んでいる兵士達に倒れこんだ。


「申し訳ないが、闘技場で戦った彼の方がよっぽど強かったですよ」と、皮肉を言って貴族の屋敷を出ていった。


 さっさと貴族の屋敷の城門を出て、いつもの宿屋へ帰宅した。

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