夜逃げの準備を始める。
闘技場での戦闘を終えた翌日の早朝……。
スゴロクの街に、家族ぐるみで集まってる兵士達がいた。
人数だけでいうなら16人って所だ……。
僕はそれを確認して、全員に対して話しかけた。
「おはようございます。
引っ越しをするのは、コレで全員ですか?」
兵士長と兵士達は「ハイ」と返事してきた。
「わかりました。
大きな荷物とかも、持ってこれる可能性もあるので各自、家までの道のりを描いた地図を提出しでください。あと、家に入るために家の鍵も僕に渡してください」
「どうやって?持ってくるんだ……。
あっ、そうか[マジックバック]があったな」と、兵士長が答えた。
「そういうことです、地図と鍵に関しては兵士長が集めといてください」
「あぁ、わかったよ。
手荷物だけで来るのは流石に心配だったからな」
「それじゃ、[転送魔法]使って4人ずつ。
ゴレッジの村に転送するんで、転送自体には時間はそれほどかからないから、とりあえず形だけでもいいんで4組を作って下さい」
「転送の順番はどうするんだ?
私は一番最後で構わない……部下達を早く移動させてくれ」
「それじゃ、左から順に転送していくよ」
1組目を[転送魔法]を使い、ゴレッジの村の宿屋の前に移動させた。
「到着、ここがゴレッジの村の宿屋だ。
次のメンバーを呼んで来るんで、君たちはここで待機していてくれ」
「あの?」
「すまないが、質問は後だ!!
余計な時間をかけて、君達の存在が貴族連中にバレたらどうする気だ?」
……と言って、[転送魔法]で再び街の教会に戻ってきた。
「1組目終了、次の組転送行きますよ」
そんな流れでMP回復剤を使いながら、次々と転送を行なって行った。
……
…………
「さてと、兵士長が最後です。
この街に、残りたいとかありますかね?」
「馬鹿を言うな、兵士として死ねるのなら本望だったが、あんな主人に殺されるくらいなら別の地だろうが逃げたほうがましさ……。頼んだぜ新しい主人さんよ!!」
「あぁ、君達に不自由はさせるつもりはないさ」と言って、兵士達と兵士長の家族全てを転送終了した。
「よし、全員ゴレッジの村に着いたわけだ。
コレで君達全員は軽く行方不明扱いになるだろう。
それで、仕事がないと生活に困るだろうから、ギルドから建築中の屋敷の手伝いをしてもらいたい。
住む所は、とりあえずこの宿屋でいいだろう。代金は私が立て替えておく。
早い所、屋敷の付近に君達の家を作れる用に交渉しておくよ」
「あぁ、住む場所を用意してくれて助かるよ」
「まぁ、田舎だがね。身を隠すには丁度いいだろ?
そしたら稼ぎに出る男衆は、僕の名義でギルドで仕事を請け負いにいくから着いてきてくれ。
その前に、宿屋に話を通して来るからちょっとまってて」
宿屋に入って、「店主、ちょっと来てーー!!」と言って、店主を呼び出した。
「おっ、どうしたお客さん」と言って、店主は僕に着いてきた。
スゴロクの街からの引っ越し組の前に店主を連れてきた。
「この面子に宿を提供してくれ。
代金は僕が払うから……」
「そりゃ、こちらとしては有難いがこれだけの人数だとかなりの金額になるんじゃないのか?」
「それでも、連れて来なきゃ。
この人達は不遇な思いするんだろうし、いずれ僕の部下になる人間なんだ。
恩を売っておかないとな……」
「それで代金は?」と店主に聞かれたので、前払いで自分の分を含めて26000ゴールド払った。(約一ヶ月分)
「とりあえず、この宿屋の一日の家賃が50ゴールドだ。
今日から一ヶ月分は私が払っておくから。何かしら稼ぐ方法を見つけてくれよ」
「しっかし、お客さん金払いが良くなったな。
もともとから良かったが……」
「あぁ、闘技場で人気薄の自分に、全財産突っ込んだからな。
教会に描いた絵の売り上げ全部突っ込んだから、ありえないほど稼げたのさ。
そう言う意味では、今回の支払いは経費みたいなもんだ……」
「なんか、いろいろあるみたいだけど……。
ウチはあんたらを歓迎するよ」
「よし、宿屋の店主に挨拶も済んだんで、男衆はギルドへ行くから着いてきて!!」
8人程連れてギルドへ向かった……。
この村のギルドは朝から営業をしてくれているのでありがたい。
隣街は昼からだからな……。
8人程いるんで、案内を経由してギルド長のティーゼさんに来客室で対応してもらうことにした。
来客室に僕を含めて9人で入る。
しばらく待っていると、ティーゼさんが部屋に入ってきた。
「ギルドには、久しぶりですね」
「ハイ、色々と任せっきりですいません」
「いえいえ、城下街にも行かれたらしいですし。
ギルドの要望を聞いて頂けてるんで、有難い限りですよ。
ただ、闘技場で戦ったと聞きましたが?大丈夫でした?」
「僕は大丈夫でしたけど、彼らが無事じゃなかったんです。
そこにいる対戦相手のゴルドン兵士長は、半ば死地に片足突っ込んでましたよ」
「それは、大変でしたね」と、ティーゼさんが頭を下げた。
「それで、僕の名義で彼らに屋敷の建築の仕事を与えられませんか?」
「人員を増やせるのはありがたいです。
特に男手は貴重なんで……」
「それなら、良かった。
仕事の報酬に関しては各自ギルドと話し合いをしてくださいね」
「あぁ、わかったよ」と、兵士長が言った。
「話は変わりますけど、屋敷というより教会の女の子達をすませる為の家は一軒ですが完成しましたよ。
あと、井戸も掘ってますし使用に耐えれると思います」
「そうなんですか? あとで現地を確認して来ます」
「それで、ギルドからお願いなんですが……」
「なんでしょう?
ティーゼさんの頼みなら大概引き受けますよ」と、言うとギルド長は照れていた。
「私とモルドさんを、城下街に運んでくれませんか?
向こうで一週間ほど、過ごすことになるんで迎えに来るのは来週でいいんで」
「そんなことなら容易い事ですよ。
いつやりましょうか?」
「今日でも大丈夫ですか?
隣街のモルドさんも[転送魔法]に便乗できるのなら、急な要件だとしても確実に来ますんで……」
「そしたら、僕達は一度屋敷の様子を見て来るんで、一人案内をつけてもらっていいですか?
その間に、隣街に連絡しといてください」
「はい」
そのあと、ギルドの案内さんが僕たちを間の抜けた声で屋敷へ案内してくれた。
「到着ですぅーー。
ココが佐藤さんの屋敷の建設予定地ですぅ。
右手に見える建物は既に完成してます、井戸も既に使用可能ですよぉ」
建物に入って見たら、しっかりと作られていて満足な出来だった。
ただ、ベットやタンスと炊事場はなかったので、特に炊事場は共用でもいいので作る必要はありそうだ。
一度、セリナを連れて来て反応を聞いてみるとするか……。
「とりあえず、君達にはココで家を作る仕事をしてもらいます。
一応貴族として屋敷が必要だけど、ギルドと協力して君達の住居を作ってください。
給料も出るから、安心してくださいね……。
ある程度人間が増えて来ると、治安維持のために兵士長とその部下の皆は治安維持の為の兵士のとして仕事をしてもらいます」
「あぁ、身内を守る為の村作りって感じだな」と、兵士長が言った。
「まぁ、そんな感じだね。
だから、頑張って下さいね」
「「「おう!!」」」と、3人の兵士が声を出して気合を入れた。
その後は、ティーゼさんとモルドさんを連れて、セブンスの城下街へと[転送魔法]で移動して来た。
「ココが、セブンスの街なんだねぇ……。
南の森が深すぎて、私達では踏破出来ないんだよね」と、しみじみとモルドさんが言った。
「そうなんですよ。だから城下街から降りて来てもらわないと、城下街のギルド職員に会う事なんでほとんどないんです」と、ティーゼさんが説明してくれた。
「今回はそんな地方のギルドから城下街へ移動できたわけですね。
そういう人材を得たっていう証明なのかな?」
「概ねあってますよ」と、ティーゼさんが答えた。
「それじゃ、迎えに来るのは来週でいいんですかね?」
「明日ですけど、私達を交えてこの街のギルド長と話をしましょう」
「あー、わかりました」
そう言って、ティーゼとモルドと別れて、スゴロクの街の教会へ移動した。
子供達が教会の入り口で遊んでいた。
「お兄ちゃん、おはようございます」
「おはよう、セリナはいるかい?」
教会の聖堂を指差して、「神父様と話ししてたよー」と教えてくれた。
「近々、君達に新しい家ができるから、楽しみにしといてね」
「!?」
言葉の意味がわからずキョトンとしている3人だったが、深く説明するのも大変なんでとりあえずセリナを現地に連れて行くことにした。
聖堂に入り、
「おはようございます」と、神父とセリナに挨拶した。
「「おはようございます、ハジメ君(ご主人様)」」と、二人から返事が来た。
「神父、子供達の家が出来たみたいなんで、一度セリナがそこで生活できるか試してみようと思うのですが大丈夫ですかね?」
「セリナ君なら大丈夫だろう」
「ご主人様、お屋敷が出来たんですか?」
「屋敷はまだだけど君達の家だけ、出来た感じかな。
井戸はあるけど、まだ不自由な部分があると思うから、セリナに住み心地を試してもらいたくてね」
「ご主人様の依頼なら断れませんね。
喜んで引き受けさせていただきます」
「そっか、それならお願いするね」と言って、教会の外に出てセリナと一緒に[転送魔法]で彼女達の家(予定)へと移動して来た。
「ココで生活すればいいんですね?」
「うん、不自由な部分があれば教えてもらえると助かる。
それとこれを使ってくれ……」と言って、[マジックバック(本物)]をセリナに手渡した。
「ご主人様、これはマジックバックでは?
貴重なものですし、受け取れません」
「今後は、君がそれを使う必要がある時が出てくると思う。
君の力を信じて、それを君に託すよ……。ぜひ使いこなしてくれ」
「わ、わかりました!!
私には過分な期待ですが、全力で頑張ります」
「ちなみに、村は見えてるんで買い出しなんかも村でできるから」と、言うとセリナは頷いた。
そして、この日の作業は全て終わったのだった。




