成金貴族との接触……。
ベルモンド陛下にお会いした後、スゴロクの街に戻っている。
商人上がりの貴族のコーディと、諸悪の根源であるサザランドと面識を作るためだ。
最悪、[変幻の指輪]で変身してから侵入という手段も考えたが、それは最後の手段にしておく……。
そうなると……この街の貴族との繋がりを持つ人間を私は知らない。
考えられるのはいくつかある。
まず、一つ目はラッド伯爵を経由して、貴族達と知り合う。
しかし、コレは敵側の人材として警戒されるようになるだろう……。
次に二つ目は、コーディは商人上がりという事なので、かなり大きい商会でも持っているのだろう。
そこに直接、放浪画家として売り込みをかける。
その流れから、サザランド侯爵へ紹介してもらえれば問題なく面識を作れると考えた。
最後はほぼ賭けか、何かの類だ……。
カジノ前や、貴族の家の前で、絵を描いて目にとまるのを待つ。
もしくは、絵を放浪画家として、直接売り込みをに行くという方法だ。
直接売り込みを行うのも手だが、今回は搦め手であるコーディ経由で行動を取ろうと思う。
そうと決まれば、情報屋のダンチに会うとする。
いつもの飲食店で、席に座ってダンチが現れるのを待つ。
……
…………
しばらく、待っているとダンチが現れた。
「よぉ、ニーチャン。
酒でも奢ってくれんのかい?」
「あぁ、それは構わないが情報を買いに来た」
そういうと、情報屋の目つきが変わった。
「ほう、旦那。なんの情報が欲しいんだ?」
「貴族のコーディが所有する商会についての情報が欲しい。
それと、例の依頼の件はどうなってる?」
「まず、依頼の件は次の狙いもエルフの村って話だな。
ただ、売れ行きも良さそうなので、通常半年目安なのが二ヶ月後位に狩りが早まるかもしれない。
次に、コーディの商会の件だが、奴隷市場の潜りの奴隷屋三店舗、中央広場にある道具屋、この街の歓楽街が奴の収入源だ……」
「そうか、わかった。
情報料はいくらだ?」
「内容としては、この街の住民なら知ってる程度の事だしな。
例の件で代金は貰ってるし、今回の件は別に金はいらないよ」
「そうは言っても、情報屋ってのは情報が商品なんだろ?
だったら、どんな情報でも金は取るべきだろ?」
「仕方ねえな、それならここの酒代払っといてくれや」
「あぁ、わかった」と言って、席を離れお店の店員に情報屋の飲み代を前払いした。
コレで、取れそうな方法が二つできたな……。
・道具屋に直接絵を売り込みに行く
・歓楽街で仕事を作る
そうと決まれば、何かしら手を打つとしよう。
まずは、この街の中央広場の道具屋に行ってみるか……。
人が多くて騒がしい広場の中にある道具屋へ到着した。
店の中に入ると、威勢のいい声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ!!」
「あっ、どうも」
店の中のアイテムを一通り見て回ったが、割と普通の値段だった。
魔法を使う機会が増えたので、MP回復剤は10個ほど買い足しておくことにした。
「MP回復剤を10ほど下さい」と言って、代金を渡して商品を受け取った。
「お客さん、魔法職かい?
今度、オーナーが主催の大きな狩りがあるらしいよ。
それに志願してみるといい」
「へぇーー。
それはどこに志願しに行けばいいんですかね?」
「この店のオーナー兼貴族のコーディさんの家で、採用試験してるって聞いたよ」
「へぇ……そうなんですね。
いって見たいと思います。それで場所はどう行けば?」
「ちょっと、この場所からの地図書いてやるから。
待ってな……」と、店員が言って地図を書き始めた。
そして、地図を手渡された。
描かれた地図を見て、
「ありがとうございます。
実は魔法職とかじゃなくて放浪画家やってまして、絵を描くのが本職だったりするんですよ」と言った。
「へぇ……。
画家さんねぇ……どんな絵を描くんだい?」
「自然や人物なんでも描きますよ」
書いた絵を数点ほど道具屋に提示した。
特に、店主が気になった絵は窓際で物憂げにしているティーゼさんの絵だった。
「へぇーー。
立派なもんだ。それに人物の絵の女性も綺麗なエルフだな」
「その人は、隣村のギルド長ですよ。
こんな感じで、絵を描くお仕事してますんで、何かお仕事ありましたら、よろしくお願いします」
絵を回収して、MP回復剤の代金を支払った。
「毎度ありーー!!」
道具屋を後にして、貴族のコーディの住まいがわかったので、そこへ向かうことにした。
地図で確認すると、ここから西に向かうと目的地があるみたいだ。
しばらく、西に向かってあるいていると城壁に囲まれた悪趣味な成金っぽい建物がみえてきた。
建物の入り口に兵士が門番をしている。
「すいません、ここは貴族のコーディ様のお屋敷で間違いないでしょうか」と聞いてみた。
「その通りだ!!
ここはコーディ様のお屋敷だ一般人が来る場所ではない。
買う帰れ!!」
「そう言われましても、道具屋で狩りの為の人員を募集していると聞きまして、それに参加しようかなと思ってまして」
「フン!! 身の程知らずの冒険者がいい気になりおって。
まぁ良い、ギルド証を見せろ」
「はい、どうぞ」と言ってギルド証を渡した。
僕のギルド証ををみて、兵士は目を見開くようにして驚いている。
「レベル41だとっ!! この若さでギルドランクもCランクだと」
あぁ、ビッグベアーを一人討伐した時にレベル41になってたのか。
ギルド証を確認してなかったんで、気づいてなかったわ……。
「今日は私服ですけど、装備もそれなりのモノを使ってますよ」
「ぐぬぬぬ……。
私のレベルの二倍か。わかった、確認を取るので今しばらくココで待て!!」
「はい、わかりました」
あっけなく、コーディと面識を作ることができそうだ。
しばらく待つと、兵士が戻ってきた。
「コーディ様が直接お前と面会してくれるそうだ。
私が案内するので、ついてこい」
「はい」と言って、案内のまま兵士について行くことにした。
道中、あたりを見ていると異様なまでに金色というか金製品が多く悪趣味が極まっている。
案内をしていた兵士の足が止まった。
「コーディ様、冒険者を連れてまいりました」
僕の目の前には、痩せ型の体型でちょび髭生やしたオッさんが椅子に座って待っていた。
「お主が、そこの兵士が言っていた。
凄腕の冒険者なのか?」
「発言してもよろしいでしょうか?」
「あぁ、構わない」
「正確に言えば、本職の合間に冒険者をしております」
「ほぅ、お主の本職とはなんだ?」
「僕は放浪画家をやってまして、それを行うために最低限の力を身につけた次第です」
「ほぅ、お主は画家なのか?」
「はい、風景、人物や物からモンスターまで気になった物はなんでも描いてます」
「ん? 今、なんでもと申したな?」
「まぁ、そうですね。
描いた絵を見られますか?」
「絵など持っておらぬではないか?」
「僕はマジックバック(仮)の所持者でして、必要なアイテムは全てこのバックに入ってます」
……と言って、バックを叩いてみせた。
そして、描いた絵をいくつか取り出した。
肌色多めの絵は回避して、風景画、人物画、カジノ建物の絵、教会、モンスター等を取り出して、貴族のコーディに手渡した。
「なんと、マジックバック持ちとは凄腕の冒険者みたいだな。
それでは、せっかくなので絵を見せてもらおうか……」と言って、食い入るようにして絵を見始めた。
「ぬおっ、風景画も良いが特に女子の絵が良いのぉ。
ムムッ!!このモンスターはビッグベアーじゃないか!!
この前、苦戦した野生のイノシシと忌まわしきフォレストウルフ!!」と、モンスターの絵を見て僕の力に食いついてきた。
「お主は、このモンスターと渡り合えるのか?」と、貴族が問いかけてきた。
「その中で一番強いであろう、ビッグベアーは先日一人で討伐してきたところですよ」
周りにいる兵士達がざわつき始めた……。
「主人!! そのようなデマカセを言う人間を信じてはなりませぬ」と、年配の兵士の一人が言ってきた。
「信じるも、何もギルドに行ってビッグベアーを討伐してきた人間を確認してくれば良いですよ。
二回程、卸してますから」
「兵士長、使いを走らせギルドで確認を取ってこい」と、コーディが命令した。
「お主デマカセを言っていたら。タダではおかぬぞ……」
「あー、それで構いませんよ。
まだ名前を伝えてませんでしたね。サトウハジメと言います。
以後お見知り置きを……」
「私は、この街の大半の商会を取り仕切る貴族のコーディだ」
一応、絵を見終わったらしく絵は返してもらった。
しばらく、兵士の使いが帰ってくるのを何もせずに待っていた。
……
…………
「ただいま、戻りました!!」
「それで、この男はビッグベアーを討伐していたのか?」
「ハイ!! ただ、それだけでは無いようです。
大量のモンスター討伐に加え、ギルド依頼の達成率共に新入り冒険者では異例の出世をしている、ギルド内では要注意の人物らしいです」と、兵士はの報告を入れた。
「うむ……。
そうか、それなら問題はなかろう」
「お待ちくださいコーディ様。
得体の知れぬこんな若造を信じてはなりませぬ」と、兵士長が言った。
「そうは、言っても結果を出しているのは事実では無いのか?
私は実力のある人材は欲しいぞ?」
「この男からは何かしら企んでいる気配を感じます!!」
おいおい、酷い言いようだな。初対面でそんな決めつけしてくるとは。
ココはこの兵士長とやらの挑発に乗ってやるか……。
「なんですか、貴方は初対面の人間に対して失礼ですね。
コーディ様に否定をされるのならまだしも、貴方にそんなことを言われる筋合いは無いと思いますが?」
そういうと兵士長の頭に血が上ったのか、
「コーディ様、この男と決着をつけさせてください」
「兵士長がそこまで言うのなら……仕方ないな。
お主には拒否権はない」
「ハァ?」
「場所はカジノ内にある闘技場での、兵士長との一騎打ち。
装備の使用可能で、相手を殺すか降参させたら勝ちだ。
もし、お主が死んだ場合は全ての所持品は私たちが回収させてもらう」
うわぁ……。コイツはひでぇ。
「そこまでしないと、力をお認めにならないのでしたらいいでしょう。
拒否もできないので、お受けしますよ。
それと、どうせ生きるか死ぬかの賭けになるんです。私の所持金を全額、私にベッドさせてもらっていいでしょうか?」
「いいだろう、それくらいの時間はやろう」
「私は逃げも隠れもしませんので、お世話になった方々に挨拶だけさせてもらえませんかね?
人のことを身ぐるみ剥ごうって見え見えなんですし、アウェーで降りを受けるんだそれくらいはさせていただきたい」
「それだと、お主が逃げるだけだろう?」
「申し訳ないですけど逃げるだけなら、この状態からでも余裕で逃げれますよ?
少なくとも、コーディ様貴方は私に喧嘩をふっかけてこられている立場ですよね?
ただ、逃げるだけで済むとお考えにならない方がいいですよ」
そういうと、あたりが騒ついた。
「わかった。
その条件を飲もう、しかし猶予は2時間だ。
ココに2時間で戻ってこないのなら、お主を犯罪者奴隷として扱ってやるから覚悟しておけ」
「それはどーも。
ただの、狩りの募集に来ただけで、なんでこんな事させられるんでしょうかねぇ」
……と、皮肉を言って貴族の屋敷を出ていった。




