教皇からの紹介。
残り二日あるが、どうするか……。
うーん? そうだ。
教会にいる子達と遊んでやろう……。
普段、仕事で相手してやれないからな。
宿屋を出て、[転送魔法]を使い。
スゴロクの街 の教会へ移動した。
朝方だが……子供達は掃除をしていた。
服装も新しい洋服を買ってもらえているようで、見違える姿になっていた。
「おはようございます」
「おはよう、お兄ちゃん!!
今日は何の用事なの? エルフのお姉ちゃん? それともおじちゃん?」
「あぁ、今日は普段休みが取れないから。
君達と遊んでやろうと思ってね」
「え!! そうなの? やったー!!」と、一人が喜ぶと他の二人も嬉しそうにしていた。
「そういえば、君達の名前を聞いてなかったね」
「リサ」
「リタ」
「リラ」
えっ? 名前似過ぎというか、単純すぎだろ?
「えっと、君達は姉妹なのかい?」
「「「違うよー!!」」」と、三人は答えた。
「奴隷にされた時に、名前を奪われちゃったの。
だから、そこで覚えやすいように簡単な名前に変えられたの」と、リサが言った。
「元の名前は覚えてないの?」
「覚えているけど、指定された名前以外で返事すると怒られたから。
あまり前の名前を使いたくない……」
不憫すぎる……。そう思うと、僕は彼女達の頭を撫でていた。
「もう、怒る人間なんかいないんだ。
僕が前の名前を新しくつけてあげるよ。だから前の名前を教えてくれないか?」
「アイラ」
「ミラ」
「ライラ」
あるぇ? 前と変わらないような?
「結局、名前の感じは三人とも似てるんだね……」
三人をそんな流れで撫でていたら、セリナに見つかった。
「ご主人様……。朝から何をしているんですか?」
「いや、この子達の事を構ってやれなかったんで、今日はこの子達と遊んでやろうかなと思ってね」
「そうなんですね……」
「君もくるかい?」
「良いんですか?」
「良いよ、セリナも奴隷になってたんだし。
私服はあまり持ってないでしょ?」
「けど、この前防具を買ってもらいましたが……」
「あれは必要経費。
今回、服を買ってあげるのとは別の問題です」
お金に関しては、ゴレッジの村で収益は宿屋経由と、スゴロクの街での収益はセリナ経由でもらっているので資金などには余裕がある。
「ありがとうございます。
お言葉に甘えさせてもらいますね」と、セリナは言った。
その後は、彼女達を連れて街の服屋へと移動して彼女達の服を買ってあげた。
服を買った後、教会へ戻ってきたら。
彼女達から、お礼の言葉を言ってもらった。
「ご主人様(お兄ちゃん)、ありがとうございます」
一応、彼女達の所持者は私なのだ。
今は教会の好意で世話になっているが、いずれ彼女達が自立できるようにしなきゃな。
彼女達が嬉しそうにお礼を言っている、表情を見てそんなことを考えていた。
そして、翌日はゴレッジの村でライムさんとティーゼさんが、部屋に訪ねてきたので三人で食事に行ったり。
村の服屋で服をプレゼントしたりと、そんな一日を過ごした。
◇◆◇◆
そんないつもの通り? の四日間が過ぎ。
教皇様と約束をしていた当日になった。
セブンスの城下街の教会に着いたので、入り口の兵士と挨拶をして教会の中に入る。
前回と同様に、教皇がいる部屋の前に立った。
コンコンコン……
扉をノックして、様子を伺う。
「誰だい? 」
「先日、お会いしました。
佐藤です。重要な人物を紹介していただける件で伺いました」
「部屋に入りたまへ……。
既に、その人物はココに来ているよ」
「ハイ、それでは失礼します」と言って、扉を開けて部屋に入った。
教皇の隣に、派手な格好の男性が座っている。
「その席に座りたまへ……」
「はい」と言って、言われる通りに椅子に座った。
「佐藤君。今日、君に紹介したい人物はこの方だ……。
この国の王、ベルモンド陛下だ」
……!? えっ!? この国の一番偉い人!!
「やぁ、[神の絵師]のサトウ君だったかな?」と、ベルモンド陛下と紹介された男が話してきた。
「……!? デロンさん、いや、教皇様、コレはどういうことですか?」
「君が貴族になる上で、一番の協力者になってくれる人物を連れてきたまでだよ」と、教皇は言ってきた。
本当に貴族の黒幕みたいなものを、連れてくるとは……。
仕方ない、本物だと信じて対応するしかないよな。
「はじめまして、ベルモンド陛下。
教会により絵師として、登用してもらっている。
佐藤初と言います。以後お見知りおきを……」
「君の話は、教皇より聞いているよ……。
貴族という地位を欲している件もな」
「はい、その通りです」と、答えスゴロクの街であった出来事やサザランド侯爵という貴族の悪事を裁きたい為に地位が欲しいという旨を伝えた。
そして、その為に協力してくれる人間も少なからずいるという件も伝えた。
「アレの悪事は、ほとほとに治らなくてな。
私も、困っていたところだ。
そこに、商人から成り上がりの貴族がサポートについた結果、やり口が、日に日に激化している話も聞く。
私は、君が貴族になる件と、サザランド侯爵を裁く件に関しては黙認しよう。
支援としては、一切与えないがそれで大丈夫か?」
「大丈夫です。
サザランド侯爵を引きづり降ろせても、それに次ぐラッド伯爵が成長してくれなければ街としての未来は暗いでしょうから」
「なるほどな……。
君は彼に支援するつもりなんだな」
「はい。
彼に足りないのは資金力で、ココをフォローできれば貴族としての力は高いと評価していますので」
「この件に関しては、私達は動かない。
エルフの村は襲わないという、代々からの取り決めをサザランド侯爵が破ってくれて、私としてもいい迷惑をしているよ。
この件は、君が片付けてくれ期待している」
「わかりました。ご配慮いただきありがとうございます。
陛下にお会いするとわかってましたら、何かしら絵を描いて用意しておきましたが、申し訳ないです。
なんの用意もできていません」
「あぁ、構わん、構わんよ」と、陛下が言った。
「デロンさん、よく陛下をここにお連れできましたね?」
「教会から国へ、多額の金額を支払ってるからな。
それに、陛下とは昔馴染みでな。お互いに見知った仲なのさ」
「そうなんですね、デロンさんの人脈に感謝って感じですね。
それでは、僕はコレで失礼します」と言って、教皇の部屋を出てそのまま、いつもの宿屋に帰った。
予想の範囲外の人物を紹介され、戸惑ったが僕が貴族になる事も陛下から許可を貰ったようなものだ。
あとは、ラッド伯爵の腕次第なところがあるんだが……。まぁ、彼なら問題ないだろう。
僕があとできる事があるとすると、サザランド侯爵達の悪事の現場の目撃者になる事と言ったところだろう。
そのためにも、一度コーディとサザランドに面識を作る必要があるかな。
貴族になってから会うか、放浪画家として会うか……。
どうするか、貴族として面識を作りたいがコレはいつになるかわからないので、放浪画家として会う機会を先に作ってみるか……。
そうと、決まれば作戦開始だ!!




