旅立ちの予感
朝だ……。
今日やる事は三つだ。
・ギルドに複製したマップを届ける
・昼過ぎに教会へ行きラッド伯爵に相談する
・セリナを買った奴隷商の店へ行く
ギルドに関しては、買取倉庫のオッチャンに直接渡せば10分もかからない作業なので、大した作業にならない。
昼までにはかなり時間があるので、この街の奴隷市場へ行くとしよう……。
僕がセリナを買った店へと移動した。
奴隷商は朝方だと言うのにお店を開けていた。
お店に近づくと、
「この前のお客さんじゃないですか、また何かご入用で?」と、聞いてきた。
「いや、奴隷商の貴方に聞きたいことがあってきた」
「ほう、なんでしょうか?
答えれる範囲で答えますよ」
「カジノに女性の奴隷を卸しているのは、貴方の店か?」
「いいえ、違います。
あそこに卸される奴隷はほぼ捨て値や、取引価値の無いものが主になりますので」
「カジノに奴隷を売っているのは他の店舗ですね」
「……と言っても、貴方のお店が他の店に奴隷を流してるんじゃなかったのか?」
「あぁ、アレは方便ですよ。
ウチの店から出て行きたくなければ、いい顧客に買ってもらう努力をしろっていうね」
「セリナが、貴方の店に来たのは何故だ?
彼女は犯罪者奴隷の扱いなのだろう?」
「他の店が犯罪者奴隷を扱える技量がないからですよ。
この近辺に、何店舗か奴隷商ありますがウチ以外ほぼモグリですからね」
「それなら、なぜこの街の連中はその店に注意を入れない?」
「簡単な事だよ。
商人上がりの成金の貴族のコーディと奴隷商がつながっているからさ」
「そして、コーディとサザランド侯爵が繋がってるって言うわけか」
「この街の、裏事情に詳しくなったじゃないか。
いいことを教えてやるよ。サザランドって貴族は遊ぶ金欲しさに村を襲わせて奴隷を強引に作るような奴さ。
だから、ウチ以外の奴隷は質が悪い。奴隷を買うならウチが一番ってことさ」
何事もないかのように宣伝してきたぞ……。
「もう、一つ聞いていいか?」
「カジノの奴隷ってのは、毎日あんなペースで使い潰されるのか?」
「あぁ、闘技場のオークに襲わせるやつか?
アレは半年に一回しか行われないさ。逆を言えば半年に、一回どこかの村が潰されている」
「……意味がわからない。
何故そんな貴族が、この街の最高権力者なんだ?」
「ラッド伯爵は、清廉潔白ないい貴族だ。
だが金を持ってなくてな、それで権力争いに負けているんだよ。
サザランドには、商人上がりのコーディがついてるからな」
「ラッド伯爵が、最高権力者になれば街は変わると思うか?」
「変わらないだろうね、サザランドがいるからな。
お客さん、アンタの後ろにゃ、教会がついてるんだろう?
ラッド伯爵を持ち上げる気なのかい?」
「さぁね?
ただ、この前初めて会ったさ」
「そうか、お客さんは情報屋のダンチを知ってるかい?」
「あぁ、この前飲食店で会って挨拶されたな」
「ダンチに、ラッド伯爵に協力者してくれる奴らのリストを出してもらいな」と、耳打ちで伝えられた。
「お客さんはコッチ側の人間だと、信じてたよ。
商品の境遇に本気で怒れるんだからな……」
「うーん、そんな大層なものじゃないよ。
僕が住んでいたところが、奴隷なんてない国だったからね」
「へぇ、いい国じゃねえか」
「そうだったのかもしれませんね。
とりあえず、質問の件ありがとうございました」
「また、買いに来てくれるんだろう?」
「そうなると思いますよ……」と言って、飲食店へと向かった。
◇◆◇◆
飲食店に到着して、ダンチの姿を探した。
見つけた!! お互いの存在に気づいたので、話をする為に近づいた。
「よぉ、にーちゃん。元気そうだな」と、ダンチが挨拶してきた。
「あぁ、ぼちぼちだよ。頭にくることはあったがね」
……と言って、続けて、ダンチに耳打ちで「ラッド伯爵の支援者のリストを出してくれ」と伝えた。
ダンチは僕の顔を見て、コクリとうなづいた。そのあと、エール代をダンチ奢ってやった。
「にーちゃん、教会の人間だよな? 明日、教会に持って行く」
「あぁ、お願いするよ」
そして、飲食店を離れた。
◇◆◇◆
昼過ぎになっていたので[転送魔法]で教会へ移動した。
丁度、ラッド伯爵が教会から出てこようとしているところだった。
「ラッド伯爵、すいません。
少しお話をよろしいでしょうか?」
「あぁ、なんだい?」
「先日この街のカジノに行ったんですよ。
なんなんですか、アレは?」
「私も何が行われているのかは知ってはいるが、私は手を出せないのだよ……」
「特に闘技場でオークに女性を襲わせる、アレは最悪でした」
「あぁ、アレを見てしまったのかい。
まともな精神をしてればあんなものは楽しめないはずさ。
それを見た後に、スゴロク場で大金を使い込んだわけか……」
「何故、それを?」
「 教会に来たばかりの子供達に教えてもらったのさ。
逆を言おう、あのイベントを行ったということは、アイツらはどこかの村を襲った後だ。
次に半年後、何処を襲うか調べておいて失敗させれば良いんだよ」
「なるほど、エルフの村の場合は防衛に成功して、謀略ではめられたんでしたね」
となるとだ、次に貴族連中が動き出す前にどこを攻めるのか調べておく。
前もって準備をしておいて防衛して、叩き潰す。
そういう情報を仕入れてくれるヤツは……?
あっ、いた。ダンチに頼んで半年後、貴族連中が何処を襲うか調べて貰えば良いのか。
「ラッド伯爵、おかげさまで半年後の対策ができそうです」
「流石に、この状況はよろしくないからね。
そういえば、教会を経由して当家に支援が少しずつではあるが入ってきているんだ」
「それは良かったです……。
私としても、ラッド伯爵に頑張ってもらわないと困りますからね」
「あぁ、君を貴族にして、サザランド達に対抗する手だよな」
「私ができる資金の援助はさせてもらいます。
だけど、流石にカジノのアレは無いです。こんな街、滅んでしまえと軽く呪いましたよ」
「あぁ、善処させてもらうよ」と言って、ラッド伯爵は教会を去っていった。
ラッド伯爵に用があって教会に来たのだが、件の伯爵には会えたので教会には入らずギルドへ向かうことにした。
[アイテムボックス]の中には、先日作ったマップのコピーが50セットある。
この街のギルドの買取倉庫へと向かい。
買取倉庫にいるオッチャンにはなしかけた。
「どーも!!」
「よぉ、にーちゃん。
今日はマップを持って来てくれたんだろ?」
「はい、そうです」と言って、複製したマップをオッチャンに全て手渡した。
「にーちゃん、すげえな。
全てが同じに見えるように複製するなんて……」
「ははは、こういうのは得意なんですよ。
こういうお仕事あったら、教えてください」
「むしろ、やってもらいたいことが山ほどあるんだが。
コレは何処のギルドでも共通の意見だと思うぞ」
「そうなんです? それならティーゼさんにも営業してこないとなぁ」
「それに、にーちゃんは[転送魔法]が使えるんだろ?」
「あぁ、モルドさんから聞きました?」
「そうだ。
ギルドのある町や村なんかを回って来たらどうだ?」
「うーん、僕は奴隷の女性を大量に購入しようと、思ってるんですよ」
「急にどうしたんだ? そんな話をして……」
「いえ、それで彼女達が不自由なく住める建物を建てたいんですけど、どうすればいいですかね?」
……と、オッチャンに質問したつもりだった。
「そんなの簡単だろう、サトウ君」と、僕の背後からモルドさんがひょこっと現れた。
「モルドさん、急に脅かさないでくださいよ。
それで、簡単って?」
「君がいろんなところのギルドの御用聞きをしてくれれば、ギルドは無償で君に協力するよ」
その後にモルドさんは耳打ちで、
「神父から話は聞いている。
君が貴族になって奴隷の女性を救いたいんだろ?」と言った。
「あぁ、聞いたんですね」
「流石に、この街は治安が悪すぎる。
そのせいで、この前の大商いのチャンスを他所のギルドに譲るハメなるんだ。
まぁ、私も責任者ということもあるんで、深くは追求しないでくれると助かる」
つまり、ギルド長としてもサザランドの政治に不満があるって話だ。
「けど、そうなると僕はギルドの為にタダ働きを続けるって話ですかね?」
「いやいや、そういうわけでは無い。
報酬はキチンと出すさ……。[転送魔法]で[マジックバック]を持って、いろんな町に行き来できる人材ができれば、ギルドにとって物凄い価値になるって話さ」
「つまり、僕はいろんな町を回ってこいって話ですよね」
「そうだ、その代わりと言ってはなんだが。ゴレッジの村のギルド長が、村の近辺に君が住む為の建物を作ってくれる話になっている」
「ティーゼさんが? 」
「いやはや、あの女性がここまで入れ込むとはね……」
「あんな綺麗な人に惚れられるなんて、ありがたいですね」
「君は、実年齢や種族を気にしないタイプなのかい?」
「どうなんでしょう? 」と、はぐらかしておいた。
各町のギルドはその費用を、ゴレッジの村のギルドに建設費を毎月支払うという流れになるらしい。
「明日は、知り合いが訪ねてくるので、明後日から各町への探索に動きたいと思います」
「ティーゼさんには、そう伝えておくよ」
ギルドと仕事を契約し、私の住居と奴隷になった女性達の住居に関しての問題が解消される予定になった。




