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密約。

 見知らぬ天井……。


 それもそのはず、昨日は初めて泊まった宿屋だ。

 ここの宿屋は、一泊50ゴールドではなく100ゴールド飯無し。


 仕方ないので、[アイテムボックス]に入っている料理を食べて夜飯を済ませた。

 それと、寝る前に[クリア]の魔法を使って眠りについた。


 うむ……。


 これなら、[転送魔法]を使って村の宿屋を拠点にした方がいいかもしれない。


 身支度をして街の宿屋を出た。今日は、この街のギルドで仕事を探すとしよう。

 先日はギルド長のティーゼさんに、同伴してもらったが今日は一人でギルドに行くことにした。


 場所は把握しているので、徒歩でギルドに向かった。


 ……

 …………


 しばらく徒歩で移動して、この街のギルドに到着した。


 ギルドの前を掃除している男性がいた。


「君は、サトウ君だったかな?」


「あっ、ギルド長のモルドさんですよね。

 朝早くから、掃除してるんですね……」


「あぁ、ギルドの入り口くらいは掃除しとかないとな、仕事を始めた気がしないんだよ。

 それと、まだギルドの開店には早いぞ?」


「え? ゴレッジの村はこれくらいでも開店してたんですけど?」


「あー、この街の特性上な夜間も遅くまで営業してるんだよ。

 その分、開店が遅いんだ……。

 掃除も一通り済んだんで、話なら聞いてやろうか?」


「えっ!? 良いんですか?」


「そりゃ、他所のギルド長が直々にお願いに来てくれたんだ。

 君のことを邪険には扱えないよ……」


 その後、モルドに来客室へ案内され色々な事を確認した。


 ・この街がギャンブルの街と言われているのは何故か?

 ・僕にできるギルド依頼はないか?

 ・貴族のサザランドについて


 質問したことについて、順にモルドは答えていった。


「まず、ギャンブルの街って言われてるのは、この街の中央地区にカジノがあるんだよ」


「へぇ、カジノですか。

 お金が動いてそうですね……」


「次に、君がやれる仕事なんだが、かなりあると思うよ。

 君は、南の森を抜けてきたんだよな?

 それなら、相応の力は持ってるわけだ……。

 是非、いろんな仕事を引き受けてもらいたいね」


「えーっと、討伐とかではなく画家としてできることはないですかね?」


「そういう系の仕事は、探しておいてやるから。

 今は、討伐や収集の依頼を片付けて欲しいな」


「わかりました」


「次に貴族についてだが、この街には貴族が三人いる。

 大貴族のサザランド侯爵、商人上がりの成金貴族のコーディ男爵、借金まみれの没落貴族のラッド伯爵だ。

 君は金で貴族の地位を買おうとしているんだろう?」


「どうして、それを?」


「いやな、ドナルド神父にこの前相談されてな?」


「それで三人の貴族の話を出して頂いたのは、どういうことでしょうか?」


「さっき、言った順番がこの街での貴族の力の順さ。

 それと、この街に貢献している順なら、全くの正反対になるがね。

 サザランドとコーディは裏で繋がっている。裏取引なんかも日常的にやってるみたいだな」


「えっと、そこの部分がこの国の暗部なんですかね?

 それと、ラッド伯爵ってどんな方なんです?」


「清廉潔白な青年貴族さ。

 だから、後ろ暗いことも出来ず金儲けが下手でな。

 そのせいで人は良いけど、金はないので没落貴族と言われる始末さ」


「……ということは、僕はラッド伯爵を経由して貴族の地位を手に入れれば良いんですかね?」


「その通りだ。

 ちなみに、ラッド伯爵に会うのは簡単だと思うよ。ドナルド神父を経由して紹介してもらうといい」


「あぁ、ラッド伯爵に恩を売って、街での権力を取り戻させれば、街の腐敗も治るし。

 僕が貴族になる近道ってことですか?」


「その通りだ……!!

 君が貴族になれば成金貴族だろうが、裏にギルドと教会が付いている。

 成金コーディより、よっぽど力をつけれるハズだ」


 つまり、貴族のうち敵は二人で一人は味方に引き入れろということか。


「わかりました!!

 この街の探索と情報収集が終わり次第、何かしら動いてみますよ」

 そう言って、来客室を出ようとしていたときだった。


「ちょっと待った。

 サトウ君何かを忘れてないかい?」


「えっ?」


「こちらは、情報の提供したんだ。

 ギルドの仕事もこなしてもらわないとな」と言って、依頼書を束にしてモルドはテーブルに置いた。


「うへぇ……」


「まぁまぁ、ギルドに恩を売っておいて損はしないさ。

 暇なときにでも依頼を片付けてくれよ」と、モルドが他人事みたいに言った。


「わかりました。折を見て依頼を片付けます」と言って、ギルドを後にした。


 確か、この街の中央地区にカジノがあるんだったな。

 ……行ってみるか。


 徒歩で、中央地区へ移動してカジノらしい建物を探した。

 中央地区に到着し辺りを見回すと、ひときわ大きくやけに煌びやかな建物が、ココがカジノですと主張していた。


 まだ、営業はしていないみたいだ。

 建物の裏に隠れるようにして、[転送魔法]を使い街の教会へと移動した。


 今日も、教会の入り口をセリナが掃除していた。


「セリナ、おはよう」


「ご主人様、おはようございます」


「今日も掃除かい?」


「はい、教会にはお世話になってますので」


「掃除中に申し訳ないけど、セリナも一緒に来てくれないか?」


「ハイ!!」と言って、セリナは僕の後について来た。


 教会の中に入り、聖堂にいるドナルド神父に話しかけた。


「おはようございます」


「やぁ、ハジメ君。

 今日は、この街の宿に泊まったらしいね?」


「あー、サービスが思ったより良くなかったんで。

 眠りに行くのは、村の宿屋にしようかなと思ってます。

 倍の値段で食事なし、井戸なしだったので……」


「まぁ、それは仕方ないね。[転送魔法]使える人材のほうが稀有だからね」


「それで、話は変わるんですけどギルドに今朝行って来たんですよ」


「まだ、開店してなかっただろう?」


「ハイ、ギルド長が入り口の掃除してましたよ」


「それで、何か聞けたのかい?」


「単刀直入に言いますけど、貴族のラッド伯爵に顔をつなげてもらえませんかね?」


「あぁ、その話だね。

 その件は私もギルド長に相談したんだよ。

 この街で、正しいことをしている貴族が一番不当な扱いを受けているからね。

 良いよ、私から君をラッド伯爵を紹介してやろう」


「本当ですか?」


「あぁ、彼は毎日、昼過ぎに聖堂に来るんだよ。

 この教会の一番のお客さんと言ってもいいさ」


「お客さんで思い出した。

 セリナの宿泊費を教会に払いたいんですけど」


「あぁ、それは気にしなくていいよ。

 君の描いた絵の収益で、どうにでもなるし。それに、彼女自身が働いてくれている」


「セリナ、何かやってるの?」


「孤児院の子供達と、一緒に簡単なお仕事を手伝ってるだけですよ」


「そっか、それならいいんだ」と言って、この前描いた孤児院の子供たちと遊んでいる絵をドナルド神父に手渡した。


「教会にとって、僕の絵は女神様の絵しか価値ないと思いますけど……。

 受け取ってください」


「いやいや、そんなことないさ」と言って、神父は絵を見ていた。


「これは、この前ライムさんがウチに来た時の絵だね」


「子供達とライムさんがいい表情してたんで、つい描いたんですよ。

 後から混ざったセリナも、いい表情してるでしょ」


「ありがたく頂戴するね。

 うちの教会に飾らせてもらうよ。

 そろそろ、昼過ぎるのでラッド伯爵が来る頃だと思うが?」と、神父が言った。


 ……

 …………


 しばらく待っていると、聖堂の扉が開いた。

 質素ではあるが貴族風の雰囲気のある青年が、女神像の前に近づいて来た。

 そして、女神像に礼拝する。


 ……

 …………


 貴族風の男が、神父へと近づいて来た。


「おはようございます。ドナルド神父」


「やぁ、ラッド伯爵。

 今日もお務めお疲れ様です」


「あぁ、それで神父の隣にいる彼は何者だい?」


「彼は教会で、登用された絵師ですよ。

 素晴らしい女神の絵を描く男なんですよ。ハジメ君せっかくの機会だし、ラット伯爵と挨拶すれば良い」


 まったくもって、わざとらしいな。

 だが、せっかく作ってもらった機会だし、ふいにするわけにはいかないな。


「おはようございます。

 ラット伯爵、私は先日から教会に絵師として登用してもらいました。

 放浪画家の佐藤初と言います。以後お見知り置きを……」


「へぇ、画家なのか君は?

 どんな作品を書いているんだい?」と、貴族の青年が聞いてきた。


 ラッド伯爵は、貴族のイメージのきらびやかなイメージがなく良く言えば質実剛健な感じで、悪く言えば質素なイメージの人物だ。

 肉体もかなり締まっていて、冒険者と言われても問題ないくらいに鍛えている感じが見て取れる。


「私が描いているのは色々ですが。

 教会では女神様の姿絵を描いてます」と言って、教会に渡した二枚の姿絵をラッド伯爵に渡した。


「むむっ!!

 まず、この紙が物凄く上等なものを使っているな。

 それに、この女神の姿絵……。まるで、本人と対峙している気持ちになるな。

 女神の力の一部をこの絵から感じる……」


 ラッド伯爵は続けて、僕に質問をしてきた。


「本当に、この素晴らしい絵を君が描いたのか?」


「そうですね。

 先程、対峙していると言われましたが、啓示という形で女神とお会いしています」


 転生者ということは、伏せてそれっぽく貴族を信用させて言った。


「なるほど、だからこそこの出来の絵を描けるのだな」と言って、絵を返してくれた。


「ドナルド神父、この二枚の絵ですが。

 ラッド伯爵に、私から差し上げてよろしいでしょうか?」


「なに? この絵をくれるというのか?」


「はい、お近づきの印にということで……。

 この絵は複製品でして、原本はゴレッジの村とここの教会に一つずつあるんです」


 そう言って、二枚の絵を伯爵に手渡した。


「ありがたく頂戴するよ」


「はい、それでラッド伯爵に、僕の名前を覚えていただければ安いものですよ」


「あぁ、覚えさせてもらうよ。

 それと、そこのエルフの娘は君の知り合いのなのかい?」


「あぁ、先日。

 色々ありまして、奴隷として購入したのです」


「見たところ、犯罪者奴隷だが制約紋が見当たらないのだが?」


 キタっ!! この人なら事実を聞けば協力してくれるはず。


「セリナ、お前の村での出来事をラッド伯爵にお伝えしろ」


 そこから、セリナは奴隷になるまでの一部始終を話した。

 ラッド伯爵は、サザランド侯爵に憤怒した。


「貴族という街の代表が私欲の為に……。

 セリナ殿、本当に申し訳ない」


「いえ、その結果。

 ご主人様に助けられましたので……」


「佐藤殿、君はサザランド侯爵を打ち倒すために私に近づいた?

 違うか?」


「さあ、どうでしょうか?

 ただの放浪画家に大層な事は出来ませんよ……」と、とぼけておいた。


「いや、彼女が説明してくれた内容から察するに君は、奴隷制度自体を否定している。

 そんな人間が奴隷を買っている。何か考えがあるのだろう?」


 ……と、続けての問いに対して神父が助け舟を出してくれた。


「ラッド伯爵、この男は金のなる木です。

 先程見て頂いた絵は、教会の信仰をさらに深めるものです。

 更に、芸術としてのレベルも高いので、お金を生み出します」と言ったところで、神父の発言を手で静止をかけた。


「ドナルド神父の言ってた話しの続きは、僕が言いますね。

 貴方は、真面目すぎるのでお金稼ぎが出来ないと聞いた。

 そのせいで、この街の力関係でサザランド侯爵に負けていると……」


「ああ、そうだ。それが事実だ」


「僕の稼ぎを貴方に投資します。

 なので、僕を末席でもいいので貴族にして下さい。

 そうすれば、腐れ貴族に対抗する力を得ることができる。

 ちなみに、僕の裏には教会とギルドが付いてくれる予定です」


「わ、、わかった!! 今回の彼女の件、私としても許せぬ。

 資金面での件、佐藤殿に助力をお願いしたい」


「ハイ、わかりました。

 ……と言っても、僕は絵を描くだけで売るのは教会なんです」


「いや、君の絵はこの国全土を取り込むぞ。

 私はそんな予感がする……」


「どうなんですか?ドナルド神父」と、聞いたら。


 神父はニヤリと笑った。


「僕も彼の策略に乗せられてるみたいですね。

 でも、大丈夫です。意見は一致してますので、ラッド伯爵よろしくお願いします」


「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」


 そんな密約が、教会の聖堂で行われたのである。

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