エルフの女奴隷を買う。
ドナルド神父がしばらくして、聖堂に入ってきた。
「待たせたな、5万ゴールド丁度だ。
確認してくれ」と言って、ドナルド神父にお金を手渡された。
「それじゃ、行ってくる」と言って、街の入り口にある奴隷市場へと移動した。
辺りは暗くなり始めているが、魔道具の灯りでこの辺りは十分明るかった。
昼間にはいなかった、客層の人物等様々な人間が奴隷の販売店へ入っていく……。
セリナが売りに出されている、お店の店先の檻にセリナがいない。
まて、一か月は売らない約束だっただろ!!
「店長!! 店先に彼女がいないじゃないか!!」と、店に怒鳴り込んだ!!
「あははは、何をいってる。
彼女は君が買うんだろ? 買い手がつく商品をわざわざ店先におくわけがないだろ」
「それなら彼女は、無事なのか?」
「あぁ、1か月後には君が大金を持ってきてくれるんだ。
丁寧に扱わせてもらってるさ。それにな、商売人は信用が一番大切なんだよ。
こんな商売をしているからこそ、信頼を失えば私が奴隷として売られる側になるさ」
「あぁ、その件はあなたを見誤っていた。
申し訳ない……」
「いいさ、それよりどうした。
さっき帰ったと思ったら、急に現れて」
「5万ゴールド作ってきた。
彼女を買いたい」と言って、店長に5万ゴールドを渡した。
店長は、目を大きく見開くようにして驚いていた。
「まて、君は昼までは所持金がなかったじゃないか?
何故、急にこんな大金を……」
「ドナルド神父に相談して、教会に僕の絵を買ってもらった。
それの代金さ……」
「ニーチャン。アンタ、何者なんだい?」
「ただの放浪画家さ……」と、答えておいた。
奴隷商人が金額を数え終わるのをひたすら待っていた。
時間が過ぎるのが長く感じる……。
「確かに、5万ゴールド丁度あったよ。
ちょっと、まってな商品を持ってくる。
それと、この商品は犯罪者奴隷だ通常の奴隷と扱いが変わるので注意書きを持ってくる」
そういって、奴隷商人は奥の部屋に向かっていった。
……
…………
しばらくして、奴隷商人がセリナを連れてやってきた。
セリナの衣服が新しくなっていて、綺麗な服装になっていた。
「待たせたな、商品を持ってきたぞ。
奴隷の買い取りのサインと犯罪奴隷の扱いに関しての注意書きを読んでからこっちの書類にもサインしてくれ」
「あぁ、解った」と言って、買い取りのサインを行った。
そして、注意書きに目を通した。
・犯罪者奴隷は養子縁組ができない
・犯罪者奴隷が新しく起こした罪は購入者の罪となる
・犯罪者奴隷の罪がなくなる事はない、一部例外はある
「結局は、犯罪者奴隷の新しい罪は購入者の私の罪になるってことでいいのかな?」
「そうだ、だから購入者は犯罪者奴隷を誓約紋で行動を縛るのが常識だ」
「誓約紋? ふざけるな、彼女に罪はないだろ。
そんなもの、なくていい責任は俺が背負う」
「ニーチャンがそういうのなら、それでいいんだが」と言って、セリナを僕の方に寄こしてきた。
「お兄さん、いや、ご主人様、ありがとうございます」と、セリナが言った。
「ハジメでいいよ。これからよろしくね」
「いえ、ご主人様。
貴方は命の恩人です……」
「おーい、奴隷といちゃつくなら他所でやってくれ。
そこらの奥に連れ込み宿があるから、可愛がってやんな」と奴隷商人が冷やかしてきた。
「ココからは、離れようか……」
「はい、そうですね」と、セリナが答えた。
二人で歩きながら、教会へ向かった……。
「ご主人様は、お金持ちなのですか?」
「うーん、正確にいうと一時的に教会に商品を担保にお金を借りた感じになるのかな」
「よくわかりませんが、何かを売って私を買ってくれたんですね。
なんでもしますから、そばにおいてくださいね」
「なんでもか……。
絵のモデルとかもお願いしてもいいかな?」
「モデルですか?
私なんかで務まりますかね?」
「僕は、画家をしているんだよ。
だから、セリナみたいな綺麗な子をモデルに絵を描くのが大好きなんだ」
「あっ、嬉しいです」と言って、セリナが顔を赤らめた。
「一つ聞いていいかい? エルフって年齢以上に若く見えるらしいけどセリナっていくつなの?」
「私は16歳ですよ、一応成人しているので見た目はこのまま何百歳と変わらないと思います」
「僕と同じ年なのか……」
「ご主人様も同じ年なんですね。でも、ご主人様には年上の男性みたいな安心感があります」
あははは、元々は30歳だしなぁ。言いたい事は解らないではない……。
教会までの徒歩で歩き、辺りは暗くなっていたがこの街は夜中でも、[ライト]の魔法を使わなくて良いほどに魔道具の灯りで明るかった。
そして、僕たちは教会へ到着した。
教会の聖堂へと入った。
「待っていたよ、ハジメ君」とドナルド神父が言ってきた。
「本当に助かりました。ありがとうございます」と言いお礼を言った。それに続いて、セリナが頭を下げた。
「それで、ハジメ君は女性に対しての奴隷の扱いが気に食わないのかな?」
「そうですね、なんですか?
檻の中に入れられて、女性ってのはもっと華やかでいるべきだ……」
「なんか、君の考えもかなり歪んでる気もするが、女性の奴隷に対して君は反対していると考えていいのかな?」
「はい、初めて奴隷という存在を見ましたが、怒りのあまりに店に怒鳴りにいきましたよ」
「この辺りは、転生者の感性なんだろうな……」
「えっ、ご主人様は転生者なんですか?」
「あぁ、そうなんだよ。
だから、この国の常識がわからないんだ」
「エルフのお嬢さん、彼はね国の教会から[神の絵師]として認定された貴重な人材なんだよ」
「えっ!! その件、僕もしらないんですけど?」
「言ってなかったっけ?」と言って、神父がおどけて見せた。
「エルフのお嬢さん、何で君が犯罪者奴隷になったのか教えてもらえないか?」と神父が問いかけた。
セリナは、自らの生い立ちと、奴隷になった経緯を細かく僕と神父に伝えていった。
「ふ、ふざけるな!! 君は、あの村の住人なのかい?」と言って、神父は憤っていた。
「神父、何をそんなに、怒られているんです?」
「村を守るために、彼女が犠牲になった村は、彼女が奴隷に堕ちた直後に滅ぼされているよ。
君の両親は村を守るために、君を犠牲にしたというのに……」
「えっ、お父さん、お母さん……」と言って、セリナは泣き崩れていた。
「その村を亡ぼした、貴族ってどなたなんですか?」
「この街じゃ、有名なサザランドっていう性悪貴族さ……」
泣き崩れるエルフの少女を見て、僕の気持ちが決まった。
「神父、僕は絵を描ければ幸せだと思ってましたが、目標が一つできたみたいです」
「なんだい? 言ってみてくれたまえ、教会として協力できるのなら協力させてもらうよ」
「不当に奴隷にされている、女性を救いたい。
その為に、大金を稼ぐ必要がある……。
それと、そんなふざけた貴族がいるなら、その貴族を罰する側に立ちたい」
「君ならそういうと思っていたよ。
この街はな、貴族の地位でさえ金で買えるんだよ……」
「それは、どういう意味で?」
「君は絵を描けばいい、その絵の売り上げで貴族の地位を買えばいいんだよ。
成金貴族だろうが、貴族は貴族だ……教会が後ろ盾にいるのが解れば金で買った貴族でも意味があるさ」
「そして、奴隷を買えばいいということですかね?
例のアレも、いつか解禁する必要もありそうですね……」
「あぁ、アレか。
アレは、知名度を付けてそのタイミングでぶち上げればいい。
その方が効果は高いだろう……」
「神父、それとセリナの事なんですけど教会で預かっていただけないでしょうか?
彼女を冒険に連れて行くわけにもいきませんし」
「ちょっと待ってください!!」と、セリナが食い下がった。
「私が何故、奴隷にされたのかお忘れですか?
女ですけど、戦えますよ」
「あー、そういう問題じゃないんだよ。
少しばかり後ろ暗い事もやる事が出てくるだろうから、君にはそんなことはさせたくない」
「ウチの教会としては、それで構わないのだが……彼女がすごく嫌がってるぞ」
「貴族の地位を買う、それに見合う屋敷を買う、この二つが達成できるまで我慢してくれないか」と、セリナに言った。
「ご主人様が、そういわれるのなら諦めます」
「一つ理由もあるんだよ。
僕が教会で寝泊まりすると、女神様の啓示を毎回受ける羽目になるから気が休まらない。
そして、君と一緒に休むとそれはそれで、緊張して気が休まらない。
僕の持つギフトのデメリットに関しては、神父に聞いてくれればわかるから。
それがある以上、諦めてくれ……」
「ハジメ君、今日は何処で休むんだい?」
「[転送魔法]で、一度ゴレッジの村の宿屋に戻ります。
明日は朝から、こっちに来て色々探索してみようと思ってる」
「ご主人様、それなら明日は一緒に街を探索しましょう」
「あぁ、それくらいなら問題ないよ。
それじゃ、また明日」と言って、教会を出て[転送魔法]を使い、いつもの宿屋で休憩することにした。




