教会に登用される。
ダニエル神父から三週間の狩り禁止の約束の期間が過ぎた。
宿屋に関しては、あと1〜2週間程は教会で面倒を見てくれるという話になった。
まぁ、非常にありがたい話である。
今日は、神父から教会へ呼び出しを受けている為、僕は教会の前に到着している。
一週間程、教会に通い続けたので慣れた感じに教会の中へ入っていった。
教会の中の聖堂を見回し、ダニエル神父とシスターのライムさんがいるのを確認できた。
あと一人紳士風の男性がいたが、見覚えがなかった。
「こんにちわ〜〜!!」と、中にいる二人に気づいてもらうために挨拶をした。
二人がそれに気づき、僕に近づいてきた。
「やぁ、ハジメ君。
一か月間、無理いってすまなかったね。
狩りにも出たかっただろうが、君の存在をよその教会の人間に伝える前に怪我されると困ったからね」
「怪我して、絵師として使い物にならなくなったら価値ありませんものね。
その件に関しては察しますよ」と、神父に伝えておいた。
「察してくれると助かるよ」
「それに最後の一週間、ライムさんをモデルにお借りできましたし。
色々と制限が付いてたのは非常に残念でしたけど」
そういうと、ライムさんは赤くなって俯いていた。
「やっぱり、ハジメ君的にはヌードモデルもやらせたかったのかな?」と、神父は耳打ちで聞いてきた。
「そりゃ、当然でしょう。
シスターとか絵にしたら、そそりません?」と、耳打ちで神父に伝えた。
「あははは、君らしい答えだね。
今日は君に紹介したい人がいるんだよ」
「あぁ、聖堂の奥の方にいる男性の方ですかね?」
「あぁ、そうだ」
詳しい話を聞いてみると奥にいる男性は隣町の神父で、僕の描く絵を確認するために護衛を付けてここまで来たらしい。
説明を受けたあと、その男性の元に案内された。
「ハジメ君。
この人が、隣町の【スゴロクの街】で神父をしている、ドナルド神父だ」と、ドナルド神父を紹介された。
「君がハジメ君だね。
隣町の神父をしている、ドナルドだ。よろしく!!
さっそく、なんだけど君が描いたノルン様の絵を見せてもらえないだろうか?」
そういわれたので、ダニエル神父にどうしましょう……と、無言ではあるが確認を取ってみた。
ダニエル神父は無言で首を縦に頷いた。ようするに、絵を見せろって事だよな。
流石に、一枚目からエロ絵はイメージ悪いよなぁ。
一枚目は、女神像のモデルに使えそうな姿絵をダニエル神父に渡した。
姿絵を見た、ダニエル神父が感嘆の声を上げている。
「おぉぉぉ!! これは、まるで本人を見てきたように精巧にかかれているな」
いや、本人をモデルにしてるんだけどね……。
「いやはや、恐れ入ったよ。
ダニエル神父から聞いているが、君は転生者なんだってね。
その際に、大金や力や女の全てを拒否して絵を描きたいと女神に伝えたらしいね。
そのあたりの話は、この町の神父から詳しく聞かせてもらってるよ」
「えーっと、そのかわりに女神様をモデルに絵を描かせてもらったこともご存じで?」
「あぁ、今日は君の絵の力と、それが本当なのかを確かめに来たのさ」
あぁ、エロ絵を描いて不敬罪で火あぶりの計とかじゃないんだな……。
「あぁ、君が描いたもう一つのジャンルの絵も後ほど確認させてもらえるかな?
場合によっては、発禁にする必要があるからね」
「え!? そんな。
せっかくの自信作なのに、人に見てもらえないのは残念すぎます。
この前、啓示でしたっけ? あの時にあったんで、あれからノルン様の絵の枚数増やしてるんで」
「ハジメ君。
いつのまにそんなことを……」
「もう、ノルン様に関しては何十枚?
いや何百枚も描いてるんで、モデルがなくても絵を描くことができますよ」
「そうなると発禁をかけても、君という存在がいる限り。
それを防げないという事かな?」と、ドナルド神父が言ってきた。
ゲッ!! ヤブヘビか?
「いや、それはその……」と、あきらかに返答に困ってしまった。
「いやいや、君に危害を加えようということじゃないんだよ。
君は、教会の求める絵をかける才能がある。
君の才があれば女神像はより精巧になり、より一層の信仰を深めることができる。
そんな人間に害を加える等、私ら神の従者には到底できないよ」と、ドナルド神父が言った。
「ハジメ君。
今回、ドナルド神父に来てもらったのは君の腕を図ってもらう為と、それとこの国の神であるノルン様を描ける人材として、この国の教会で君を登用するためだ。
この小さな村の教会では、その判断は難しくてね。
当教会としては間違いないとは思っていたが、他所に連絡を入れてないと色々とうるさくてな、察してもらえると助かるよ」
「いえ、無理をしてもらって宿屋を取ってもらいましたんで、僕も助かりましたよ」
「それ位しておかないと、君はどうせ他所の街にいったんだろ?」
「あははは、気持ちは放浪画家ですからね。
一箇所に滞在する気にはあまりなりませんねぇ……」
「一箇所に滞在したくないか……。
中々、捕まえておくのが大変な人物みたいだな」と、ドナルド神父が言った。
「えぇ、目を離した隙に【南の森】の洞窟探索を一人でやっていたりと、期間中もヒヤヒヤさせられましたよ」
「ん? 南の森を一人で探索出来るほどの力をもっているのか君は?」
「あぁ、ドナルド神父。
私から伝え損ねていた件が一件あります。
元からあった天性の絵を描く才能だけではなく、女神ノルンにより神の贈り物を与えられております」
「こう見えても、レベル24の盗賊やってます」と、おどけたようにして言ってみた。
「この村で24だと?
レベルが高すぎないか? いや、だからこそのギフトの効果なのか」
……と言って、ドナルド神父は自分で疑問を、自問自答しつつ解決させていた。
「わかった。
ハジメ君、君は次は何処の街に行こうとしているんだい?」と、ドナルド神父が聞いてきた。
「先ほど、話に出ていた。
【南の森】を抜けた所にある街に行ってみようと思っています」
「あぁ、そこが私が担当をするスゴロクの街だ」
「すごろく? ですか?
どんな街なんですか?」
「あぁ、ギャンブルで栄えてる街でな。
そういう街なので、お世辞にも治安がいい街ではないな。
ただし、一攫千金を夢見た連中がこぞってやってくるので金は動く街さ」
「へぇ……。
そう考えると、僕でも一山当てれそうな街なんですね」
「いや、君は教会が登用するので、この国で普通に生活する分には金銭に困る事はないと思うよ」
「それでも、教会のお仕事って制限が厳しそうじゃないですか?
僕としては色んな絵が描きたいんですよ」
「わかった。
一度、君が描いたノルン様の絵を私に見せてくれ」と、ドナルド神父が言ってきた。
その言葉に反応して、ダニエル神父とライムさんも近寄ってきた。
「はい、これです」と言って、ノルン様キャストオフバージョンをドナルド神父に手渡した。
絵を一目見て、ドナルド神父は言った。
「これは、ダメだろ……」
「でも、綺麗な絵ですよね。
こんなに綺麗に描いてもらえるんなら、一度位ならモデルになってもいいかも」と、ライムさんが予想外の返答してくれた。
「男性陣の二人に言っときますけど、ヌードってだけでエロ目的と勘違いするの止めてくださいね。
あくまでも、これは芸術ですからね……。ノルン様に一目ぼれして描いた一枚がコレなんです。
僕の気持ちが一番こもってるのがこの絵なんですよ」
「そうはいっても、これはこのままは売りに出せないだろう。
こんな絵を飾った日には、暴徒が生まれるぞ間違いなく……」
「元から、このシリーズは売るつもりはないですから。
お金が急きょ必要になった時は考えるかもしれませんけど……」
「そうなのか?」
「それに、もし売ったとしても。
一枚の絵として売るんじゃなく、この一枚の絵を分割して売りましょう。
完成したら一枚の絵になるようにして売れば、教会としても言い訳が立つんじゃないですか?」
「「タシカニ……」」と、神父二名が頷いた。
「はぁ、これだから男って……」と、ライムさんが呆れてた。
ライムさんに呆れられたのを見て、気持ちを切り替えるようにしてドナルド神父が確認を取ってきた。
「君は、ノルン様の肌色多めの絵を売る予定はない。
そして、もし売る場合も何かしらの対策を打つ考えがある? コレで、大丈夫かな?」
「はい、その通りです」
「わかった。 ハジメ君、君をこの国の教会のお抱え絵師として登用します。
ノルン様を描いた絵に関しては、この国の教会で買い取りを行う」と、ドナルド神父に言われた。
「えっと、それの利点を教えてもらえますか?」
ドナルド神父に、登用される利点を教えてもらった。
・この国の教会ならどこの教会にでもノルン様の絵を卸せる。
・教会のある町や村等に対しては、教会を通して住居等の融通をしてもらえる。
・売り上げを定期的に作れるので、放浪するための資金になる。
放浪の旅をする分には利点だと思ったので、デメリットの件は聞かずに登用される件を引き受けた。
これで、逃げる作者と追いかける編集の図が出来上がったのである。
「それじゃ、一週間後に、この村を出て【スゴロクの街】に移動しようと思います。
それまでの間は、引き続きお世話になりますね」と、ダニエル神父とライムさんに言った。




