ギルドからの依頼。
コンコンコン。
ん? 僕は昨日の夜間は絵を描きながら寝ていたみたいだ。
ベッドに入らず寝落ちしていた。
ノックがあったのは気のせいか?
再びノックの音が聞こえてくる……。
コンコンコン……。
「あー、はいはい。
どちら様ですか?」
「ギルドの使いの人間です。
ご依頼をされている仕事の依頼主が決まりましたので連絡に来ました」
「おっ、そうなんだ。
扉の鍵開けるから、ちょっと待っててね」と言って、扉を開けた。
「おはようございます。
入ってください」
「はい、それでは失礼します。
今回、ご依頼をかけてくれたお店が二店舗あります。
1店舗目は、この村の金物屋さんの看板を描いてほしいという依頼です。
2店舗目は、この村の飲食店さんメニュー表を作って欲しいという依頼になります。
どちらも、400ゴールドでお願いしたいとの事でした」
「えっと、依頼をかけたのが僕なんで手数料が発生しますかね?」
「二店舗には500ゴールド頂ただく予定ですので、その内の400ゴールドをサトウさんにはお支払いします」
「なるほどね。
解りました。いつから作業始めたらいいのかな?」
「なるべく早い方がいいとのことでしたので、今日からでも大丈夫だと思います」と、ギルドスタッフが言った。
「わかりました。
両店舗共に、今日中に挨拶しに行きますね」
「依頼書を渡しますので、確認してから現地に移動してくださいね」と言って、依頼書を手渡された。
「あっ、ドーモ」
「それでは失礼します」と言って、ギルドスタッフは部屋から出て行った。
ギルドの依頼書の確認すると、先程言われた通りの内容で、詳しい説明は現地で確認して下さいと注記があった。
そしたら、金物屋に行ってみるかな。
宿屋の店主に挨拶をした後、金物屋へ徒歩で移動した。
歩いてる最中に、空を見上げると朝早い感じはなく陽がのぼりきっているため、すでに昼に近い事に気づいた。
飲食店に昼飯時に仕事をしに行く事になると印象が悪くなるので、金物屋を仕事先に選んで正解だったな。
そんなことを考えながら歩いていると、目的地の金物屋へ到着した。
お店は開店していたので、お店に入ることにした。
「こんにちわ〜。
看板製作のギルドの依頼を受けてきました」
「おっ、この前の寸胴鍋のお客さんじゃないか。
お客さんが腕利きの画家ってヤツなのかい?」
「腕利きかどうかはわかりませんが、この村で何回かお仕事をさせていただいてますよ。
ギルドに2枚と、教会と道具屋と宿屋に1枚ずつ絵をお渡ししてますね」
「ギルドの絵と道具屋の絵はすでに見ているよ。
その絵を見て即決したのさ……」
「そうなんですね〜。
それで、金物屋さんの看板って話を聞いてますけどどれくらいのサイズなんですか?」
「看板といっても、入り口のそばに置いてあっただろ?」
「すいません、気づきませんでした」
「あぁ、解らないのも仕方ないさ。
もう、看板の塗料が剥げてしまってるから真っ白な板だからな」と言って、金物屋はお店を出て看板を持ってきた。
そして、真っ白になった看板を手渡された。
「本当に真っ白ですね。
これじゃ何のお店かわかんないですね」
「まぁ、人通りから離れてるし常連しか来ないからなぁ。
ウチの店は、今までそれが原因で放置してたんだよ」
「そうなんですね。
そしたら、どんなイメージの看板にしましょうか?」
そこから、金物屋の店主から看板のイメージを聞いて紙に下書きをしていき店主に手渡した。
「こんな感じですかね?」
「あぁ、そうそう。
こんな感じで頼むよ」
「それでしたら、この看板預かっていいですか?」
「あぁ、構わないよ」
「そしたら、この看板お預かりしますね。
それじゃ、2〜3日あれば完成すると思います急ぎの用事とかあったりしますか?」
「いや、2〜3日で完成させてくれるのなら。
それで問題ないよ」
こんな感じに、金物屋さんとの契約は済んだ。
次は、この村の飲食店へ移動することにした。
金物屋で契約をしていたので、お昼時からは外れたこともあり。お店の中には僕だけがいる状態になっていた。
誰もいなかったので、「すいませーん」と、声を上げた。
「はいはい、いらっしゃい」と、元気よく飲食店の店員が現れた。
「あれ、お客さん。
昨日、ギルド長と食事に来た人だよね?」
「えっ、見てたんですか?」
「いや、堅物のギルド長が男連れて飲食店とか珍しい事もあったからね。
従業員がざわついてたから、私も見てたんだよ」
「あははは、その件はとりあえず置いときましょう。
ギルドからご依頼を受けてきました」と言って、ギルドの依頼書を見せた。
「おっ、お客さんがメニュー表を作ってくれるのかい?」
「はい、ご依頼がメニュー表の作成でしたので、店長さんがどんな感じにメニュー表を作りたいのか聞いてからメニュー表作る予定です。
それと、スイマセンが今使われてるメニュー表を見せて貰っていいですか?」
「それなら、テーブルにあるやつだよ」
目の前のテーブルにある、メニュー表を確認した。
紙製で製本はされていない。
大きな一枚の用紙に、表面のみに複数の商品名と金額だけが手書きで描かれている。
「すいません。資料としてこのメニュー表頂いてもよろしいでしょうか?
商品名と金額は据え置きですよね?」
「あぁ、そういうことなら構わないよ」
「文字だけだとイメージが付きにくいですよね……。
せっかく、僕が作るんだし。料理のイラストなんかも載せちゃいません?」
「しかし、このテーブル分すべて書くとなると大変なんじゃ?」
「まぁまぁ、そこは何とかしますから気にしないでください。
それで、店長さんにお願いしたい事がありまして」
「なんだ? 言ってみろ」
「メニューのリストのイラストを描きたいので、全部の料理を作ってくれませんか?
イラストなんで、それほどこだわり過ぎずにかけるんで時間かかりませんし。
店長が料理を作ったら、僕が絵を描きます。
あっ、それだとせっかく作ってもらった料理がもったいないな……」
「料理を作る分には構わないが、試しに一枚描いてみてくれよ」
「何を描きましょうか?」
「ちょっと、待ってな。私が食べようとしていた賄いがあるんだよ」と言って、厨房に店長は入っていった。
[アートボックス]で、大き目の用紙を取り出して絵を描く準備を始めた。
「持ってきたぞ!! って、もう絵を描く準備をしてるのか」
「はい、そこのテーブルにおいてくださいね」
多少、デフォルメをかけて鉛筆を使いイラストをあっさりと描き上げた。
「はい、出来上がりです。
着色は店が汚れるので下書きだけですけど、イメージは湧くのでは?」
「おぉぉ、早いなぁ……」
「文字だけより、こんな感じに絵があった方がイメージ湧きやすいでしょ?」
「確かにそうだな。
夕方の営業のあと料理を作るから端の席で、しばらく待っておいてくれないか?」
「あぁ、かまいませんよ」
「そうか、それなら飯でも出すんで食っていってくれや」
「飯で思い出しました。
絵を描く為に作った料理なんですけど、食器とセットで僕にいただけませんかね?
食器は、食べ終わったら返しますんで……」
「ん? 何を言ってるんだ?」と、店長は困惑していた。
「あぁ、スイマセン。
マジックバックを持ってるんで、それに入れておこうと思いまして」
「あぁ、なるほどな。
人がいるところにもっていって皆と別ければ、食材が無駄にならないものな。
あぁ、そういう事なら構わないよ」
……と、勝手に解釈してくれたみたいだ。
内心としては、[アイテムボックス]の機能を使えば、賞味期限を気にしなくていいので食費が浮いてラッキー程度の考えだったのだが。
まぁ、そういうことにしておいた方が美談っぽいから、そういうことにしておこう。
「それじゃ、あそこの端の席に座って待ってますんで、おなかすいてるんで何か料理を持ってきてもらっていいですか。
料理を食べながら時間潰してますんで……」
夕方の営業が終わるまで端の席で料理を食べながら待つことにした。
……
…………
そして、夕方の営業が終わり。
店長に次々と料理を作って貰い、料理のスケッチと食費を浮かす2段構えの作戦を行い、その日の作業は全て終わった。
本日の投稿は3話投稿になります。
14話 7:00
15話 12:00~13:00 の間
16話 17:00~18:00 の間 ※イマココ
の3話投稿です。




