表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

屋上

作者: 守田にか

私は屋上に憧れていた。TVアニメやマンガが好きな私は屋上に憧れた。青春マンガや恋愛マンガには殆どのものに屋上というステージがある。

けど、現実はそんな物じゃない。世間は屋上は危ないからと言って屋上は基本立ち入り禁止だ。私も思う時は思う。でも1度でいいから屋上に入りたい。ずっとそう思っていた。


ある日クラスメイトが私に言った。

「屋上行ってみたら?見つからない上履きがあるかもよ」

周りの人達がクスクスと笑う。私は何も言わずに教室をでた。ひんやり冷たい廊下を靴下で歩く。

 朝、学校に登校して下駄箱を確認すると上履きが見あたらなかった。これで何回目かはわからない。数えるのが面倒になっていた。

 いつからだろう、いじめにあい始めたのは。唐突始まったいじめ。きっかけはわからない。そんなの今更どうでもいい、そんなのがわかったっていじめは終わらない。誰も助けてくれない。見て見ぬふりの人もいれば、一緒に笑ってるひともいる。最初は嫌だ、やめてと声を出した。でもそんなのでやめてくれるはずもなく、そのうち声を出す気力もなくなって一ヶ月ほどたった。

 屋上に続く階段を上る。

 屋上。ずっと憧れていた場所にこんな形で向かうことになるとは思わなかった。あの人たちが言っていた通り屋上の入り口の前に上履きがあった。刃物か何かで切りつけられていて使い物になりそうにないが。

 ふと扉を見る。両扉の取っ手に鎖が巻かれ南京錠で止められているが、何年も前につけたのか錆び付いて物をぶつければ壊れそうだ。周りを見渡すと壊れた椅子が転がっていた。壊れた椅子を握りしめ、力を込めて南京錠に椅子をぶつけると金属同士がぶつかる音が響き、鍵が壊れた。取っ手を握りしめ考える。

 昔から屋上は危ないって言われてきた。それは事件が多いから。昔の私は何であんな素敵なところで事件が起きるんだろうなんて考えていたことがあった。けど、今ならわかる。誰もいなくて邪魔されない場所。何をしたって何も言われない。一線を越えるのも今ならわかる。

 「ここを開けば…」

 この苦しみから解放される?私ばかり辛い思いをするなんてたくさん!

 力をこめて扉を押し開けた。すると強い風が外から吹き、大きな空が広がった。

 空を見たら涙が流れた。

空ってこんな大きかったっけ…空ってこんなに青かったっけ。

大きな空にちっぽけな私。こんなに空が世界が広いのに私だけがイジメにあってる訳がない。私より酷いイジメを受けてる人がいるかもしれない。それなのに私だけ挫けるなんて情けない。

とても大きな話だが、その時の私には十分な考えだった

「よしっ」

私は大きな声を出して屋上を出ていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ