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FallProbability ~落ちる確率~  作者: 戸塚たかね
FallProbabilityⅠ~落ちる確率~
4/14

 青い空に、残るは4機。

 血のように赤い機体。夜のように黒い機体。監視者のようにたたずむ機体。そして、死を運ぶミサイルに追われる、ダークブルーの機体。

 右のフラップを破損しながらも、ダークブルーの機体はいまだ飛ぶ。

 その飛行にはまだ、諦めの意識は無いようにも思えた。

 赤い機体が、それを馬鹿にするかのようにはるか遠くで宙返りをした。

 赤い機体が、ろくに狙いもつけずに何発かの銃弾を吐き出した。当然、当たるはずがない。

 赤い機体が、また宙返りをした。

 赤い機体が。

 赤い機体が。

 赤い機体が。

 ――――赤い機体が、ダークブルーの機体を馬鹿にする。

 最初は少しの亀裂しか入ってなかったフラップが、今はもう3分の2以上剥がれ落ちている。

 翼に傷を負った戦闘機は、おそらく自分の寿命を知っていた。

だから負けじと空を飛ぶ。エンジンとラダーと残ったフラップに任せて空を飛ぶ。

 赤い機体はまだ馬鹿にしたようにアクロバットをしている。

 そこで、油断が生まれた。

 赤い機体は、ダークブルーのシルエットが近づいていたことに気が付かなかったのだ。

 もう、右翼を使って機体を右に傾けることは出来ない。

 ダークブルーの戦闘機は、右の車輪を出し、その反動を利用して機体を右に傾けた。

 そうすることによって、目の前に迫った赤い戦闘機を避けたのだ。

 空気が張り詰めた気がした。

 ミサイルがダークブルーの機体を追う。

 赤い機体がその間に割り込んでしまう。

 ミサイルは、止まりはしない。

 赤い機体の尾翼にミサイルの弾頭が触れた。

 そして爆発する。

 その爆発は、重圧感のある轟音を撒き散らし、この上ない爆風をもたらす。

 その爆風に乗ってダークブルーの機体はさらに加速する。

 身体がバラバラになってもいいというかのように、エンジンをふかす。

 目の前に、深緑の機体。

 もう、機銃は使わない。

 ダークブルーの戦闘機は、自身を深緑の機体にぶつけた。

 再び轟音が響き、黒と赤の閃光が散る。

 その光景はどこか美しいと思わせる何かがあったのかもしれない。





 彼の機体のどこかに相手の機体のどこかが触れた。

 不思議なことに、存外安らかな気持ちで彼はその時を迎えることが出来た。

 そして、何を考えるまもなく、彼の意識はそこでブラックアウトしたのだった。





「一緒に、祝杯を挙げようって言ったのに…」

 落ち着いた声の男は、感情のこもらない声で呆然と言った。

 男は、考えなしには落ちなかった彼を、偉いと思った。

 ただ、落ちるのではなく、あの赤い戦闘機と、ミサイルを投下した中型機を巻き添えにしたのだ。

 そのおかげで、男は助かった。

 でも、落ちてしまっては、英雄もへったくれもない。名誉なんて関係ない。

 死んだらそこで終わりなのだ。

「一緒に祝杯を挙げようって約束したのにっ…」

 嗚咽をかみ締め、男は再び言った。

 その、果てなく青い空にただ一機残ったのは、真っ黒な戦闘機だけだった。


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