2012.1.17 【自分は自分、他人は他人】その四 《おっさんとAA》
入院当時は神経質になっていたのでカラオケ大会をこき下ろしていますが、
長期入院患者にとっては大切な娯楽の一つです。
文中で精神患者と書いているのは長期入院している統合失調症の人たちのことです。
アルコール依存症が入院する開放病棟にいる鬱病、躁鬱病の患者は短期入院の人たちばかりです。
入院患者は医療のコントロール下にあるので、世間で思われているよりずっと安全です。
気持ち悪かったり不気味に感じたりするだけで、危害は加えられません。
危険なのは病識もなく野放しになっている連中です。
被害妄想でいろいろやらかしてくれます。
一八時三〇分
アルコール患者はこれからA.A.(アルコールアノニマス)のミーティングだそうな。自分は宗教的なものにアレルギー反応が出てしまうこと、過去にA.A.のミーティングに参加して、
「これだけひどい人がいるなら、おれは大丈夫だろう。飲んじゃえ」
と、酒を飲んでしまった過去があるため、A.A.は拒否しますと看護師のAさんに言ってみたらあっさりとOKが出た。断酒会の院内例会で「断酒会に戻ります」と宣言したこと、入院プログラムの一環であるグループミーティングで断酒会に戻る決心をしたと話をしたのが良かったらしい。
夕方、Y(1)看護師が巡回してきた時に
「あ、○○さんは断酒会につながったからでなくても大丈夫ね」
といってくれた。準夜勤のY(2)看護師にきちんと申し送りをしていてくれて安心した。
キリスト教徒ならともかく、バリバリの日本人でごちゃ混ぜの宗教観つーか八百万の神様って感じてるおれには、あのハイヤーパワーってのがどうもうさんくさく感じてしょうがない。あと、断酒例会は最初に断酒誓約と断酒の誓いこそするが、そこには宗教的な臭いも政治的な臭いも一切なく、数多くいる会員の体験から導かれたものである、と思う。
ところがAAはハイヤーパワーとか言って神様の力を借りて酒をやめようとか言っている。おれの感覚では
「見てるだけの神様にすがって酒をやめられたら苦労はねーや」
というところだ。あと、「初回翻訳原理主義」みたいなところにも違和感を感じる。英語の原文も読んでみたけど、不自然な日本語が多すぎるのに翻訳をし直そうとしないのもなんだか気持ち悪い。思考停止しているんじゃないの?
以上のことから、自分には断酒会の方が性に合っていて、AAとは合わないという結論に達した。
一八時五〇分
AAのメッセージをやっているから頻繁に部屋を出入りするわけにも行かないので、今日の出来事と雑感でも書き散らかしてみるとしよう。
午前中は、朝にいつも記録している前夜の睡眠状況から始まって、気にくわない奴に対する悪口雑言でストレス解消。
朝食後は特にやることもなく過ごす。九時〇〇分になって喫煙タイム。
タバコを吸って、一服つけてからグループミーティングに参加。
終了後、また喫煙して「アルコールは敵だ」のスローガンが固まったのでノートに記し、さらに何回も読み直して推敲を重ねてとりあえず完成形とした。あまりいじくりまわしていると言葉遊びになって自分の言葉によって油断が生じてしまう。
昼食後は一服しながら次のステップは何だろうと考えていた。
K君と病院敷地北側の外周を回りながら考えついたのは
「今後はどうやってこのモチベーションを維持していくか」
と言うことだった。
午後はみんな下手くそなカラオケ大会騒音の中、入院してから考えたことをまとめてみた。入院生活について、精神及びアルコール患者に対する考え方と対応方法。今回の入院の目的。アルコールに対する認識の変化。今後、アルコールにどう対処していくか。モチベーション維持方法を模索していくこと。
今回の入院が自分にとってのラストチャンスであること。アルコールに対しては完全に縁を切り、戦いにおいては油断せずに事に当たることなどを書いていた。
前頁に書いたことをノートに記録した後もホールではカラオケは続いていたので、K君と少々雑談。雑談からヒントを得て今後の課題を考えついたのでそれを記録。
あと、自分には断酒三本柱が絶対に必要でアルという認識に至ったことを記録した。そのあと、今回の入院はどのような思考・認識・行動パターンをとっているかを過去の入院時と比較した。
一九時三〇分
やっとAAが終わった。たった一時間なのに、院内例会の二時間よりも長く感じる。
メッセージだかなんだか知らねーけど、ひとりでぐだぐだとくだらないことをよくもまあ一時間もしゃべれるものだ。AAのメンバーの自己満足にしか思えない。だからAAは大嫌いなんだよ。




