空は青く、
「何だ、青いじゃん…。」
教室のドアを開くのも今日が最後。
3年前の4月。
私は、これから始まる未来に胸弾ませこの場所に立っていたんだ。
私の瞳に映るものすべてがキラキラと輝いていたの。
今の私はあの日の私が見ていた未来に、ちゃんと立てているかな…。
──3年前の春。
「空は今日も青いね〜!!」
私は小さいころからよく思うことがあった。
「…何それ?(笑)」
「だからね、空は私のことが好きなの。」
そう、あの大きな空は、もしかして私のことが好きなんじゃないかって。
そう思うことがあるの。
そんなくだらない私の話を君はいつも楽しそうに、優しく笑いながら聞いてくれたんだ。
「だって私が嬉しいと空もきれいに晴れてるし、私が悲しい時はいつも雨なの。だからね、自分の気持ちが分からなくなったりしたら、逆に空を見て私が教えてもらうくらい♪」
「雨降りそうな空だな。今日の体育は体育館に変更ね!」
先生の言葉どおり、雨が降り出した。
今でもはっきり覚えてる。
あの日は、夏だというのに冷たい雨が降り注いだんだ。
──2年生の夏。
降り注ぐ冷たい雨の中…。
「ごめん…。」
ちょうどその頃テレビでやってたドラマのヒロインみたいで、頭がぐちゃぐちゃになりそうになった。
冷たい雨の中、一度も振り返ることなく去っていく君の背中をずっと…ただ見ていた。
ドラマでは、しだいに空は青くなっていって、ヒロインは最後に抱きしめられるのにな…。
現実は、空は晴れてはくれなかった。
──去年の春。
相変わらず曇り空。
「ねぇ、空。空はもう私のこと、嫌いになったのかな…。」
ポツっと、空の涙が一粒落ちてはじけた。
「最近天気悪いね。空は元気でもないのかな?」
空はきっともう晴れないよ。
空はもう青くは晴れてくれない。
「入りなよ。濡れちゃうよ…。」
君は傘を差してくれた。
水色の綺麗な色の傘だったんだ。
「上向いてみて!」
「……。」
「…こうしたら空、青いよ。空は青い。きっと青くなるよ。」
強い瞳の君を、
やっぱり好きだと、
優しい君のことを、
好きになれて本当に良かったと、
そしてもう一度青い空を見たいと、
私は優しい雨の下、思ったの。
──青春の最後の日。
「卒業生、起立!礼。」
桜の花びらがひらひらと舞う。
ふわふわと舞い上がっていく桜を瞳で追う。
あ…。
「何だ、青いじゃん…。」
もう空は、泣いてはいなかった。
「ありがとう。」
「ありがと。」
やっぱり空は、青かった。
空は青く、未来は眩しい。