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しばらくすると、複数の人の足音が聞こえてきた。2人、3人......いや、もっと多いはず。

その足音はこの部屋の近くまで来ると急に静かになった。それと同時にドアの近くにいた坂本さんがドアノブに手を掛ける。

ゆっくりと、静かに。

開けられたドアの前にいたのは男の人だった。

スラリとした体。鋭い目。綺麗な顔。

そのパーツに似合う仕立てのいいスーツ。

何もかもが完璧な人が居た。

男の人は長い足を前に出し、近づいてくる。

そして、両親の前に置かれた椅子に座り、長い足を組んだ。その男に近づき、書類を渡した坂本さんは私の隣に立って黙っている。

ゆっくりと、沈黙が流れていく。

すると、男の人は書類から目を離し、話し始めた。

「初めまして。東城金融社長の篠原隼也です。あなた方、お2人で1000万円分借りていますね。そして返済期限は3日前......。まだ返済されていない、と......。」

2人をジロりと睨みつけ、机の上に書類を投げつける。その瞬間2人の体は跳ね上がった。

「で?いつ返すんですか?」

彼は静かに告げると、私をチラリと見た。

「娘が居るからそいつに返済させるってあんたら言ってたよな?てめーらの娘まだ高校生だぞ?風俗にでも沈めるつもりか?あ"?」

彼は机の脚を蹴りあげ、声を荒らげる。

「坂本に迎に行かせりゃ高校だし......。笑っちまうなぁ。お二人さんよ。」

彼は静かに立ち上がり父の頭を掴む。

2人は涙を流しながら静かに息を切らし、父は呻き声をあげた。そして切迫詰まったような声で、

「た、助けてくれっ......。俺らはただ少し遊んだだけで......!返済なら娘に任せていいだろ......!身内だぞ!遅れた分も娘でいい!利息も思い切り付ければいい!とっ、とりあえずまず俺らを開放してくれ!!」

父がそう言うと男は痺れを切らしたように

「黙れ」

そう言って顔を一発殴った。

何かが潰れるような、折れるような、複雑な音が響く。その時点で父は気絶していた。

母は涙を流し、震え続けていた。

そして男は静かに、はっきりと、坂本さんに

「処分しろ」

そう伝えた。


私はただ黙り込んで、目を閉じていた。

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