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「え?」
私が動揺していると、キリッとした目を和らげて言った。
「初めまして。いきなりで驚いたでしょう。」
彼はそう言うと、離さないとばかりに視線を合わせてくる。
「私の名前は坂本潤です。とある会社の社長秘書をしております。突然なんですが、橘さんにお話しがあってきました。」
笑っていた顔を元に戻し、困ったような顔をする。大人の女性が好みそうな香水を身にまとい、一歩私に近づきながら私の様子を伺ってくる。そして、
「立ち話は嫌でしょう。車へどうぞ。」
彼は静かに車のドアを開けて、中へ入るように促した。
その優雅な立ち振る舞いとは裏腹に、目では力強く、私に強制しているようだった。