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冬の日に…

 この作品は、「小説家になろう〜秘密基地〜」掲示板の「即興小説を書こう!」スレッドから生まれました。全ての著作権は作者様に属します。


 今回の参加者さま

■マグロ頭さま(W6336A)

■AKIRAさま(W7052A)

■yoshinaさま(W6246A)

■更紗ありさ様(W3245A)

■影之兎チャモさま(W6270A)

■松原志央さま(W5773A)

■ともゆき様(S0003A)

■和成創一さま(W8588A)

■ゆうな様(W4620A)

 作者名は各作品の冒頭に設置されています。


 今回はテーマごとに作品をまとめました。この章のテーマは「冬の日に…」。

 季節によって、物語は形を変えます。春には春のドラマが、夏には夏のドラマが、秋には秋のドラマが、そして、冬には冬のドラマが……。

マグロ頭

「雑巾」「腹」「チケット」


 彼女から何かを貰った。いや、押し付けられた。

 夕暮れ時、幼馴染みの彼女を見つけた。声をかけたら、鼻っ面に何かを投げつけられた。驚いた僕を尻目に彼女はそそくさと立ち去っていく。

「何なんだよ……」


「何なんだろ……」

 投げつけられた物の前に座り込んで、外で呟いた言葉と一文字違いの言葉を呟いてしまった。そんなに大きくないそれには、とっくに過ぎてしまったクリスマスの包装がしてある。

 何時準備したのだろうか。

 とにかく開けてみる。中にあったのは……

「雑巾?」

 それも使い古された年代物。妙に味がある。でも、何故に雑巾?

 雑巾の中から手紙が出てきた。直筆の手紙を手にとる。

『メリークリスマス。直人は風邪引きやすいからプレゼントです。あんまりうまく出来なかったけど、一生懸命作りました。これでお腹を冷やさない様にしてください』

 な、なんと!

 この雑巾は腹巻きだった。裁縫が死ぬほど嫌いな彼女が苦心のすえに完成させたのだろう。暖かな気持が僕を満たす。

 そうだ、今度遊園地のチケットを送ろう。

 雑巾……いや、腹巻きをぎゅっと握って、そう決心した。


*******


AKIRA

「お菓子」「城」「季節外れ」


 昔、ある国にある猟師がいました。


「やばいなぁ…。もうすぐ日が暮れちまう。その前にこの山を降りないとな」

 山に遭難してどの位の時間がたったのだろうか。いつも猟で慣れているとふんで、荷物をかなり少なく持って山に入ったのだが、いつの間にか獣道に入ってしまったのか、どこにいるのか分からなくなってしまった。

 しばらく歩き続けていると、前に建物らしき物が見えた。

「やった!助かった!」

 駆け寄って行くと猟師は立ち止まった。

「なんだこりゃ?」

 その建物はお菓子で出来たお城でした。

 周りは雪の様なかき氷、上にはアイスとプリン、そして果物やクリームでデコレーションされている。

「すごいな。初めて見たぜ」

 しばらく見とれていた猟師が口を開く。




「でも、どう考えても季節外れだよな…」


 それはある冬の物語。


*******

松原志央

「鍵」「ライブ」「色彩」


「よーりっ。早く行くよぉ?」


「しぃちゃんってば待ってよう」


 普通、こんなにうるさかったら怒る兄も今日は何も言わずに私を見送ってくれる。

 兄も初めての時はワクワクしたものだ、と語っていた。だからかは知らないけど、今日の兄はちょっぴり優しかった。


「じゃあ、頼もう行くね?」


「あぁ。気を付けて行ってきな。あと、これ」


「あ。忘れるところだった!ありがとう、お兄ちゃん!」


 渡されたのは家の鍵。兄は私を優しく見ながらこう言った。


「いいってことよ。初ライブは誰だってワクワクするもんだからな。……でも浮かれ過ぎて事故ったりするなよ?」


「うん!」


 私は、色彩多き賑やかな街を、親友の詩織と一緒にコンサートホールまで歩いていった。

 私は初ライブへの期待とちょっぴり優しかった兄に上機嫌だ。


*******

ゆうな

「パソコン」「リップクリーム」「ベランダ」


 寒い日が続く。

 私は暖かい部屋の中で、パソコンにしがみついていた。

 冬なんて大っ嫌い。寒くて露出は出来ないし、うなじも見せられないし。真っ赤な唇は青くなるし、乾燥してがさがさになるし。せっかくの私の美が全て台無し。

 リップクリームをたっぷりと塗りながら、私はキーボードを弾く。

 『お昼ご飯買ってきて』

 返事はすぐに返ってきた。

 『またー!?たまには外出なよ』

 瞬時に返す。

 『嫌。お腹すいたの!早く。あたしをコロす気!?』

 『…分かったよ、もう。すぐに行くから』

 『ついでに飲み物もね〜早急に!』

 それだけ返すと、パソコンを閉じ、鼻唄まじりに化粧をする。

 そうこうしているうちに、外でバイクが止まる聞き慣れた音がした。ぱっと立ち上がり急いでベランダに出ると、両手にスーパーの袋を持った彼が、雪空の下、寒そうに立っていた。

 自然と顔が緩む。北風も雪も、今は全く気にならない。


 私をこんなにも寒がりにしたのはきっと、本当は毎日でも君に来て欲しい、アマノジャクな私の女心。

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