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君だけは幸せに、なってね。

作者: 中百舌鳥 愛音
掲載日:2026/03/08

瞼の重い朝、

胸の底に沈殿した憂い。


カーテン越しの光が

机のペットボトルを透かしている。


昨夜の騒ぎは

もう潮にさらわれたらしい。


花瓶みたいに飾っていた心も

ひび割れて、

残像だけ残して消えた。


空を切った衝動は

どこにも届かないまま

灰になった。


鈍い世界の中で

胸の奥だけが

やけに騒がしい。


コップの縁から

炭酸がひとつ、こぼれる。


誰が誰だったのか

朝になると

もう曖昧だ。


耳の奥で

なにかが囁く。


やめろ、と。


それでも僕は

惰性のまま

今日を選ぶ。


耳は意地悪で、

失敗ばかり

よく拾う。


自分の価値だけ

いつも小さく測ってしまう。


正しさは

たいてい

残酷な顔をしている。


ぐるぐる回る

自己嫌悪の底で、


終わり方だけ

まだ分からない。


繰り返さないでくれと

願いながら、


同じ日を

また始めてしまう。


笑えないほど

好きになってしまったものが

あるから。


世界は嫌いだけど、


君のことだけは

嫌いじゃない。


だから


君だけは


幸せに


なってね。










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