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追放された万能補助師、辺境で気ままにスローライフしてたら、なぜか英雄も聖女も集まってきました〜気付けば最強国家の王様扱いです〜  作者: 妙原奇天


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第8話 辺境へ、新たな仲間

 王都を発つ朝は、思ったより静かだった。

 修繕の槌音はまだ響いているが、昨日よりも軽やかだ。市民が互いに声を掛け合い、子どもたちが小さな荷を運ぶ。瓦礫に花を挿す女たちの姿もあった。


 俺は城門前で荷を整える。符束と薬草、乾いたパンと干し肉。ノコは尻尾を振りながら俺の足元をぐるぐる回る。


「出ていくのか」

 背後から声がした。レオンだった。鎧は手入れされ、顔に疲労は残るが、瞳は以前より澄んでいた。


「俺には椅子はいらない。必要なのは布と針だ。次は辺境を縫う」


 レオンは拳を握りしめ、短く頷いた。「必ず追いつく。俺も」


 昔の彼なら虚勢だったろう。だが今の声は、仲間の誓いに近い。

 俺は返事をせず、ただ頷いて門をくぐった。



 北西の街道を進む。

 道は森と丘を抜け、やがて湿地へ入る。瘴気はないが、獣の気配が濃い。


「辺境は危険が多い。あなた一人で……」

 リュミナが不安そうに言った。


「一人じゃない。ノコがいる」

 犬が吠えると、リュミナは少し笑った。


「それでも……私も行く。癒やし手の役目は戦場だけじゃない。旅もまた、人を癒やす」


 彼女の声に、迷いはなかった。

 俺は肯いた。「好きにしろ。だが、危険は多いぞ」


「補助師に比べれば、癒やし手も地味でしょう?」

 冗談を返す彼女の目が、どこか強い光を帯びていた。



 二日目の夜。焚き火の光の中、ひとりの男が現れた。

 背に大きな荷を負い、頭巾を被った旅人。年は俺より若そうだ。


「怪しい者ではありません!」

 慌てて両手を広げる。「学舎を追われた見習いです。行く先もなく……どうか、一晩だけ」


 焚き火の影に照らされた顔は、真っ直ぐな瞳をしていた。

 リュミナが首を傾げる。「学舎を?」


「魔導学院です。僕は……術式を作るのが得意でした。でも、派手な魔法を撃てない。先生たちには“使えない子”と言われて……」


 その言葉に、俺は苦笑した。

 またか。どこにでもいる。派手さに隠れて見えない“縫い手”の存在を、誰も知らない。


「名は?」


「カイルと申します」


「俺はアレン。補助師だ」


 一瞬、彼の目が輝いた。


「補助師……! 噂は聞いたことがあります。縁の下の魔導士、影の糸を扱う者……本当にいたなんて!」


 リュミナが笑う。「噂より実物はもっと地味よ」


 俺は肩を竦めた。「行き先は辺境だ。厳しい旅になる」


「お願いします。僕を連れていってください! 必ず役に立ちます!」


 その声は真剣だった。

 ノコが近づいて匂いを嗅ぎ、尻尾を振った。犬は正直だ。


「……いいだろう。ただし条件がある」


「はい!」


「自分の術を誇るな。仲間を誇れ。できるか?」


 カイルは力強く頷いた。



 三人と一匹の旅が始まった。

 夜明けの道を歩きながら、俺は空を見上げる。

 十二柱の影はまだ遠い。だが、仲間は増えた。

 糸は少しずつ、強くなる。


(のんびり暮らすために――俺はまた縫い始める)


 森の奥で、次の舞台が待っていた。

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