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追放された万能補助師、辺境で気ままにスローライフしてたら、なぜか英雄も聖女も集まってきました〜気付けば最強国家の王様扱いです〜  作者: 妙原奇天


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第27話 第二楽章・影の合唱

 嵐が鎮まった直後、広間に不気味な静けさが落ちた。

 だが、それは安堵の間ではなく――嵐の後に訪れる“合唱”の予兆だった。


 壁一面に刻まれた譜面が光を帯び、影人たちが一斉に立ち上がる。

 その数は、百でも千でも数えきれない。

 顔なき影が仮面を持ち上げ、口のないはずの顔から声を発した。


 ――合唱。


 低い声、高い声、嗄れた声、澄んだ声。

 すべてが混ざり合い、広間全体を揺らす重低音の海へと変わっていく。


「これが……“影の合唱”……!」

 リュミナの顔が蒼白に染まる。

「世界中の声を模倣している……!」


 カイルが符を掲げ、必死に耳を塞いだ。

「アレンさん! このままじゃ、僕らの声が掻き消されます!」


 セイルが剣を構える。

「声を奪われれば、縫うことすらできん。ここが正念場だ」



 調律師の杖が宙を薙ぐと、合唱がさらに強まった。

 影人たちの足元から譜面が浮かび上がり、波のように押し寄せてくる。

 声の奔流。

 音に呑まれた者はそのまま影の一部になる。


「止める……!」

 俺は血で符を刻み、叫んだ。

「《補環・共鳴縫合レゾナンス・ステッチ》!」


 仲間の声を束ね、糸で広間全体を縫い上げる。

 だが、圧倒的な数の声が押し寄せ、糸はすぐに震え始めた。


(このままじゃ、俺たちの声が負ける……!)



 その時、ノコが吠えた。

 ただの獣の声――けれど、その響きは広間にいる誰よりも強く真っ直ぐだった。


 リュミナが目を見開く。

「そうか……声は人だけじゃない。

 生きているすべての存在が、旋律を持っている!」


 俺は頷き、ノコの声を糸に重ねた。

「そうだ……人の祈り、符の力、影の抗い、獣の叫び――全部を束ねる!」


 カイルが符を差し出し、セイルが影を注ぎ、リュミナが祈りを重ねる。

 俺は血で巨大な印を刻み、声を張り上げた。


「――《補環・大合唱縫合グランド・コーラス・ステッチ》!」


 光と影と祈りと吠え声が一つに編み込まれ、広間を覆った。

 影人たちの声が次々と乱れ、合唱の波が軋む。


「なに……!」

 調律師の仮面が揺らぐ。

「影の合唱を……縫い変えた……だと……?」



 広間に新しい合唱が響いた。

 それは影の嘆きではなく、人と獣と影を縫い合わせた調和の旋律だった。

 壁の譜面がひび割れ、仮面の記譜士たちが次々と崩れ落ちる。


 だが、調律師はまだ立っていた。

 杖を高く掲げ、仮面の奥から低く告げる。


「よかろう……ならば“第三楽章”に移ろう」


 天蓋が裂け、宮廷全体が震えた。

 影の都の鼓動が、より大きく鳴り響く。


 戦いは、ついに最終局面へ向かおうとしていた。

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