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追放された万能補助師、辺境で気ままにスローライフしてたら、なぜか英雄も聖女も集まってきました〜気付けば最強国家の王様扱いです〜  作者: 妙原奇天


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第25話 調律師との第一楽章

 広間を満たす旋律は、ただの音ではなかった。

 それは刃であり、鎖であり、心を震わせる呪いだった。

 壁の譜面が脈動するたび、仲間の息が乱れ、俺の糸は次々と切り裂かれていく。


「アレン……!」

 リュミナが祈りを重ねるが、その声すら旋律に呑まれそうだった。


「補助師よ」

 調律師の低い声が響く。

「糸で旋律を縫おうなど、愚かな試みだ。旋律はただ響き、完成に至るべきもの」


「違う!」

 俺は符を噛み、血で大きな印を描いた。

「響くだけなら、ただの音だ! 糸があるからこそ、人の声は“曲”になる!」


 調律師の杖が振り下ろされ、黒い衝撃波が広間を薙いだ。

 兵士たちが吹き飛び、石の床に叩きつけられる。

 カイルが必死に符を広げ、叫ぶ。

「アレンさん! 僕の符で響きを増幅します! 一緒に!」


「任せろ!」

 俺は符を重ね、声を張った。


「《補環・二重縫合デュエット・ステッチ》!」


 光と符の糸が重なり、黒い衝撃波を押し返す。

 その隙にセイルの影符が記譜士たちを縛り、リュミナの祈りが仲間を癒やす。

 ノコが吠え、群れを切り裂いた。



 だが調律師は一歩も動かない。

 仮面の奥から響く旋律は、なお増していく。

 杖が振られるたび、広間の譜面が新しい音を放つ。


「これが……第一楽章……」

 セイルの声が低く響く。

「奴はまだ、本気を出していない」


 リュミナが血の気を失った顔で俺を見る。

「アレン、このままじゃ……!」


「わかってる!」

 俺は奥歯を噛みしめ、血でさらに印を刻む。


(ここで退けば、地上は影に呑まれる。俺たちが縫うしかない!)



「皆、声を合わせろ!」

 俺は広間に響くよう叫ぶ。

「これは“第一楽章”だ。次が来る前に、縫い目を刻む!」


 リュミナの祈りが旋律となり、カイルの符が光を放ち、セイルの影が絡み、ノコの吠え声が広間を震わせる。

 それらすべてが糸となり、俺の印に重なった。


「――《補環・合奏縫合コンチェルト・ステッチ》!」


 光と影の糸が束ねられ、調律師の旋律に挑む。

 広間の壁が震え、仮面がわずかに軋む音を立てた。


 調律師の杖が止まり、低い声が響いた。

「なるほど……これが、お前たちの曲か。

 だが――楽章はまだ始まったばかりだ」


 仮面の奥の目が光を放ち、広間全体の譜面が一斉に鳴り響いた。

 黒い嵐が巻き起こり、第二楽章の幕が上がろうとしていた。



調律師との第一楽章が幕を開けました。

アレンたちの縫い合わせた旋律は確かに届きましたが、敵はまだ力を隠しています。

次の楽章で何が起こるのか――ぜひブクマ・評価・感想で応援してください!

あなたの声が、この物語を最後まで縫い続ける糸になります。

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