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追放された万能補助師、辺境で気ままにスローライフしてたら、なぜか英雄も聖女も集まってきました〜気付けば最強国家の王様扱いです〜  作者: 妙原奇天


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第21話 扉の裂け目、都への突入

 石版に刻まれた旋律がうねり、裂け目が広がっていく。

 黒い風が峡谷を吹き抜け、影をまとった鳥が空を乱舞した。

 人々の叫び声が背後で上がる。砦から駆けつけた兵士たちも、耳を押さえて膝を折っていた。


「アレン!」

 リュミナが必死に祈りを重ねる。

「このままじゃ……影の都と地上が繋がる!」


「わかってる!」

 俺は血で符を刻み、印を組み合わせた。

「《補環・縫止め環鎖チェイン・ノット》!」


 光の糸が裂け目に縫い込まれ、拡大を一瞬止める。

 だが、五人の記譜士が杖を振るたびに、糸は次々と切り裂かれていく。


「数が多すぎる……!」

 カイルが額に汗を浮かべる。

「僕の符じゃ、二人分を押さえるのが限界です!」


 セイルが黒い符を叩きつけ、影の鎖で一人を縛る。

「残り四人――時間を稼ぐ!」



 裂け目の奥から、低い鼓動が響いた。

 それは瘴気の柱ではない。もっと深い、巨大な“都市”の心臓のような音だった。


「聞こえるか……補助師」

 記譜士たちの声が重なる。

「これは都の序曲。お前たちの糸では、決して縫い止められぬ」


「そんなことはない!」

 俺は叫び、血で新たな印を描く。

「俺の糸は、人の声を縫う糸だ! 砦の者も、村の者も、ここにいる全員の声を貸してくれ!」


 兵士たちが震える声を上げた。

 村人が祈りを重ね、子どもが泣きながらも歌を口ずさむ。

 リュミナがその声を束ね、カイルが符に書き込み、セイルが影の符を絡める。


 無数の声がひとつの布となり、裂け目を覆った。


「――《補環・大合縫グランド・スコア》!」


 俺の叫びと共に、光と影と声の糸が交わる。

 裂け目は震え、拡大を止めた。



 だが。

 記譜士たちが仮面の奥で嗤った。


「なるほど。糸を重ねれば扉を塞げるか。だが、それは同時に“入口”を縫うことでもある」


 その瞬間、裂け目の縫い目が反転し、俺たちを内へと引きずり込んだ。


「っ……!」

 視界が暗転し、足場が消える。

 リュミナが悲鳴を上げ、カイルが叫び、ノコが吠えた。

 セイルが外套を翻し、俺の腕を掴む。


「堕ちるぞ、補助師!」


 影の風が渦を巻き、俺たちは闇の奥へと引きずられていった。



 次に目を開いたとき、そこは地上とはまるで違う空間だった。

 頭上には空がなく、黒い天蓋が広がる。

 建物は石ではなく、影そのものが形を取っていた。

 街路は旋律の譜面のように線で描かれ、人々の影が独立して歩いていた。


「ここが……影の都……」

 リュミナが青ざめる。


 カイルが震える声を漏らす。

「音が……頭に直接響く……!」


 セイルが剣を抜き、低く言った。

「ここから先は、俺の故郷だ。影の都の中枢へ――行くぞ」


 ノコが低く唸り、俺の隣に寄り添った。


 ついに、影の都の扉が開いた。

 ここからが本当の戦いの始まりだった。

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