部屋②
自分の足音が響く。
まずは寝室を確認した。セミダブルベッドが2つある。
次はリビングに向かった。
部屋に入ったときには気づかなかったが、ドリンクが自由に飲める。
私は高級そうなカップをひとつ手に取り、『紅茶』と書かれたポットを注ぐ。
ソファーに座り、一口飲んだ。深呼吸をする。温かい。落ち着く。
こんなにゆっくり部屋でくつろぐことができて、デスゲームに巻き込まれているという実感が湧かない。
謎のテンションで、デスゲームが楽しみだという気持ちをまた感じる。
紅茶を飲み終わり、カップを流し台に置いた。すると瞬時に洗浄され、もとの位置に戻った。
異世界の技術はこんなにもすごいのか、と感動していると、ガラ、と音がした。
私は振り返った。
しかし、今度は私がフリーズした。
…色気がやばい。白いシャツに、黒の長ズボン。青い髪から落ちる水滴さえ絵になる。悪魔だとは到底思えないし、なぜ私が召喚できたのか、と疑問に思う。
「…伊澄、髪乾かしてないでしょ?」
「うん」
「俺が乾かしてあげる」
「え?」
ソファーに誘導され、座る。
ディーがドライヤーの電源を付けた。
髪が生温い風になびく。
ディーは優しい手つきで触るため、思わず眠くなる。気持ちが良い。
しばらくまどろんでいると、手が止まった。
「はい、これで終わり。次は俺の髪もやってくれる?」
「…うん、もちろん」
私は立ち上がり、ドライヤーを受け取った。
電源を入れ、ディーの髪を触る。
手触りが良い。色も良い。
「…ディーの髪、綺麗だね。私、好きだよ。」
思わず呟いてしまった。
「俺も伊澄の髪好きだよ」
こそばゆい気持ちになり、黙ってしまう。
やがて私も手を止める。
「うん、乾いたと思う」
「ありがとう」
ディーが立ち上がると同時に、私はドライヤーを片付けに行った。
「俺先に寝室行ってる」
「分かった」
寝室に向かうと、ディーが半目でベッドの上に座っていた。
「……ん、来て」
ディーは両手を広げて私を見た。
……私?
「え…?」
「一緒に寝ようよ」
「ベッド2つあるけど」
「んー?」
腰をぐいと引っ張られ、ディーの腕の中に倒れ込んだ。手を繋がれる。吐息が伝わる距離。そのままベッドに倒れ込んだ。
「おやすみ」
「……おやすみ」
ディーに抱きしめられながら眠ろうとする。
いつもは寝付けないはずの夜なのに、安心感と体温を感じる。
私は意識を手放した。




