運命の召喚①
「並び終わったようですね。…では、今から召喚の儀を行います!」
ファーストが声高に叫んだ。
「ここで皆さんには、デスゲームで一緒に行動するパートナーを召還していただきます。こちらに手をかざし、『契約』と言ってください。何がパートナーになるかは我々にも分かりません。
上位の存在から、天使・悪魔、人、動物、鳥です。」
天使・悪魔、と聞いて、周りが小声で話し始める。
「まあ、皆さん見れば分かるでしょう。まず、担任の森川さんからお願いします。」
「っ、はい……」
担任は恐る恐る立ち上がる。
先ほどまでの話し声が嘘かのように、静かになった。
誰かが息をのむ音が聞こえる。
担任は、模様が描かれた装置に手をかざす。
「……契約!」
(私、やっぱりこの人嫌いだ)
この状況にそぐわないほど、声色は明るくて強かった。
魔法陣のある空間から光が出る。
しかしそれは一瞬のように感じられた。驚きでクラスメイトがざわざわとした。
「あれは…猫だよな?」
「いやどう見ても猫だろ」
「お前頭おかしいんじゃないのか?猫はあんな大きさじゃないだろ」
そこに現れたのは猫だった。
少なくとも、猫の顔と体つきだ。
…大きさがリュックほどあるが、目が担任のほうではなく斜め上を見ているのが面白い。
「え…?こいつが私のパートナー?」
猫がぎろりと担任のほうを見た。
「はい、じゃあ次の人!前にどうぞ!……あぁ、森川さんはそちらの長椅子にパートナーと座ってください」
ファーストはまるで気にしない。猫がぴょんと椅子の上に乗った。
「嘘だろ……?」
次の人である浅井くんがそう呟いた。
気持ちは分かる、あの猫の隣に座るのは結構怖いだろう。
「はははっ、浅井、おまっ、頑張れよ!」
浅井くんの友達が笑いながら言った。
それからも召喚は進んだ。ほとんど鳥か動物だったが、見るのには飽きなかった。
スライムや、魔法が使える異世界人が召喚されたときは歓声が上がった。
私の番が来る。
前の人が座ったのを確認して、ゆっくりと歩いていく。
(…別に、楽しませてくれるなら普通でいい)
期待してもその通りにならないのは分かっていた。だから高望みはしない。
すうっと息を吸った。
「……契約」
……その瞬間、運命が変わった。
空気が重い。でも心地よい感覚。
目の前が強烈な光を放つ。
不思議と刺激はなかった。
「え、眩しっ!」
「何!?」
それでも次の瞬間、誰もが黙った。
それは、私も例外ではない。
現れたのは、私の視線より高い位置に浮かぶ、黒のスーツの男だった。
そのときのことは、鮮明には覚えていない。
ただ、天使だと思った。それだけだ。
でも、その黒い羽根が天使じゃないのを物語っている。
でも見た目なんて関係なかった。その美しさが、恐ろしくて、でも目が離せなくて。
その瞳と、見つめ合う。
やがて、私の目の前に柔らかく着地した。
…深いブルーの髪に、吸い込まれるような赤い瞳。
私の目を見て微笑んだまま、跪いた。
私の片手を取る。唇が触れる。
何が起こったのか分からなかった。
目の前のこと以外何も考えられなかった。
「………何て素晴らしいのでしょう!」
静寂を破ったのはファーストだった。予想外だというような雰囲気だったが、興味を持ったようだ。
「過去最高の召喚かもしれません…!お名前を伺っても?」
「私はディオラル。悪魔だ。」
ディオラルは立ち上がった。
「…素晴らしい!面白くなりそうです!」
ディオラルはファーストの言葉を無視し、私に微笑んだ。
手を差し伸べる。
「行きましょう。」
私はその手を取った。




