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人生に絶望していたら異世界のデスゲームに巻き込まれました~ヤンデレ悪魔を召還したので、最期まで楽しもうと思います!~  作者: 雨宮 叶月


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無言(ディオラル視点)

俺は伊澄と反対の方向へ走り出した。


とりあえず1階を見る。


職員室、校長室、多目的ホール、会議室……いた。


名前は……何だったか覚えていない。というのは嘘で、伊澄と話した人間の名前は全て覚えている。


江南美緒。確かそういう名前だった気がする。刻印が出ていたはずだ。


「誰っ!?……あれ、ディオラルさん!おはようございます!…というより、こんにちはかなぁ?」


そいつは気色悪い笑顔を浮かべる。媚びを売りたいのが目に見えてわかる。気色悪い。


こういう人間が、まず初めに裏切るんだ。



「………。」



とりあえず黙っておく。何か喋って解決した試しがない。


プラスでちょっとずれた方向を見て、ものすごく冷たい目で。


ああ、そうだ、こいつは陰で伊澄の悪口を言っていたな。許さない。



「えっ……何ですかぁ?あの……私、撃たないので!安心してください……♡」


気色悪い。



なるほど、でも撃たないなら良いな。嘘だと分かるが。


無言で一発撃ちこむ。


「えっ…何で!?何で撃つんですか…かはっ!」


そいつは銃を落とす。口から血が流れた。


「え…?血…?嘘よ、私が血なんて流すはずが…!」


その図太さで痛みより自分の外見のほうが気になるみたいだ。自分の手を呆然と見つめている。


バン、と2発目の銃声が響く。こんなの相手にしてられないからついでにもう1回。



「ああああああああああああ!」


それは叫び声を上げた。痛そうにもがき、助けを求めるように俺を見上げる。



「ディ、オラルさん……」


俺はにこっと微笑んだ。


江南美緒はわずかに表情を明るくする。


俺は一歩近付くと、銃を遠くまで蹴った。


「ばーか。苦しんで死ね。」


「……え?」


銃はもうはるか遠く。俺はさらに1発撃って、叫び声を後ろに駆け出した。


俺に嘆願しても痛みは消えないし。数分後くらいに死ぬだろうから放置する。



……1階は一周回った。じゃあ最後は体育館だ。



扉を押す。すると、ステージ付近に女子生徒がいるのが見えた。パートナーも。


俺は舌打ちをする。なんだよ、女としか会わないじゃないか。


俺は伊澄に近付く男を撃ちたいのに。



「ひっ…!?」


その女子、楠木凛(くすのきりん)は俺に気付くと跳びあがった。さっとパートナーの横に隠れる。


この女子は伊澄に普通だったんだよな。


じゃあ普通にキルするか。


俺はさっと走り出した。



「い、行け!殺せ…!」

「ワカッタ!」


楠木凛の隣には、ティディーベアのぬいぐるみがふよふよと浮いている。ただし、手に魔法のステッキとやらを持っている。伊澄が見たら可愛いとか言うだろう。


ティディーベアは片言で返事をすると、ゆっくりとこちらに来た。


「…星の追撃(スターライト・キル)!」


魔法が一直線に向かってくる。にしても詠唱名ダサい。俺が考えてやろうか。


俺は()()()間一髪で避けた。



「い、行けるよ!最上級の悪魔だって!もう1回行け!」

「ワカッタ!」



ステッキからぐるぐると渦が出てくる。


「……星の流星群(スターナイト・ウェイ)!」


「いや詠唱名ダサ。」


あ、思わず口に出てしまった。


どんな魔法が来るかとのんびりと眺める。



……ざあっと夜空が体育館中に広がった。


綺麗だ。伊澄と一緒に見たい。



そんなことを考えていると、ふとピアノの音がした。少し聞こえる。トルコ行進曲?


「……ふ…ふふ」


夜空と曲が全然似合ってないのに、とてつもなく上手い。絶対に伊澄だ。

デスゲーム中にピアノを弾くってどんな気持ちなのだろうか。あ、終わった。



さて、どんな攻撃が降ってくるのかとティディ―ベアを見ていたら、あたふたとし始めた。



「……マホウ、マチガエタ。」


「かはっw」


噴き出して変な音が出た。肩が震えている。


「ちょっと!何してんの!?」


「……オマエタチ二、キレイナケシキヲミセタカッタ!」


「がはぁっww」



ティディ―ベアはなんとか誤魔化そうとしている。


涙が出てきそう。夜空は消える気配がしない。


あ、流れ星。伊澄とずっといれますように伊澄とずっといれますように伊澄とずっといれますように。


トルコ行進曲が終わった。そして少し間があいて、コロブチカが始まった。しかし速い。逆にすごいな。



はやく終わらせて伊澄のところに行こう。


俺は姿勢を低くして風を切って走った。


壁を台にして助走をつけ、空中でティディ―ベアに向かって撃つ。


「エ!?」


消えた。俺はストンと床に着地し、今度は楠木凛を見る。


「嘘…」


楠木凛は意を決したようにステージから飛び降りる。


「わーっ!」


そして、なりふり構わず銃を撃った。当たり前だが当たらない。


「ぎゃー!!」


俺は6発入れた。すると楠木凛は消えた。



「……あー、服汚れてる。」


血で。


これじゃ伊澄を抱きしめることができない。なんか嫌だ。


コロブチカはもう終わっていた。その代わり、銃声が聞こえる。


俺は5階まで階段を利用した。何で5階か?気分だ。



「……あ」


…見つけた。男。



東雲樹里(しののめじゅり)。俺には負けるが意外と顔が良い。


「うわっ!?あ、こんにちは~!では。」


東雲樹里は俺に気付くと上手く躱そうとした。お前は伊澄に優しかったからすぐに終わらせてやる。でも気に入らないから1発目くらいは間を開けるか。



「待て。」

「さようなら~!」


東雲樹里は廊下を走り出す。俺はそれを追いかける。


俺はまた舌打ちをする。逃げ足が速いな。心理的に。物理的には全然弱い。


廊下の直線で撃ち込む。


「痛~い!ちょ、待ってマジで痛い!痛いよ~!」


「パートナーは?」


「殺されましたぁ~!ほら、俺刻印出てるんですよ!西川くんって人にやられましたぁ!」


東雲樹里は銃を見せた。確かに刻印が出ている。


「そうか。」


「えっ教えたじゃないっすか!待っ」


こいつのパートナーは殺す必要がなくなった。


俺は東雲樹里の体にまんべんなく撃ち込み、消えたのを確認すると歩き出した。









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