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人生に絶望していたら異世界のデスゲームに巻き込まれました~ヤンデレ悪魔を召還したので、最期まで楽しもうと思います!~  作者: 雨宮 叶月


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ピアノを楽しむ

「はい、皆さんおはようございます!では、今から学校型ステージに転移しますね!ルールは昨日と同じです!それではまたお会いしましょう。転移3秒前、3、2,1!」



体が少しふわっと浮く。この感覚にはまだ慣れず、目を閉じる。


やがて、トンッと音がした。


目を開けると、目の前は体育館だった。


私はディーに話しかける。


「…ディー、今日は別行動にしてキルしよう。最短、目指そう。」


「了解。伊澄、気を付けて。」


「うん、ありがとう。ディーもね。」


ディーが怪我をするとは到底思えなかったが。


私たちは頷くと、それぞれ反対方向へと走り出した。銃がちょっと邪魔かも。


生き残ったのは13人。つまり、1つのフロアに2,3人いる。それに、刻印が出ているという人もいるから激戦になるかもしれない。


さらに、13人の中はほぼ運動神経が良い人ばかり。例外は私と成宮さん、片山さんくらいだ。


パートナーと離れると刻印が出る。みんなもそう分かったと思う。私の場合はそんな心配はないが。危ないのは私のほうだ。



やっかいなのは成宮さんと天使のコンビ。恐らく男子もついてくる。


まあでも行けるっしょ。



私は階段を上った。ここはゆっくりで。体力が消耗する。


2階に到着。


「ふふっ」


恐怖からか、好奇心からか、思わず笑みがこぼれ落ちる。


ひとつひとつ、部屋を確認してあげる。


私は少し進むと行き止まりになっているほうの廊下を進み、音楽室のドアを開けた。



「……誰もいない、か。」


ピアノが目に入った。


ここで弾いたら、人は集まるだろうか。



ちょっと実験してみよう。




椅子の横に銃を置き、鍵盤を開けた。


両手を置き、何を弾こうかと考える。


ちなみに私は「コロブチカ」と「エリーゼのために」と「トルコ行進曲」しか弾けない。いや、これだけはガチった。


じゃあトルコ行進曲でいいか、と手を滑らした。



音楽室中に軽快な音楽が響き渡る。


もしかしたら学校中に響いているかもしれない。


ああ、楽しいかも。私上手いな弾くの。


そんなことを考えながら手を動かす。


そして最後の音を出し、手をゆっくりと離した。

うーん、誰も来ない。


ドアは開けといたんだけど。


じゃあ今度はコロブチカか。


すると、どこからか足音が聞こえたような気がした。


あ、待って今私の競争心が芽生えた。


高速でコロブチカを弾く。


私はすうっと息を吸い、弾き始めた。

足音はだんだん近くなってくる。


それと同時に私のピアノも速くなる。


いや、私こんなことしてる場合じゃないんだけどさ!


ドアから顔が覗くと同時に私はピアノから手を離した。


銃を取り咄嗟に後ろへ下がる。



バン!!!



先ほど座っていた椅子に、銃弾が撃ち込まれる。


危なかった。器用で良かった。


「誰だよ……あ、成瀬さん……。」


浅井祐平くん。サッカー部で、長身細身。私のほうが背が高いが。


浅井くんは私を見ると気まずそうな顔をした。誰だと思ったんだよ。


浅井君は刻印が出ている。なら、私はそのうち撃たれてしまう。


ならば、先手必勝!


「ごめん!」


私は一瞬で構え、浅井くんに打ち込んだ。ギリギリ血しぶきが跳ばない距離。


「え!?嘘……」


浅井くんは驚き、そして苦しみながら消えた。


私が隅っこに隠れて生き延びていたとでも思ったのだろうか。


まあいい、次はトイレ見よう。



「あっ」

「あっ……」


片山華恋(かたやまかれん)さん。美術部で、可愛い。


女子トイレの鏡を見ながら前髪を直していた。私を見るとばつが悪そうな顔をする。



「メェ~」



そして、隣には鹿。片山さんに危険を知らせるように鳴いた。お前はいったい何なんだよ。



「……デスゲーム中に前髪直すなよ!」


危機感がない。思わずツッコんでしまった。


「えへっ☆」



「メェ……ェ゛!?」


まずは鹿をキル。鹿と言って良かったのだろうか。


「あっ!鹿ぴょん!い゛っ……!」


片山さんも始末。鹿ぴょん……よし、次に行こう。



この階で2人キルしたから次は3階。


今度は教室のほうへ駆け抜ける。



いない、いない、いない……いた。


黒澤智紀(くろさわとものり)くん。運動神経がとても良い。一部の女子からはモテている。髪質もすごく良くて羨ましい。



ただ、気になったのは教室の椅子に綺麗な姿勢で座っていること。隣にはパートナーの…鎧を着た騎士。中身は骨。



私はその教室を怪訝そうに見る。……どう反応したらいいのか、これは。

あわあわしていると、黒澤君と目が合った。


黒澤君は恥ずかしそうに目をそらして、ガタッ、と音をさせるくらい遠くまで飛びのいた。


黄昏てたのかもしれないな。今は昼だけど。



黒澤くんとは反対に、騎士はゆっくりと立ち上がる。


私はそのすきに、ワークスペースにあったホワイトボードで体を隠す。



「あ、えっと……スケルトン、やれ!」


無難な名前だな。私はホワイトボードの横から顔を出し、騎士が走って近付いてくるのを見る。



さっと横に私は跳んだ。



ガァン!



……やばい、避けてなかったらマジでやばい。


先ほど私がいた場所には、ひびが入っていた。ホワイトボードも壊れかけている。素手だ。


騎士の目がこちらを向く。もし普通の世界だったら寡黙でクールな騎士としてモテていたのだろうか。気まずい。いや、中は骨だから意外とそうでもないかもしれない。


幸い、黒澤くんの姿は今見えない。


そのすきに銃を打ち込む。脇がガラ空き。


「グゥ…!」


騎士が苦しそうな声を上げる。


あれ、10発撃ったのにまだ消えない。HP高っ!


騎士が拳を振り上げる。


私はホワイトボードの反対方向に避けると、黒澤くんとぶつかった。なんでここでぶつかるわけ?


「あっごめん。」

「いや、こちらこそ…」


気まず。


よし、先に黒澤くんのほうをやろう。


引き金に手をかける。



「おわっ!?」


黒澤くんは1発目は上手く避けれたが、連続で撃つ私の弾に当たる。


「痛え!痛い!がぁっ!くそ…!あああ!」


黒澤くんは終了。良いペースのはず。



問題は、騎士のほう。


メラメラと瞳の奥が燃えている。私は構わず撃ち込んだ。


騎士はまた拳を振り上げる。土埃が舞った。



「ギギ…ギギッ」



変な音がすると、騎士は分裂した。そして消える。



「わぁ……」


不思議な消え方だ。20発くらい消耗した。まあ弾は無限なのだが。


遠くから銃声が聞こえる。ディーのものか、それとも別の人のものか。


私はくるりと振り返り、笑顔のまま4階への階段を上った。








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