目標は皆殺し
「……いいじゃん。楽しそう。」
ディーも黒い笑みを浮かべる。
「…5日、いや3日過ぎる前に、私たち以外全員キル。……私、弱いから守ってね?」
「当たり前。…ふふ、2人きりの世界…ふふ…」
ちょっと夢を拡張しすぎかもしれない。
「じゃあ……人が多そうな、1階に行ってみようか。」
ディーは頷いた。
階段で下まで降りる。グラウンドには誰もいないように見えた。
1階に着くと、目の前には誰もいない。
「一つ一つの部屋を確認して、追い詰めていこう…。」
ディーがなぜか好戦的だ。ちなみに私はいつか担任を撃ちたい。あ、やっぱ聞かなかったことにして。
「ふふふっ、じゃあ…まずは保健室から。」
左にある体育館は大本命。右の短い廊下を通って、保健室へ向かう。
「あ、いたいた~!」
鷹を巨大化したような鳥。
「ワン!ワン!ワン!」
私たちに気付いた鷹(仮名)が、威嚇をする。
……犬の鳴き声がしたような気がする。気のせいか。さすがに。
「ワン!」
気のせいじゃなかった!
恨みはないのですぐに倒す。
……次は、職員室。
靴箱を見ながらドアを開けた。
「ひっ!待って!」
そこには、仲のいい女子2人組。私たちを見た瞬間、顔が青ざめる。
パートナーと別行動する人って多いな。
(まあ、ちょっとなら待ってあげても良いかもしれないな、戦闘なんてできなさそうだし……)
そんなことを考えていると、目の前の2人組が私の後ろにアイコンタクトを取ったように見えた。
私は咄嗟に左にずれる。
すると、バン、と音がして、耳元を銃弾がかすめていった。
(…なぁるほどね。度胸だけはあるんだ。)
振り返ると、彼女たちと仲が良かったかもしれない男子、若海蓮人。
「……ディー。」
「分かってる。」
私に攻撃してきた奴は、決して逃さない。
後ろで悲鳴が上がる。ちらりと盗み見ると、ディーが少し血を浴びて立っていた。
私は自分の服を見る。
「うわああああ!」
若海くんが私に向かって突進してきた。銃で撃たないと意味がないのに。
冷静な私は真顔でひらりと避けた。
(あ、私の服もちょっと血が付いてる。全然気付かなかった。)
芸術作品みたい。
「ぐっ……」
若海君が銃を撃つが、ガバガバすぎて当たらない。そして諦めて逃げ出した。
私は黙って追いかける。ディーもついてきた。
「はぁっ、はぁっ、はぁ……」
ちょっと待って、銃を持ちながら階段4階まで上がるのはキツいって。
4階に着くころには、私の息は絶え絶えだった。
若海くんが角を曲がった。私もそれを追うと同時に、4階の新たな景色を見る。
「………ほぼ変わらないじゃん」
でも、ここは直線。
私の勝ち。
すっ、と狙いを定める。引き金を引いた。
「あ゛っ…」
若海くんが崩れ落ちる。
彼が振り向いたその瞬間、今度はディーが発砲した。
若海くんが目を見開いて消えた。
「…いえーい」
「いぇい」
片手で軽くハイタッチ。
「今度こそ5階に行こっか。」
「うん。」
4階はほぼ同じだろう。ならば、吹き抜けがあるという5階に行こうかと思った。
階段を上る。
「おぉ……」
「下が見渡せるね。」
手すりの隣には透明なガラス。ここだけ妙に高級感がある。
「じゃあとりあえず探索しながらキルしていこう。」
私たちは角を曲がった。
「えっ……」
困惑。そして興味。
目の前に広がっていたのは、……木だった。
左をそっと見る。壁。
…つまり、この階は吹き抜けメインではなく、森が中心なのだ。
しかも、思っていたより広そう。
(最上階に森とか……センス悪くね?)
葉が天井を突き破るか突き破らないかギリギリ。深緑が目に飛び込んでくる。
でも、FPSのような、『ゲーム』っぽさは出ている。
「…ここに隠れている奴らを一旦キルすれば良いんだよね?」
ディーが唐突にそう聞いてきた。
「え?うんまあ…そうだと思う。」
「俺、隠れている奴を見つけるのは得意だから。早く殺して、2人きりで過ごそうね?」
「うん。」
学校で2人きりでもやることないな……。勉強とか。図書室あるし。
あ、この作り物の世界で2人きりってことか。
うん、いいな。2人で読書しようねディー。
あとさっきから思ってたんだけど、木々は爽やかだけど空気はじめじめとしている。
隠れ場所には最適かもしれない。
「あんまり人いないね…。」
「……あ、見つけた。」
ディーはニヤッと笑った。
圧倒的強者感。ゾクゾクする。
伸びた草と木の間に、1人の男子。大田稔。
私たちを見て、諦めた目をした。
「あー……逃げられないな。もういいや。」
ディーが躊躇わずに撃つ。すると彼は消えた。
……私たちで何人キルしたっけ。覚えてないな。途中で数えるのをやめた。
このゲームが終わったらみんなに罵られそう。
そう考えると、少し濁った気分になった。
「…今の銃声、ここにいる人たちは聞こえたはずだよね?」
「多分。…殺し合いの始まりだ。」
ディーのその言葉と共に、こちらを睨みながら誰かが出てきた。その視線は私に向けられている。
高倉千夏。クラスの学級委員の一人だ。
……召喚したのは、魔法が使える異世界人。




