表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、不登校を決める。~学校サボってダンジョン行きますわ!~  作者: サイリウム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/36

11:風呂前ですわ!



「ふぅ、ようやく帰りましたねあのクソ王子。体調不良って言ってる時に来るなよマジで。」


「お嬢様?」



王子を見送り、その馬車が見えなくなるまで見送った後。扉をしめ切って全員で一息ついた瞬間。つい素が漏れ出てしまいます。


ま、まぁわたくしエセお嬢様ですからね。確かに今世では生まれた時からずっと私でしたし。公爵令嬢としての教育は受けましたが……。それでも根っこは一般市民です。色々と気が抜けると口調も仕草も色々崩れてしまいます。無論社交会などの他者の眼がある場所でこうならないよう叩き込まれているので間違いは起きないのですが、今はウチの使用人しかいないでしょう? 緩んじゃいました。


私のメイド、グレタの声で急いで取り繕いますが……。結構厳しめにこっちを睨んでいます。歯茎を見せるほど怒ってるわけではないですが、これは誤魔化さないと不味い奴です。



「お、おほほ~! 汚い言葉使ってないですわ~! 聞き間違いではなくて?」


「ではその血の匂いは?」


「ア、スゥ……。わ、わたくしのじゃないからっ!」


「でしょうね。」



見ればわかるように、グレタは犬の獣人です。


前世よくあった耳やしっぽだけが人にくっついた獣人ではなく、2足歩行する犬のような感じの獣人さん。まぁそんな犬の特徴を強く持つ彼女ならば、匂いの嗅ぎ分けなど簡単に出来てしまうのでしょう。こ、これでも偽造用の増備全部脱いで、新しいドレスにお着替え。そこから汗とかの匂いを消す奴を大量にぶっかけたんですけどね……。



「えぇ、だからこそ酷い匂いです。お嬢様のような普通の方からすれば気に成らないでしょうが、我らのような鼻の強いものからすれば、『血の匂い』と『匂い消しの匂い』が混ざって耐えがたきものになっております。」


「……そんなに?」



い、一応女ですし、臭いと言われると心に来るものががが。



「当家には鼻の強い獣人が多く在籍しております。彼らから鼻を摘ままれたくなければ、すぐに湯あみして頂きたく。それと、獣人は勿論、訓練を受けた人間であれば血の匂いを感じ取ることは十分可能です。どうやら殿下の従者、ロラン殿も『血が付着したこと』は感じ取ったようですし。」


「え、それってもしかして……。婚約解消!?」



ひゃー! やりましたわ!!!


なんか予想外な所からですけど、血の付いた野蛮人として見られた、ってわけですよね! つまり国の母である王妃として相応しくないって判断されるわけですよね! ようやくこの忌々しい関係から解消されるってことですよね! ひゃっはー! やりましたわ! 自由ですわ! もっかいダンジョン突撃してきますわ~!



「させません。それとロラン殿が感じ取れるのは『血であるかどうか』までです。そこから先は種族としての壁が出てきますので、お嬢様が野蛮人だと取られることはないでしょう。」


「えー!」


「えー、ではありません。良くて『喀血するほどの体調不良』、悪くて『体調不良と嘘をつき屋敷で剣を振り回している時にケガした』、ぐらいでしょうね。昔からお嬢様はお転婆な方でしたし……、後者であっても軽い笑い話で済むでしょう。無論、明日からしっかりと真面目に学園へ通って頂ければですが。」


「いやですわ!」



胸を張りながらそう意思表示をすると、大きなため息と共に諦めてくれるグレタ。


えぇその通りです。もう私は卒業するまで学園に行かないと決めちゃったのです。だって主人公と絡むと死ぬし家も潰れるんですもの。グレタを始めとした使用人の皆様にご理解いただけないのは悲しいですが、無理矢理登校させるように動けばお屋敷から飛び出してもダンジョンに行きます。


ま、彼女どころかこの屋敷にいる方たちとは長い付き合いです。私の考えていることなど、手に取るようにわかるのでしょう。グレタがため息だけで何も言ってこないのがその証拠です!



「はぁ。でしょうね。……我らとしましては、全力でお嬢様を支えるまで。しかし当主様からお嬢様のお世話をするよう命じられておりますので、今後も『お小言』は絶えず言わせて頂きますので悪しからず。」


「どんとこいですわ!』


「そこは受け止めるにではなく、考え直して頂きたく。……ともかく、まずは湯あみです。すぐにご用意しますので少々お待ちください。」



そう言うと、他のメイドたちに指示出ししていく彼女。


んー、にしても“最悪でも”婚約破棄には至りませんか……。


グレタの前ではいかにも初見といった対応をしましたが、私もこの世界を『すいらび』として遊び抜いた存在です。確かに比重は乙女ゲーよりもハクスラダンジョンの方に振り切っていたのは確かですが、攻略対象のストーリーと特徴ぐらい普通に頭に入っています。


えぇそう。王子の従者ロランも、攻略キャラの一人なんです。


王子ルートを進んだ際、途中から分岐できるのがロラン攻略ルートです。その際の一つのイベントとして、いじめられていた主人公の傷をいち早くロランが察知する、ってやつがあったんですよね。しっかり手当てして心配させないように主人公は動くけど、ロランがすぐに気が付いて虐めた対象である私を敵視し始めるイベントです。……何やってるんでしょうね、ゲームの私。


ま、彼って戦場上がりですから、そう言うのに敏感だということは私も知っていました。



(自身としましては『ストーリーに関わったら絶対原作通り死にそうだし、さっさと婚約破棄したい』ってのが本音です。ですが家の品位を大きく落とす様な行動は出来ません。)



王家と公爵家だと、王家の方が上。つまり婚約を破棄したければ、王家から申し出て頂く必要があります。


無論それをするのは簡単で、社交会などの公の場で陛下の顔でもぶん殴れば一瞬にして破棄して頂けます。でもまぁそんなことをしてしまうと家の品位が疑われるわけで……。ほかの貴族と行っている貿易やその他取引を一方的に切られてしまう事でしょう。そんなことをすれば、我が家のみならず、我が領民の皆様に多大な迷惑をかけてしまいます。



(なのでもし婚約破棄を狙うとすれば、こういうささやかなもの。私だけの品位を下げて家には飛び火しない様なものが好ましいのです。故にまぁ『敢えて不必要な量の匂い消しを全身に掛けた』のですが……。)



上手くいかないものですよねぇ。あんまりやり過ぎるとグレタに怒られて止められちゃいますし、難しい所です。



(主人公の彼女がどのルートを選ぶかは未だ不明ですが、王子を選んだ瞬間私が障害になってしまいます。そうなる前に何とか婚約破棄を狙いながら、可能な限り学園から離れる。)



生き残る道は、それしかないでしょう。それに、折角あれほど楽しい『趣味』というダンジョン攻略があるのです。楽しまなくちゃ制作陣に失礼ってもんでしょう?


というわけで明日もまたたーくさん遊ばせて頂きますわ! 今回は1階までしかいけませんでしたが、レベルも上がりましたしもう一つ下に降りてもいいでしょう。手に入れたレイピアの習熟もしたいですし、命中率が想像よりも低かった弓の練習もしなければいけません。


ふふ、やりたいことがたくさんあると、とーっても楽しいですわね!



(あ、そう言えば今日って入学式ですから、王子と主人公の邂逅イベントがありましたよね? 世間話のていで、王子に話題ふっときゃよかったですわ。)


「お嬢様。湯あみの準備が整いました。」


「うん? あぁグレタ。ありがとう。んじゃひとっ風呂浴びてきますわー!」


「口調が酷いですよ?」


「ごめんあそばせー!!!」






Q:主人公ちゃんは王子様と出会えましたか?


A:王子はヴァネッサに会うために入学式が終わった瞬間に飛び出したので、イベントはスキップされました。






感想、評価、ブックマークの方よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
誤字大杉
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ