第1章1-3 謁見
下を向いて歩かせるのは、主様の顔は簡単に見られないということを演出するためでございましょう。
謁見の場で前へ進み、ある場所で止まってひざまづき、主様のご入場をお待ちしております。二つの太陽の光が大きな窓から差し込み、床に独特の光の模様を作っています。その光すら、今は恐ろしく感じられます。
処刑された女性の話を思い出します。その側仕えはとてもすごい方だったようで、これまで完璧なお仕事ぶりだったそうでございます。主様も気に入られて、お側で仕えるようにされたのだとか。
ですが、先程もお話した通り、主様の機嫌を間違うといけないようでございます。
その完璧だった彼女でさえ、主様の足に触れる際、丁寧に「失礼します」と声をかけただけで処刑されてしまいました。普通であれば礼儀正しい行為のはず。それなのに、なぜあのような結末を迎えたのでしょうか。完璧に仕えていた方でも、たった一つの些細な行為で命を奪われてしまう。わたしのような何も知らない者に、一体何ができるというのでしょう。
静寂が謁見の場を支配しています。針が落ちる音さえ聞こえそうなほどの静けさでございます。
やがて——遠くから足音が聞こえてまいりました。コツッコツッと聞こえてきます。規則正しく、重く、威厳に満ちた足音でございます。
「皆様お静かに!これよりの物音は一切させてはなりませぬ!」 「主様!謁見の場へ参られます!!」 「皆様!お顔を伏せ、ひざまづいてください!」
と、大きな声で注意がなされました。わたしの全身に震えが走ります。ついに、お会いできるのでございます。
第1章1-3 完