9-1 お腹の音とおしぼり
毎週火曜金曜午前3時更新してきますので、お時間のある時にでも、お付き合いいただけると嬉しく思います。
それでは、ミコと主様の物語をどうぞお楽しみください。
昼食の時間まで、あと少し。わたしはおしぼりを準備いたします。
あの不思議な機械に、真っ白なおしぼりを入れます。主様曰く「気合いで作った!」という機械です。本当に不思議な形をしていて、どうやって作られたのか想像もつきません。
でも、確かに温かくて気持ちの良いおしぼりができるのです。
温かくなったおしぼりを、冷めないお皿に乗せて……。このお皿も、主様が「気合いで作った」ものだそうです。触ってみると、ほんのり温かくて、まるで生きているような感触です。
「ふぅ。。できました。」
準備完了です。主様はきっと、このおしぼりで顔を拭かれるのでしょう。わたしは、その時に下を向かなければなりません。主様の無防備な姿を見てはいけないのです。
廊下を歩いて主様の自室へ向かいます。コツコツと自分の足音が響いて……静かな廊下に、わたしの足音だけが聞こえます。
ぐぅ~~~っ
「あ……また鳴ってしまいました……」
お腹の音が廊下に響いてしまいました。主様の前でこんな音を立てたら……でも、お腹が空いているのは事実です。朝から緊張していて、あまり朝食も食べられませんでした。
主様の自室の前に到着しました。扉の前で、わたしは少し立ち止まってしまいます。
昨夜のことが頭をよぎります。あの女中さんが、主様に一刀両断されて……。あの瞬間の主様の表情、冷酷で容赦のない眼差し。そして、血の匂い。
「大丈夫、大丈夫です……わたしはおしぼりを持ってきただけ……」
でも、手が少し震えています。なぜでしょう?わたしは何も悪いことをしていないのに……。主様に疑われるようなことは、何もしていません。
それでも、心臓がドキドキしています。扉の向こうにいる主様が、どんな表情をしていらっしゃるのか、想像するだけで緊張してしまいます。
この作品は長期連載を予定しており、今後も三国間の政治的駆け引き、宮廷内の陰謀、そしてミコと主様の関係の発展など、様々な展開をお届けする予定です。
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次回更新もお楽しみに!