8-3
主様の十年にわたる孤独の真相が明かされます。相次ぐ裏切りによって誰も信じられなくなった主様と、その心を開いてくださったミコへの特別な信頼。重い責任と温かい想いが交錯する第8章第3話です。
「暗殺の危険もございますが、それ以上に......主様は何度も裏切られてこられました。最も信頼していた方々にも。」
ルリア様の声が小さくなりました。
「側仕えとして仕えていた女性も、信頼していた右筆も、......皆、主様を裏切りました。」
「そんな......」
「だから主様は、もう誰も信じることができなくなってしまわれたのです。食事という最も無防備な時間を、他の誰かと過ごすなど......」
「でも、わたしとは......」
「だからこそ、ミコ様。あなたがどれほど特別な存在かお分かりになりますか?」
わたしは言葉を失いました。主様の孤独の深さと、自分への信頼の重さを思うと......。
「主様は、ミコ様の前でだけは......少し素の表情をお見せになります。『ちゃん』付けで呼ばれたこともございますね?」
「は...はい...」
あの時の主様の少しお茶目な表情を思い出しました。
「十年間、誰とも心を通わせることなく過ごしてこられた主様が、ミコ様には......」
ぐぅ~~~っ
「......主様を......お待たせしてはいけませんね。」
「はい。主様は、きっと楽しみにしていらっしゃいます。久しぶりの......温かい食事の時間を。」
わたしは胸の奥が温かくなるのと同時に、大きな責任も感じました。主様の信頼を裏切ってはいけない。そして、あの孤独な方に、少しでも安らぎを......。
「ミコ様のお腹の音も、主様にとっては癒しかもしれませんね。」
ルリア様が優しく微笑まれました。
昼食の時間まで、あと少しです。
主様の孤独の深さと、ミコへの信頼の重さが浮き彫りになりました。十年間誰とも心を通わせなかった絶対君主が、初めて見せる素の表情。ミコのお腹の音さえも癒しとなる、そんな特別な関係性が描かれています。次回、ついに二人だけの昼食の時間が始まります。
次回 9/19午前3時投稿予定です いつもお読みいただきありがとうございます