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食べ終わると、カッカッとすぐにその場を立ち去ってしまわれました。わたしは主様の後ろ姿をただ見送りました。お忙しい方なのですね。いつものようにお疲れ様でしたとお声をかけたかったのですが、主様の足音が遠ざかる前に、そんな勇気は出ませんでした。
食器を片付けて部屋を出ようとした時でした。
ガッシャーン!
角を曲がったところで、女中の方とぶつかってしまいました。わたしが持っていた主様の食器が床に落ち、音を立てて割れてしまったのです。
「あ、、、あ、、、」
女中の方も青ざめています。わたしも頭が真っ白になりました。主様の、、、主様の大切な食器を、、、こんな粗相をしてしまうなんて、、、
「も、、、申し訳ございません!わたしが、、、わたしが前をよく見ていなかったばかりに、、、」
「いえ!わたくしこそ、、、急いでいたとはいえ、、、」
お互いに謝りながら、急いで割れた破片を拾い集めました。陶器の欠片が手に刺さりそうになりながらも、一つ残らず拾わなければなりません。
「何事だ!」
大きな声が響きました。近衛の方が駆け寄ってきます。廊下に響く靴音が、わたしの心臓の鼓動よりも大きく聞こえました。
「ばかもの!主様の食器を割るとは何事だ!」
「も、、、申し訳ございません!!」
わたしと女中の方は必死に頭を下げて謝りました。もしかしたら、これで処刑されてしまうのでしょうか、、、