第1章1-1 謁見
この物語は、世界を統一した華奢な王と、美貌ゆえに側仕えとなった純粋な巫女の物語です。
宮廷を舞台に、政治的陰謀と日常が交錯する中で、二人の関係が静かに紡がれていきます。
ミコの一人称視点で描かれる、優しさと恐怖が同居する不思議な日々を、どうぞお楽しみください。
わたしはミコ。この国で戦勝と五穀豊穣を祈る巫女です。
わたしのお仕事は祈ることでございましたので、王である主様のお顔を一度も拝見したことはございません。主様も拝殿へお見えになることはございませんでした。
それは、主様が幾度となく暗殺の危機に瀕し、拝殿が血に染まることもあったからでございます。わたしはその危険を免れ、主様をはじめこの国の方々にお守りいただき、今まで生きてくることができました。
拝殿でお祈りをし、皆様の健やかな一日を支えることが、今までのわたしの役目でございました。ですが、この度、主様のお側仕えを命じられたのでございます。
主様はとても慎重な方で、わたしが巫女としてお祈りする役割をいただいてから、一度もお顔を拝見することなく過ごしてまいりました。どのような方であるかも分かりません。
噂で伺いますのは、とても怖い方、とても優しい方、とても強い方、軍隊を率いることなく、たったおひとりで国を滅ぼしたなど、様々でございます。噂は様々な形で伝わっており、それだけでは想像すらできません。
そんなお顔すら知らないわたしが、お仕えできるのか、とても不安でございます。
お顔を拝見できるのはごくごく一部の方だけ。お顔を知る女中の方から、先ほど恐ろしい話を聞きました。お仕えの者が逆鱗に触れ、処刑されたというのでございます。その役割の穴埋めに、わたしが選ばれたそうでございます。
第1章1-1 完
お読みいただき、ありがとうございました。
この作品は、政治ファンタジーとして、宮廷内での人間関係と謎解きを中心に展開していく予定です。
ミコの視点を通して、主様の多面性や宮廷の日常を描いていければと思います。
更新は週2回を予定しております。
今後ともよろしくお願いいたします。