異世界の一般人に転生した魔王のとある休日の話
我は魔界を統べる魔王魔界の民の平和のために戦った。
その記憶を思い出したのは二年前温泉の我慢比べでのぼせて意識を失って走馬灯を見た時。
記憶を取り戻す前の我は本当に馬鹿ばかりしていた。
我は背後から勇者に首を斬られ殺された。
油断があったとはいえ、我は死んだ。しかも我は後継者を残す前だった。
後継者にしようと思っていたやつはいた。
名前はヨシタル鳥人族の長であり魔王である我の右腕として良くしてくれているやつだ。
だが宣言する前だったからなぁ……我は本当何もかもが遅い。
魔界の魔族が人間族に殺されないようになるべく妥協してきた。
だが家族を殺された魔族が復讐をしたいと言ってきた時我はそれで吹っ切れるならと許してしまった。
……それが間違いだった。魔族と人間の戦争が始まった理由は魔界と人間界の狭間に位置する貿易都市アルカイダで起こった一件の酒場でのいざこざだった。
旅行に来ていた人間と魔族双方に死傷者が出てしまいそれが双方の今までの"我慢"が爆発し"魔族(人間族)に殺された同胞の復讐"という名目で殺し合いが始まった。
我は何かに取り憑かれたように人間の街を焼き払い、魔界の民たちの復讐として人間を殺した。
我の人生は間違いばかりだ。
そして我は戦争を終結を見ないままこの"地球の日本"というところに転生した。
我は人間になってからのどかな田舎町を趣味として散歩しているといつも思う『我は人間族のこの平和を壊したのか』と。
我は人間になってから戦争は仕掛ける方も仕掛けられて応戦する方もどっちも悪いと思ってしまう。
我が人間族から仕掛けられた戦争に応戦してしまったから民の死傷者が増えてしまった。
どちらもいつも犠牲になるのは民だ。
我はいつも通り休日の風の吹くまま気の向くまま散歩をしているときにさっきみたいなことを考えたわけだが、やはり我は間違っていると思ってしまうが……たまには落ち込むことも大切だ。
本音をぶちまけてスッキリして気持ちをリセットしないとな。
「居酒屋モノノフで〜す!! どうですか!? 今来ていただければ安くしますよ〜!! せめてチラシだけでも……お願いします。お願いします」
居酒屋……か、たまには行ってみてもいいかもな
「我で良ければ行きますよ」
「ありがとうございますお姉さん!! それでは案内させていただきます!!」
そうして我は案内された居酒屋でお酒を一か月ぶりに飲んだ。
ガシャン!!
「もうほんっとどうして我は間違ってばかりなのよ!! 本当はみんな幸せでいてほしかっただけなのに……なんでいなくなるのよぉぉぉぉ!! お酒もう一杯よこせ!!」
「この嬢ちゃんカシオレ一口飲んだだけで酔いやがったぞ!? 暴れるなよ」
「うるせぇ、我だって殺したくて殺したんじゃない!! 我だって人間族と仲良くしたかった……なのに我が間違ったせいで人間族も魔族も……みんな死んじゃったぁぁぁぁ」
「何のこと言ってるか知らねえけど落ち着け……な? お〜い店員さ〜んこの嬢ちゃんに砂肝の唐揚げ持ってきてくれ〜!!」
「少々お待ちくださ〜い!!」
我がベッロンベッロンに酔っていると
「この酔い方もしかしてカルティス様?」と声が聞こえた
「カルティス様だって……とうとう幻聴か? よ〜し寝るぞぉぉぉ。あっマズイこんにちはしちゃう……オロロロロ」
「ぎゃぁぁぁこいつ吐いたぞ!!」
「嬢ちゃん!? 大丈夫か?」
「大丈夫ですかカルティス様!!」
「ヨシタルかぁ……そんなわけないか……あっ唐揚げ……ヨシタルの唐揚げだぁぁいったっだっきま〜す!!」
我はそれから一時間後に酔いに酔いまくった結果……追い出された。
「あははこれじゃあ帰れな〜い……皆の者〜我に続け〜あっははははっ誰がこんな間違いだらけの王に続いてくれるんだっつうの!!」
我はそこからの記憶がない。
そして目が覚めると
「んっんん頭が痛い……ここはどこだ?」
「あっ、やっと目を覚まされましたかカルティス様。朝ごはんは机の上に置いてありますので……ゆっくりと食べてください。何かあれば連絡してください」
「それじゃあ一ついい?」
「はい、なんですか?」
「今日……我仕事なんだよね。連れて行ってもらってもいい?」
「いいですよ……とでも言うと思いましたか!! 今何時だと思ってるんですか!! 朝ごはんとは言いましたが、十四時過ぎですよ!! そもそもカルティス様まだ完全に酔いが覚めたわけじゃないんですから休んでくださいよ!!」
「すみません」
「それじゃあ買い出し行ってきますから、ちゃんと食べてくださいよ。いってきます!!」
ガチャ
我は用意されたご飯を食べて……ちょっとワクワクさせながら家の中を見てまわった。
「他人の家に入ったの初めてだ!! でもまだ気持ち悪い」
そして我は三十分ほど歩きまわったあと疲れをとるために寝た。
ガチャ
「ただいま戻りましたカルティス様」
「すぅ、すぅ……すぅ」
「お眠りでしたか……支度だけでもしておきますかね」
サササットントントン
「なかなか自己新記録達成ならずですね。まだ四品作るだけで三秒もかかってしまってます。精進あるのみですね」
「……何の音?」
「おはようございます。ご飯を食べたらカルティス様の家まで送ります」
「ありがとうヨシタルそれじゃいただきます」
我が食べ終えて一つ疑問に思ったことを聞いた。
「ごちそうさまでした!! 美味かった。それでヨシタル……家まで送るって言っても車もないのにどうやって?」
「いつも通り飛ぶんですよ? もしかしてカルティス様は力を失って転生したんですか?」
「……文句ある?」
「いえ、こういうのは私たちではどうしようもできませんから仕方ないですよ」
「そう言ってもらって助かる」
そしてヨシタルは我を家まで送ってくれた……家を教えてないのに。
もしかしてストーカー? なんて思いながらヨシタルの身体に捕まった。
「カルティス様着きました。私から少し贈り物をさせていただきます」
ヨシタルはそう言って我に魔力を渡した。
「カルティス様もこれで少しは力の使い方を思い出せば前の身体のように使えるはずです。これでカルティス様のお役に立てればいいのですが」
「本当に本当にありがとうヨシタル我に仕えてくれて本当ありがとう」
我はヨシタルに感謝を伝え帰りを見送った。
「よし明日のために、早く明日のお昼ごはんを作って風呂入って寝よう!!」
これは後悔だらけで酒癖の悪い魔王が地球の日本で会社員をしながらも楽しく過ごすために生きる物語である。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
今日散歩中に思いついたので書きました