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「ふと疑問に感じたのだが、月というものは三つもあったか?」



白む空を覗き見て、ジャマールが首を傾げていた。

言われてみればと、ハルトも空を見上げる。

空には、ひとつの太陽と、三つの月が浮かんでいた。

月の大きさはばらばらで、一番大きな月は一番小さい月の二倍以上大きかった。



「あった……か、分からないな」



ハルトは首を傾げる。

目覚める以前の太陽や月がどのようであったか、まったく覚えていなかったからだ。

しかしジャマールに問われると、なんとなく太陽も月もひとつずつであった気がしてきた。

気がしただけなので、安易にそうだとは言えないわけであるが。



「結局、比較できる記憶がないから無意味よ」


「まあ、そうなのだがな」



アリアの言葉に、ジャマールが面白くなさそうな顔をする。

出来るだけ多くを見て記憶を取りもどしたいジャマールにとって、無意味に思えることも重要なことなのだ。



「でもこの世界のことを知るための、大事なことだよ」



ハルトが助け舟を出すと、ジャマールは嬉しそうに頷いた。

それからジャマールは太陽や月以外にもなにか変わったものはないかと、周囲を楽しそうに見はじめた。

まるで子供のようであったが、辺りを警戒しながら進む必要もあったため、誰も止めはしなかった。


森は、どれほど進んでも変わり映えしなかった。

道に出ることが叶えばいいが、獣道すら見つからない。



――これはしばらく彷徨うことになりそうだな。



疲労が蓄積していく身体を叱咤しつつ、ハルトは空を仰ぐ。

するとどこからか強い風が流れこんできて、森全体を叩き、鳴らしていった。

突然のことにハルトは驚き、しゃがみこむ。

すでに身を低くしていたアリアと目が合った。

アリアもまた目を丸くして驚いていた。

それから二人して、なにかが起こったのではないかと周囲を窺いはじめる。



「聞こえるか、ハルト」



ベックの声が何処からか飛んできた。

ハルトは左右を見回し、ベックを探す。

風の音が強くて、どの方角にベックがいるのか分からなかったのだ。

見かねたのか、ベックの声が近付いてきて、後ろからハルトの肩をとんと叩いてきた。



「なにが聞こえるって?」


「低く唸るような、風の音が聞こえるだろう?」


「確かに聞こえる。けど、なに?」


「近くに谷のようなところがあるんじゃねえか? そうすれば川なども流れているかもしれん」



期待に満ちた瞳で、ベックが言う。

「なるほど」とハルトは同意して、風が弱まるのを待ってから立ち上がった。


低く唸るような音が、まだかすかに聞こえている。



「あっちだ」



ハルトが指を差す。

ベックも同時に指差していたようで、にやりと笑いかけてきた。


十一人は、音の方向を確認したベックとハルトが先頭に立ち、進んでいった。

すぐ止むかと思われた低く唸るような音が、未だにひびいてきている。

もしや目指しているものが近いのかと、十一人の足は自然と速くなっていった。

そうしてついに森が途切れ、がらりと風景が変わる。



「う、わわ!?」



誰かが叫んだ。

それもそのはず、十一人の眼前には巨大な谷が広がっていた。

叫んだ誰かに引きずられるようにして、ハルトも引き攣るような声を上げてしまう。

ついで半歩後退し、ぺたりと腰を落とした。



「た、谷!? こんな……とんでもないものがあるなんて!?」


「谷底が見えないわ……。まるで大地を切り裂いたみたい……」



アリアが恐る恐る首を伸ばす。

しかしすぐに恐怖が勝ったようで、跳ねるようにして後方へ飛び、谷から距離を取った。



「もし谷の底に川があっても、とてもじゃないが辿り着けないよ、ベック」


「そうらしい……それに、あの黒い塔。あれはいったいなんだ?」


「……黒い塔だって?」



ジャマールが声を上げる。

ベックが指差すほうを見ると、確かに黒い塔が建っていた。

しかしそれは、ハルトとジャマールが最初に見た黒い塔とは違っていた。

形も、大きさも違う。

周囲に渦巻いている赤黒い霧の量も、明らかに少なかった。


ジャマールが苦い顔をしていた。

ハルトと相談の上、黒い塔に近付かないように進みつづけていたからである。



「……ねえ、ジャマール」



ハルトはそっとジャマールに近付き、他の人には聞こえないよう小声で話しかけた。



「あの赤黒い霧も、禍々しい生物なの?」


「……ああ。間違いない」


「じゃあ、あれにも近付かないほうがいいよね」


「そうしたいところだが、そうもいかないかもしれない」



苦い表情を浮かべたままジャマールが、黒い塔より低い場所を指差した。

それは谷を指しているようで、今更目新しいと思えるものではない気がした。

しかしジャマールが真剣な表情でハルトも見るように促してきたため、ハルトは目を細めて覗いてみた。



「……えっと、橋?」


「そうだ。橋だ。たぶん吊り橋だろう。あまり大きくはないけど、古そうには見えない」


「渡れるってこと?」


「たぶんな。だが、あそこへ行けば黒い塔にも近付くことになる」



ジャマールが唸る。ハルトも同様に唸り、遠い吊り橋を睨みつけた。

橋があるとすれば、道がある。道があれば、人の気配もあるだろう。

運が良ければ人の集落に行き着くことも出来るかもしれない。

その幸運の可能性を捨ててまで、黒い塔から距離を取るべきなのか。

二人は長く悩んだが、満足できる答えを見つけられる気がしなかった。



「どうかしたか?」



ベックの声が後方でひびく。

振り返ると、橋の存在に気付いたらしいベックが目を輝かせた。



「なんだ、橋があるじゃねぇか。どうして言わないんだ?」


「いや、あの黒い塔に近付きたいと思えなくてね」


「だが、人に出会える機会を逃す手はねえぞ?」


「わかってはいるが」



ジャマールが押し黙る。

赤黒い霧の正体を言うべきかどうか、悩んでいるようであった。

しかし危害を与えてくる存在かどうかも分からないものをいたずらに恐れ、不安を煽るのも良くない。

悩んだ結果、ジャマールの頭が縦に振れた。

次いでハルトに向け、小さく頷いてくる。「赤黒い霧の正体は黙っておこう」ということらしい。


 ハルトはジャマールに頷き返すと、ベックの大きな背を叩いてみせた。



「ボクが黒い塔を怖がったから、ジャマールが避けようと考えてくれたんだ」


「そうなのか? まあ、確かに不気味だが」



首を傾げるベック。

赤黒い霧の真実をジャマールから聞いていなければ、そうもなるだろう。

ハルトは気恥ずかしそうにして見せると、ベックが大声で笑い、励ましてきた。



「気になるなら、慎重に行くとしよう。だが、気にするのは俺たち三人だけだぞ。精神的に疲弊している奴もいるから、これ以上刺激したら進むことすら出来なくなる」


「わかったよ、ベック」


「ジャマールもそれでいいな?」


「そうしたほうがいいだろうな。あれを諦めて他の道を運良く見つけられたらいいが、奇跡ばかり願っても仕方がない」


「そういうことだ」



ベックが片眉を上げ、八人がいる方へ歩いていく。

大きな身体に、大きな背。

しかしどことなく、昨日より小さくなっているように見えた。

精神的に疲弊しているのはベック本人も含めてということだろうか。


短い相談の上、十一人は橋に向かって進んでいくこととなった。

ハルトたちだけでなく、遠くに聳え立っている黒い塔に畏怖を抱いている者もいた。

しかしやはり、橋という存在は魅力的なもの。

どこかへ辿り着けるかもしれないという希望を、簡単に捨てられる者はいなかった。


一足ごとに、黒い塔が迫っている。

圧倒的な存在感。

背に流れる冷たい汗に、ハルトは思わず息を飲んだ。

それでも進めるのは、朧気に見えていた橋がはっきりと見えるようになったからであった。


近付いてみればやはり、橋はさほど古くないようであった。

最近ではないにしても、定期的に整備されているように見える。



「渡れそうだな」



ベックが言うと、点検していたハルトとジャマールは大きく頷いてみせた。



「念のため、二、三人ずつで渡ろう。重量に耐えられるかどうか、分からないから」


「そうだな。まずは俺が行こう。一番体重が重そうだからな。はっは!」


「なら、踏板を割らないように頼む。後から行く俺たちが綱渡りしないで済むようにな」


「言ってくれるじゃねえか。まあ、任せろ。はっはっは!」



笑いながらベックが一歩踏み出す。

ぐらりと揺れる吊り橋。

踏板がぎいと軋み、ベックの大きな足が止まった。



「な、なんとかいけそうだ」



引き攣った表情で振り返ったベックが、「大丈夫だ」と引き攣ったまま笑う。

釣られて数人が顔を引き攣らせ、残りの数人はただ顔を青くさせた。

しかしどんどん進んでいくベックの後ろ姿に勇気が湧いたのか、次第に次は誰が行くかと話し合いはじめた。


ジャマールとハルトは、最後に渡ることとなった。

アリアを含む三人の女性は、それぞれに男一人が補助をして渡ることになった。

アリアは気丈に「そんな必要はない」と断ったが、ハルトが宥め、ようやく男を連れて渡っていった。



「杞憂だったな」



最後の二人になった時、ジャマールがため息を吐いた。



「なにが?」


「黒い塔さ。実のところ今でも背中に冷汗が流れつづけているんだが、何事もなさそうだ」


「そうだね。でも警戒するに越したことはないし」


「まあ、そうだな。気を抜かないようにはしておこう」



そう言ったジャマールの視線が、黒い塔から谷の向こう岸に向く。

ハルトたちより先に渡っている一組が、よたよたとふらつき、震えながら歩いていた。

しかしもう少し行けば橋を渡りきれそうなところまで進んでいる。

彼らが向こう岸に辿り着けば、今度はハルトたちが渡る番だ。


そろそろ行こうか。

ハルトはジャマールに声をかけようとした。


その瞬間、首筋と背骨に、鋭い痛みが走った。

刃物で刺されたような感覚。何が起きたのだと振り返ったが、何もない。


隣に目を向けると、ジャマールもまた痛みを感じたらしく、うずくまっていた。



「ジャマールも!? これっていったい!?」


「ハルトもか!? わからない! だが、刺されたりしたわけじゃなさそうだ……!」


「ベック……アリアは!? みんなは大丈夫!?」


「見ろ! 谷を渡り切ったみんなもうずくまっている! 全員に何かがあったんだ! 急いで渡ろう、ハルト!!」


「わかった!!」



駆けだすジャマールの後を追う。

踏板を踏みはずさないように、尚且つ踏み抜かないように橋を渡っていく。

吊り橋が激しく揺れ、走りづらくなっていったが、ハルトとジャマールは速度を落とさなかった。


前を進んでいた一組が、橋を渡り切る直前のところで未だにうずくまっていた。

ジャマールが駆け寄り、様子を窺う。

ハルトたち同様に首や背中を抑えていた。

血などは見当たらない。ただ震えているだけのようであった。



「怖いかもしれないが渡り切るんだ。さあ、早く!」



ジャマールが激励を飛ばす。

震えていた二人が青ざめながらもゆっくりと立ち上がった。

ふらふらと進みはじめる。

その様子を見たジャマールが、ハルトに視線を送ってきた。



「ハルト、二人と一緒に進んでくれ。俺はベックのところへ行く。なんだか嫌な予感がするんだ」


「わかった。ここは気にしないで先へ行って!」


「ありがとう。じゃあ、また後でな!」



頷いたジャマールが飛ぶようにして橋を渡っていく。

あっという間に向こう岸へ着くと、左右に首を振ってベックを探し、また駆けていった。


ジャマールの姿が見えなくなり、吊り橋の揺れが収まっていく。

ハルトはよろよろと進んでいる二人を補助して歩きだした。

その間も、首筋と背骨辺りの痛みが消えることはなかった。

刺すような、鋭い冷気のような。なんとも例えがたい苦痛。

ゆっくり歩き進むと痛みをさらに感じてしまい、顔が歪む。



「ぐ、ぎ! が! あああああ!!」



先の方から、叫び声が上がった。

姿は見えないが、ジャマールが駆けだしていった方向だ。

しかしジャマールの声ではない。



「……ハ……ハルト、い、今のって」


「ここからじゃわからない。とにかく急ごう! いや、急いで!」


「わ、わ、わかっているよ! ゆ、ゆ、揺らさないで!」



繋り橋の綱を強く握り、震える男。

もう一人の女性も、声ひとつ出せないほど怯えている。

仕方ないと、ハルトは二人の手を握りつつ、さらにゆっくりと進みはじめた。



「ぎ、が、あ!! ああああ!! や、やめろ!! やめ!! ……て!!」



再び叫び声が上がる。

なにかに襲われているのか。

他にも数人の声がひびいてきた。しかし姿は見えない。

橋を渡った先の、さらに先の方へ移動しているらしい。


ハルトは逸った。

出来る限り早く二人を渡り切らせると、すぐさま駆けた。

橋の先には鬱蒼とした森が広がっていたが、わずかな切れ目があった。

そこに小道がひとつ通っていた。

覗き込むと、ふたつの人影が動いているのに気付く。

瞬間、ハルトは大声をあげながら人影に向かって再び駆けだした。



「どうしたんだ!」



ハルトが叫ぶと、人影のひとつが振り返った。

それはハルトのよく知る顔であった。

間違いなく、石の廊下を歩いていた時にハルトが背負っていた、ルーファウスという名の男だ。



「ルーファウス! 何があったんだ!?」


「ハルトか」


「ボクだ。遅くなってごめん。さっき叫んでいたのは誰?」



ルーファウスに近寄りながら、ハルトは森の中に視線を送った。

しかし大声をあげたような人物は見当たらなかった。



「獣が、現れたんだ。……この、この先にいる。ベックも、アリアたちも」


「ジャマールは?」


「先に行った。私たちはベックの指示で後方へ逃げたんだ」


「わかった。ボクも行く。みんなは橋の近くまで逃げておいて」



ルーファウスに言うと、ハルトは小道を駆けだした。

ジャマールほど速くはないが、全力で走った。

途中、いくつかの茂みを飛び越える。

すると、ハルトの手足に何かがべたりと付いた。



――なんだこれは。



ハルトは頬を引き攣らせる。

手足に付いたものは、間違いなく血であった。



「ベック! ジャマール! どこにいる!」



叫ぶ。

千切れたような声がひびき、鬱蒼とした森が吸収していった。

その静けさが、さらに不気味を生みだしていく。

嫌な予感が湧きあがり、溢れ出していく。



「……ハルト! ここだ!」



間を置いて、ベックの声が届いた。

次いでジャマールの声も聞こえる。

瞬時に声が聞こえたほうへ向いた。

草葉の隙間。

人間の影と、奇妙な生き物の影がわずかに揺れ動いて見える。



「あれが、獣!?」



奇妙な生き物の影に向かって、ハルトは茂みを搔き分けていく。

近付くほどに生き物の姿がはっきりと見えるようになり、ハルトは駆けながらも息を飲みこんだ。


その存在は、獣というには禍々しすぎるものであった。

狼のような姿で四つ這いになっていたが、背中には無数の角が生えていた。

尻尾は長いだけでなく、付け根から先端までうねうねと動いていた。

口は大きく、鋭い牙。なにかを咥え、唸っている。よくよく見るとそれは人の臓物で、真っ赤な血を滴らせていた。



「ハルト! 気を付けろ! もう、二人殺された!」


「二人!?」


「逃げられるなら、逃げる! 先に女たちを逃がす!」



ベックが大声をあげながら、獣と対峙している。

ベックの身体からも、血が滴っていた。

幸い致命傷には至っていない。力強く立ち、両拳を握っている。


ベックとジャマールの後ろには、アリアとレニーという名の女性がいた。

気丈に振舞いつづけていたアリアも、さすがに青ざめ、震えている。

レニーに至っては、腰を抜かし、立ち上がれないでいた。



「アリア! 早く!」


「動けないの! 彼女が!」


「ボクも引っ張っていく! 手伝って!」



ハルトは腰を抜かしていた一人の腕を掴み、無理やりに立たせようとした。

アリアも同様にして掴み上げようとする。

しかし力が足りないのか、腰を抜かしたレニーがその場から動くのを拒否しているのか。ついに引き上げることは出来なかった。



「ダメだわ! ごめんなさい!」



泣き叫ぶような声。アリアから出た声ではないような気がした。

ここで死ぬのか。

ハルトは両目をぐっと閉じた。

その間もアリアが必死にレニーを引き上げようとしているのが分かった。

しかし無意味な気がした。

ハルトの全身から、ゆっくりと力が抜け落ちていく。



「ハルト。ベック」



泣き叫ぶような声を穿つように、ジャマールの声が通った。

見ると、ジャマールが獣を見据え、上体を低く構えていた。



「俺が囮になる。もし奴を引き剝がせたら、みんなを連れて逃げてくれ」


「な、何を言ってるんだよ、ジャマール」


「聞いてくれ、ハルト。奴は間違いなく、黒い塔の周りにいる生き物だ。間違いない。上手く逃げられたら、今後は絶対に黒い塔へ近付くな」


「わかってる! でも、ジャマールも逃げるんだよ!」


「もちろん逃げるさ。奴を引き剥がしたらな。俺の足の速さを見ただろ?」



ジャマールが笑う。

ハルトはなおも食い下がり、ジャマールを止めようとした。

直後、ハルトの肩をベックの大きな手が掴んだ。

それを合図にしたのか、ジャマールが獣に向かって駆けだす。

その速度はこれまで見た中で一番に速く、鋭かった。


駆けだしたジャマールが、獣の頭に蹴りを繰り出す。

油断していたのか、ジャマールの蹴りが真っ直ぐに獣の頭部を打った。


ぐらりと揺れる獣。

大きな口に咥えられていた臓物が落ち、べしゃりと跳ねた。



「こっちだ!! クソ野郎!!」



挑発する言葉を吐きながらジャマールが駆け、去る。

間を置いて、獣が体勢を立てなおした。

一瞬ハルトたちを見たが、迷いなくジャマールを追いはじめた。

しかしそのころにはジャマールの姿ははるか遠く、草葉の隙間に小さく見えるほどとなっていた。



「……ジャマール……う、く……っ」



離れていくジャマールと獣を目で追い、ハルトは呻く。

ハルトの肩を掴んでいたベックの手も、震えていた。



「……ハルト、みんなを逃がそう。ジャマールが作った機会を無駄にはできねえ」


「わかってる……」



俯きながら、翻る。

背に、獣が走り去っていく気配を感じた。

ジャマールの気配を感じ取れなかったことが、幸運なことか、苦しいことなのか、ハルトには分からなくなっていった。

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